二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

Love yearns(米→→→英から始まる英米)

INDEX|26ページ/60ページ|

次のページ前のページ
 

何百年も荒れ果て、ボロボロだったイギリスの心をアメリカは僅か数十年足らずで
癒してくれたのだ。
柔らかな温もりも太陽のような笑顔も乳臭さの抜けない甘い香りも
イギリスは一生忘れることが出来ない。
その幸福に満ち溢れた記憶がある限りイギリスはアメリカを嫌いになることはできない。
―――――例え、彼に独立をされても、だ。

「あいつのことは嫌いだとか好きとかそういう簡単な言葉で表せねぇんだ」

むしろ、そういう言葉で括ることが出来たらどんなに良いことか。
と小さく胸中で呟く。
イギリスはアメリカを愛している。だが同時に憎んでもいる。
今は愛している気持ちが圧倒的に勝っているが、もしも、もしもあのときのようなことが
再び起きたとしたら、イギリスの心はあっという間に憎しみに染まってしまうだろう。
けれど、そんなことにはならないともわかっていた。
実際に起きてしまえば、そんな感情を抱く前にイギリスの心は壊れてしまう。
だからそんなことにはなりえない。
黙ってイギリスの言葉を聞いていた日本は吐息のような声で「イギリスさん」と
呼び掛けた。
水面のように澄み切った日本の表情からは何の感情も窺えない。
微笑みは浮かべずに薄い唇を彼は開いた。
「アメリカさんはよくも悪くも貴方の言葉に左右されやすいんです。
 ・・・・・・このことだけは絶対にお忘れにならないで下さい」
「日本?」
絶対に、という彼らしくない強い言葉にイギリスは目を瞬かせた。
今日の日本は彼らしくない部分が多すぎて戸惑ってしまう。
それが全てアメリカに関することだというのも気になる。
しかし日本はこれ以上この話題に触れるつもりはないらしく、いつもの曖昧な笑みを
浮かべて、イギリスが一番知りたかった情報を口にした。
「フランスさんをお探しなのでしょう?アメリカさんと中庭に行くのを見かけましたよ」
「アメリカと!?」
思わず声が跳ね上がった。
さっさと議場を抜け出したと思っていたらアメリカを連れ去っていたのか。
ふつふつと腹の中が煮えくりかえる。
(あの髭野郎。今日こそは根こそぎ髭をぶち抜いてやる)
ふふふと邪悪な笑みを漏らしイギリスは拳を握った。
「日本、すまないが俺は行かなくてはならない」
「はい。引きとめてしまい申し訳ありませんでした」
ぺこりと律儀に日本は頭を下げる。
最初に目撃した時は首が折れたのかと肝を冷やしたものだが、あれから百年以上
経った今では彼独自の挨拶だとごく自然に受け入れることが出来る。
もっともその仕草に慣れることは無いのだが。
「いや、こちらこそ慌ただしくて済まない。今度、埋め合わせをする」
「・・・ええ。そのときはアメリカさんもご一緒に」
「そうだな。あいつも連れてくる」
こくりと頷いてイギリスは踵を返した。
議場は5階にあり、中庭のあるフロアへはエレベーターを使用しても降りた場所からは
直接向かえないため、少々遠回りをしなくてはならない。
議場を出たイギリスは小走り気味に専用のエレベーターへ歩を進めた。
慌ただしい行動は紳士に相応しくないが、事が事だ。
フランスとアメリカが二人きりなどアメリカに悪影響が及びかねない。
口唇を固く引き結んだ厳しい表情を崩さないままイギリスはエレベーターに乗り込む。
特別棟専用のエレベーターは僅かな時間で一階にたどり着き、周りを気にすること
などせずに真っ直ぐに中庭に向かう。
幸いにも誰にも会わずに中庭にたどり着いたイギリスは向かい合って話している
二人の姿を視界に納めた瞬間、フランスに殴りかかろうと一歩を踏み出そうとした。
だが、想像していたよりも遥かに重々しい空気と予想だにもしなかった言葉に
その一歩は前に進むことなく戻される。
戦場で対するときのように気配を断ったイギリスは開け放たれた扉の陰から
そうっと二人を観察した。
フランスはいつもの飄々とした表情を顰め、アメリカはいっそ無表情と評した方が
いいのではないかというほど薄い笑みを浮かべている。

「愛の使者なら俺の恋愛を応援してくれよ」
「そんな心が疲れちゃうような愛を俺が応援できると思っているの?」
「愛には変わりないだろ。フランス」
「あーあ。なんだって、お前さんはあんな奴のことを好きになっちゃったのかねぇ」
「あんな奴って―――――ッ!!」
「ん?どした?・・・げ」

俺の恋愛という言葉に動揺し、思わず空気を揺らしてしまったイギリスに
真っ先に気づいたのはアメリカだった。
元々白かった顔色を更に白く、青白く染め、イギリスに向けた瞳を大きく見開く。
微かに開かれた口唇は震えるばかりで言葉を成さない。
話を聞かれて、動揺したというよりは怯えているに近い様子にイギリスは
ぎゅっと眉根を寄せる。
そして、中庭に踏み込み、薄い笑いを浮かべてごまかそうとしているフランスの胸倉を
容赦なく掴み上げて「どういうことだ?」と地を這うような声で尋ねた。

「あのなイギリス」
「三十秒だ」
「ぎゃ、何が三十秒なのよ!?」
「vingt,dix-neuf,dix-huit・・・」

流れる様に紡がれるのは淀みのないフランス語による数の数え上げ。
これ以上ないほど顔を引き攣らせたフランスはたまらずと言った様相で口を開いた。

「こういうときだけ俺ん家の言葉使うってどういう嫌がらせよ!
 つうか、お前が悪いんだからな!」
「cinq,quatre・・・はぁ?」
「フランス!!」
憮然とした声を上げたイギリスに反し、悲鳴に近い大声をあげたのはアメリカだった。