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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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そのときのことを思い出すと、今でも胸が軋んで泣きそうになるくらい辛い気持ちが
込み上げてくる。
アメリカに顔も見たくないというほど嫌われていた事実をイギリスは上手く
消化できなかった。
いつものように泣いて泣いて涙が枯れるほど泣いたけれども、それでも認めることが
出来なかった。
そして認めることのできなかったイギリスは翌日差し入れのお礼を言いに来たアメリカに
あまりにもひどすぎる言葉を投げつけたのだ。

「・・・・・・それが本音か。まあ俺もお前が大嫌いだよ。アメリカ」

ひくり、と喉を震わせたきり言葉を発せないアメリカは信じられないと蒼い瞳を
ただただ見開いてイギリスを見返していた。

「弟じゃないお前なんていらねぇんだよ。お前だって、俺の弟でいるのは嫌なんだろ」

吐きだす己の声の冷徹さはアメリカを酷く傷つけた。
血の気の引いた真っ白な蝋のような顔色で立ち尽くす彼を置いてイギリスは
部屋を出て行った。
愛し、慈しんだ子にあれほど酷い言葉を投げつけることのできる自分は
本当にどうしようもない男だ。
普段あれほど兄として接しているのに、アメリカの言葉一つ受け止めてやることが
出来ない。
アメリカのあの言葉だって受け止めてやればよかったのだ。
わざわざ差し入れのお礼を言いに来るくらいなのだから本当はイギリスのことを
言葉ほどに嫌っていないかもしれないのに。
ああでも、アメリカはああ見えて律儀な一面も持ち合わせているから
単純に礼だけを言いに来たのかもしれない。
だが、例えそうだったとしてもあの言葉はアメリカにぶつけていい言葉ではなかった。
彼が弟扱いを嫌がっている以前の問題であり、彼自身を否定する言葉でしかない。
独立してからのアメリカの全てを否定するような言葉。
そして何よりイギリスを苛んだのは扉を閉めるときに聞こえた彼の壊れそうな声だった。

「あ・・・」

それ以上は扉に阻まれて、イギリスの耳に届かなかったが、零れ落ちたその声だけは
掠れて溶けてしまいそうなほど小さな声だったのにはっきりと届いた。
こんなに頼りないアメリカの声をイギリスは聞いたことが無かった。
まだイギリスの弟であった頃でさえ、こんな声音を出したことは無い。
まして世界に名だたる超大国となった今では不安そうな姿を見たことも声を
聞いたことも無い。
おかしな話だ。
誰よりもアメリカを愛し、慈しんでいるのはイギリスだと自負しているのに
傷つけるのはいつもイギリスだ。
アメリカのことを傷つけたのが他人であれば、そいつを殺しにでも行くのに
他ならぬイギリス自身が相手ではどうしようもない。
自分は愛し子に不幸しか齎さない。
ならば、離れよう。少しでも彼を幸せにするために。
そう思い、そう願い、イギリスはアメリカに冷徹な態度を取り続けた。
それが正しいのかもわからずに。
そしてその態度は結局のところ正しくなかったのだ。
イギリスはアメリカを傷つけた。もう、許されることのないほどに。

ぎりり、と胸が締め上げるような痛みを訴える。
たまらずイギリスはウイスキーをグラスから溢れるほど注ぎ飲み干した。
まだ酔うほどの酒量には程遠いが、急なピッチで飲んでいるせいか、喉も胸も熱い。
はあと吐きだした息も少しだけ酒の香りを漂わせている。
このままベッドに戻ったらアメリカを起こしてしまうかもしれないなと
イギリスは思った。
彼はあまり酒の匂いが好きではなくまた匂いにも敏感であるため、アメリカと共に
寝所に潜り込むときはあまり酒を嗜まないようにしていた。
だが、今日だけは止められそうになかった。
幸いアメリカは起きる気配をまったく感じさせないほどぐっすり寝込んでいる。
イギリスがベッドに居なかったことに気づくことは無いだろう。
(俺はソファーにでも寝ればいいことだしな)
朝もアメリカはイギリスより早く起きることなどありえないのだから
露見する心配は必要無い。
「それよりも・・・・・・」
今考えなければならないのはアメリカの変化についてだ。
イギリスが酒に頼りながらもこれほどまでにアメリカの変化について
考えようとしているのには理由がある。
ひと月ほど前の世界会議。
早めに席に着き、資料を確認していたイギリスにフランスが吹っ掛けた言葉が
発端だった。

「―――――アメリカが俺の為に?」
「そうだよ。まったく健気だよね。こんな極悪眉毛の為に昔に戻りたいなんてさ」
芝居かかった口調で告げられた言葉にイギリスはもちろん眉根を寄せた。
今、イギリスの目の前で格好をつけている髭男はイギリスにアメリカがイギリスの為に
お前の好きなおちびさんの頃に戻りたいと言っているとイギリスに告げたのだ。
もちろん、そのようなことを鵜呑みにするイギリスではない。
馬鹿なこと言ってんじゃねぇよとけん制した後、口を開く。
「そんなわけないだろ。だいたいあいつは俺のことが嫌いだろうが」
「はあ?本気で言ってるの?この極悪眉毛」
「本気も何も事実だろうが。つうか極悪眉毛って言うんじゃねぇ!!
 っざけんじゃねぇよ!」
「ふざけてないよ。ふざけてこんなこと言うもんか」
「ふざけてんだろ。んなことあいつが言うわけねぇ!!」
腸が煮えくりかえるとはこのことだろう。
よりにもよって、一番触れられたくないことに土足で踏み込んできたフランスに
イギリスはあらん限りの罵声を上げた。
アメリカが弟だったあの頃に戻りたいなどと言う筈がないことを
イギリスは誰よりもわかっていた。
アメリカにとってあの頃は庇護されていただけの力の無さを実感するだけの時代であり
誰よりも強くヒーローでありたい彼にとって葬り去りたい忌々しい過去のはずだ。
そのことを目の前の男とて知らないはずがないはず。
(一発殴ってやらないと気が済まねぇ・・・)
だが、振り上げたはずの拳が髭面にのめり込むことは無かった。
ドイツの介入により争いが中断したからだ。

あのときは結局ドイツの介入があったから最後まで話を聞けなかった。
だがその後、イギリスはフランスの言葉を考えさせるようなアメリカの発言を
聞くことになった。