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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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Love yearns act7


ロンドンで開催された世界会議は開催国イギリスの手腕と普段騒ぎたて
己の意見を押し通すアメリカがいつもよりも大人しいため
予定されていた時間よりも一時間早く終了を迎えた。
だが主催国としてしなければならない仕事をしているうちにフランスの姿は
席から無くなっていた。
フランスの姿を求めて議場をぐるりと見渡したがその姿は無い。
何処かに飲みにでも出かけたのだろうかと息をつくイギリスは人の少ない議場を
もう一度見渡した。
ここのところ、イギリスから離れなかったアメリカの姿も無い。
別に約束をしていたわけではなかったが、なんとなく落ち込んで
今度は大きくため息をついた。
「イギリスさん」
落ち着き払った柔らかな声に呼ばれて振り返る。
「日本」
名を呼ばれて東洋の友人がおっとりと笑った。
いつ近づいたか悟ることが出来なかったことに内心驚きつつ「久しぶりだな」と
声をかける。
彼が音を立てないで歩くのは癖なのだろうか。
そういえば以前アメリカが「ニンジャはどんなところを歩いても音を立てないんだぞ!」と
ニンジャ漫画を見ながらはしゃいでいたことがある。
日本はそのニンジャの国の具現なのだから音を立てないで歩くことぐらい
何のことも無しに出来るに違いない。
そう納得してイギリスは疑問を解決した。
「・・・アメリカさんはお元気ですか?」
「ん?ああ、ここに来る前もハンバーガーもしゃもしゃ食ってたぞ。どうかしたか?」
「いえ・・・」
曖昧に濁して日本は首を振った。
日本らしい返答の仕方だったが、ことアメリカに関しては曖昧にしておけないイギリスは
日本?と答えを急かすように名を呼んだ。
「最近、お変わりになったような気がしまして」
「・・・そうか?言うほど変わっていないだろ」
内心、ドキリとしたが何でもない顔を装ってイギリスは返事を返した。
あまり視線を合わせることの好きではない日本がこちらを真っ直ぐに見詰めているのに
微かに息を呑んで凛とした眼差しを見返す。
空気を呼んで控えめな態度を好む彼にしては意志の籠った強い視線は
イギリスを批判しているように感じる。
まるでイギリスのついた嘘を見抜いているのかのようだった。
「・・・イギリスさん。私はアメリカさんを好きです。
 騒がしいのも、わざと空気を読まないのも・・・あれは何とかしていただきたいと
 思わないこともないわけではありませんが」
唐突に始まった言葉を切って日本は微笑んだ。
ヨーロッパ諸国のように仰々しくない控えめな笑みは彼らしい。
けれどその笑みがそのままの感情で無いことをイギリスはこれまでの日本との
付き合いの中で知った。
そして今現在浮かべているものが日本の感情ではないことをイギリスは悟っている。
腹の中で静かに覚悟を決めて、日本に向き合った。
彼が何を隠しているかはわからないが、それはきっとアメリカに関することだ。
それならばイギリスは隠したままにしておくことはできない。
それで、とあくまでイギリスは穏やかに先を促した。
「それでも私は今のアメリカさんが好きです。もちろん友人として」
「何が言いたい」
「イギリスさんは今のアメリカさんをどう思っていらっしゃるのですか?」
どう思っているか、なんて。
そんなことは言葉にできないとイギリスは思った。
それよりも日本の口にした「好き」という言葉が引っかかった。
日本が口にした「好き」はイギリスのlikeと意味合いが異なるとわかっていても
胸を深く抉られたような気がするのだ。
これがフランスだったら気持ち悪いんだよ髭ですむし、カナダだったら
微笑ましい兄弟愛に心が暖かくなる。
だけど日本は・・・彼は駄目だ。
友人としてと言われても直接的な好意を表さない彼の言葉は重い。
そこまで考えてイギリスはため息をついた。
いや違う。例え日本以外に言われたとしても…それがフランスやカナダであっても
イギリスは心を揺らしただろう。
アメリカが好かれていることは嬉しいと思う。
思うのに同時に黒い、淀みのようなものが腹の中で渦巻く。
アメリカを弟扱いする感情が彼が好かれていることを喜び、一人の男として
愛している感情がドロドロした淀みを生みだす。
相反する感情は激しくイギリスの心を揺さぶるが表には出さず腹に閉じ込める。
こんな理不尽な感情を日本にぶつけるわけにはいかなかった。
何よりもこのような醜い感情を抱いていることを知られたくない。
「俺は」
躊躇いに声がかすれた。
しかし構わず言葉を続ける。
「あいつを嫌いにはなれない。裏切られたとしても、踏みつけられても
 嫌いになることが出来ない」
それはアメリカを愛しているからという理由だけではない。
僅かな時ではあったが、アメリカはイギリスに愛を齎し、笑顔を向けてくれた。
そのときの幸せな気持ちをイギリスは昨日のことのように思い出せる。