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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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はっとしてアメリカに視線を向ければアメリカは悲壮な面持ちで肩を震わせている。
そこにはここ最近の子供がえりしたような様子は無く、今現在のアメリカが
姿を震わせていた。
フランスの胸倉を掴み上げていた手を離し、アメリカに触れようとするが
すんでのところで躊躇う。
今の状態のアメリカに触れていいのか判断に迷ったからだ。
何か大事な、壊してはいけないものを守る―――――そんなアメリカの姿は
既視感を感じさせる光景だった。
それもそう昔のことではない。
ここ最近、数か月の間にこんなアメリカの姿をイギリスは見たことがある。
アレは確か―――――

「・・・・・・アメリカには好きな奴がいるんだよ」
「フランス!キミはっ」
「好きな奴って・・・」

空気と震わせる厳かな告白と呼応する悲痛な叫び声。
らしくないと知りつつイギリスは擦れた声を漏らした。
掴みかけていた解決の糸の端はとんでもないフランスの一言によって
あっさりと飛んでいく。
それほどの衝撃をフランスの言葉はイギリスに与えた。
アメリカに好きな人がいるなんて、彼と出会ってから独立以後も一度たりとも
考えたことが無かったイギリスにとって、アメリカに想い人がいるということは
青天の霹靂ともいえる事実だった。

(アメリカに好きな奴が・・・・・・)

ただの事実を胸中で呟くだけで抉るような鈍い痛みがイギリスを貫く。
考えなかっただけで十分にあり得た事実は実を言えば無意識下ですら
考えないようにしていたことだった。
イギリスがアメリカを愛しているようにアメリカにも愛する人がいる。
それはとても自然なことだ。
むしろイギリスは喜ぶべきなのだろう。
かつての兄として、弟に好きな人が出来たことを。
そしてからかいながらもその恋が成就するように願うべきなのだ。
だけどイギリスにはアメリカの恋を応援することなどできなかった。
イギリスもまたアメリカに恋をしていたからだ。
否、恋などという甘い響きの想いなどではない。
愛している。だから彼の恋を応援することなどできない。
「じゃ、お兄さん忙しいから帰るね」
重苦しい雰囲気を切り裂くようににこやかな声がイギリスに掛けられた。
アメリカと向かい合うように立っていたはずのフランスはいつの間にか先ほどイギリスが
通ってきた通路の壁に身を凭れさせて、ひらひらと軽やかに手を振っている。
イギリスが衝撃を受けているうちに逃げ出したらしい。
抜け目のない奴めと歯をギリギリと音を立てそうなほど噛みしめたイギリスは
英国紳士らしからぬ口調で叫んだ。
「何が忙しいだ!!ごらぁフランス、待ちやがれ!!」
そのままイギリスは逃げるフランスを追いかけようとしたが微動だにしないアメリカが
酷く気にかかって、結局はその場に留まった。
別にフランスは後で締め上げれば良い。
それでも気に食わなくて、チッと舌打ちをすると泣きだしそうに表情を歪めていた
アメリカがびくりと肩を震わせた。
「あ、わりぃ。お前のことじゃねえよ。だから気にすんな」
「・・・・・・」
そう告げてもアメリカの表情は暗い。
あーと言葉を探すイギリスだったが、考えずともこの状況を打破するための
言葉を知っていた。
だがその言葉を口にするには躊躇いがある。
口にすれば、イギリスは耐えられきれないほどの痛みを味わうかもしれない。
心が壊れてしまうのかもしれない。
200年近く抱いていた恋心を失うことになるかもしれない。
それでも、それでも、アメリカの苦しみや悲しみを少しでも癒せるのならば。
躊躇いなど捨ててしまえば良い。

「なあアメリカ。好きな奴いるんだろ。兄ちゃんに話してみろよ」

出来る限り優しい声音でイギリスはアメリカに語りかけた。
本当の気持ちを欠片も滲ませない声は弟を心配する兄でしかない。
その言葉にアメリカは驚きに目を見開いて、ゆるゆると伏せる。
そしてイギリスの胸にこつん、と額を預けた。
ジャケット越しに若干高めの体温が滲むように伝わり、イギリスは息を呑む。
「アメリカ?」
おそるおそる名を呼んでもアメリカは顔を上げようとしない。
あれほど痛みを覚悟して掛けた言葉だというのに間違ってしまったのだろうか。
不安にじくりと胸が痛んでもこれ以上の行動を取れず硬直しているイギリスの
ジャケットの袖をアメリカが控えめに握りしめた。
その仕草にイギリスははっとする。
不安なのは、痛みを抱えているのはイギリスだけじゃない。
ごく自然に身体は動いた。
包み込むように右手を滑らかな金糸に触れさせ、腰をきつく抱きしめる。
アメリカは特に抵抗もせずに、むしろ安堵するようにイギリスの腕の中で力を抜いた。

「俺ね」
「ん?」

吐息だけで先を促す。

「その人のことが世界で一番好きなんだ。堪らないくらい好きなんだ」
「・・・ああ」
「けれどね、ぜったいにその人は俺のことを好きになってくれないんだ」
「そんなことないだろ。お前は十分過ぎるほど魅力的だよ」
「・・・どんなに好きでも叶わない恋なんだ。それでも俺は好きだ。一生、好き」

訥々と語られたアメリカの想いはイギリスの心をずたずたに切り裂いた。
腕の中にある温もりが無ければ、その場に崩れ落ちてしまいそうなほど
胸は痛み、血を流している。
覚悟はしていたつもりだった。
アメリカの口から実際に聞けば、心が傷つくことなどわかりきっていた。
だがこんなにも、あのときのように苦しいとは想像していなかった。
(甘かったな・・・・・・)
アメリカにわからないように微かに自嘲を零す。
200年も恋し、愛し続けてきたのだ。
その想い人に一生―――――国としての一生をかけるほど好きな人がいると言われたのだ。
その痛みが想像できるほどの甘いものであるはずがない。
実際にイギリスの心は見えずとも、ぱっくりと裂傷が開き、止まることのない
血を流し続けている。
その傷はおそらく一生塞がることは無いだろう。