二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

Love yearns(米→→→英から始まる英米)

INDEX|28ページ/60ページ|

次のページ前のページ
 

(アメリカ)
目頭だけでなく、目の奥底から燃える様に目全体が熱を持っている。
気を抜いてしまえば、すぐにも涙は零れ、イギリスの頬を濡らすだろう。
元々イギリスは涙を流しやすい。
だけども、今だけは涙を流すわけにはいかなかった。
涙を流してしまえば、アメリカは気づいてしまう。
だからどんなに苦しく、涙が溢れそうになったとしてもイギリスは
泣くわけにはいかなかった。

「・・・・・・そんなにそいつのことを好きなのか?」

わかりきった問いを投げかける。
案の定、もぞりと動いて額をぐりぐりと胸に押しつけたアメリカは「Yes」と答えた。
わかりきった問いを投げかけたのは何も胸の傷を広げるためではない。
少しだけ腰を抱きしめる力を抜いて、頭を胸に押しつけていた手も腰に回す。
拘束が緩んだことに疑問を抱いたのだろう。
額を押し付けていたアメリカが顔を上げた。その瞳は赤みを刺しており
微かに水の幕が張っているように見える。
不安に揺れるアメリカを安心させるように精いっぱいの穏やかな笑みを浮かべ
イギリスは囁いた。

「なあ、そんな奴のこと止めちまえよ」

それは悪魔の囁きだ。
叶わない恋に不安を抱いているアメリカをこちらに引きずり込むための。

「・・・・・・イギリス」
「お前のこと、そんなふうにさせちまう奴なんて止めとけ。俺はお前のそんな顔
 見たくねえ」

囁きながらも何て身勝手な言葉だろうとイギリスは嗤う。
兄の心配と見せかけて、実のところはただの醜い嫉妬の成れの果てだ。
それを欠片も感じさせないような物言いは性質が悪い。
イギリスの言葉にアメリカは瞳を揺らしていた。
ゆらゆらと揺れるオーシャンブルーは水面のように美しい。

「・・・・・・じゃあ、イギリスが俺と付き合ってくれる?」
「アメリカ・・・」

艶やかな口唇から漏れた予想外の提案にイギリスは微かに目を見開く。
まさかこのような提案をアメリカがするなど考えもしなかった。
からかうにしては過ぎた言葉ではないか。
けれど、アメリカの瞳にからかうような色は無かった。
だとすれば本気だということだ。
ならばなおさら過ぎた言葉だ。
誰よりもアメリカを愛するイギリスに代わりに付き合え、など。
「止めたら、イギリスは俺と付き合ってくれる?」
重ねられた問いにイギリスは眉を下げた。
腕の中にいる愛し子は自分が何を言っているのかわかっているのだろうか。
世界で一番好きな人の代わりに付き合ってだなんて、そんな。
確かに一番好きな人と結婚するよりも二番目の人の方がうまくいくのだと言われている。
だからといって、代わりなどできない。
付き合ってしまえば良いという思いもある。けれど、だけれども。
「お前の望んでいることは何でもしてやりたいけど」
わるい、それだけはできないな。
そう言ってぎこちなく微笑み、眉を下げているイギリスにアメリカは「ううん、俺こそ
変なこと言ってごめんね」と彼にしては小さな声で謝罪を告げた。
アメリカは知らない。何故イギリスが提案を断ったのか。
きっとアメリカは兄弟だから、男だからできないとイギリスが断ったと
思っているのだろう。
それは違う。
イギリスはアメリカのことを好きだから、愛しているから提案に頷くことが
出来なかった。
身体だけでもという考えがあるが、身体だけなど我慢できない。
身体だけじゃなく、心も欲しい。アメリカの全てが欲しい。
だいたいにして、誰かの身代わりなどまっぴらだ。
アメリカでなかったら提案をした時点で命が危ういだろう。
かつての大英帝国様にそんな提案を出来るのは後にも先にもアメリカだけだ。
そのことを知るのはイギリスしかいないのだけれども。

「ねえイギリス。そんなことよりも早く家に帰ろうよ。今日の会議を頑張ったら
 スコーンを焼いてくれると約束しただろ」

小さく微笑んだアメリカはこれ以上この話題を続けたくないようでしきりに帰宅を促す。
イギリスにとっても、この話題はあまり続けたいものではないからそうだなと頷いて
アメリカを完全に開放してから胸元から携帯を取り出した。
迎えを寄こすように要請し通話を切り、内ポケットに戻す。
アメリカと玄関に着く頃には迎えが来ているだろう。
迎えが来るはずだから玄関に行くかとアメリカに告げ、イギリスは先立って歩き出す。
背中を向けていたイギリスは背後のアメリカが今にも泣きだしそうに
顔を歪めていることに気づかない。
気づいていれば、その後の二人に訪れる事態を回避できたのかもしれないが
そんなことをイギリスが知る由も無く、アメリカの涙はイギリスが気づく前に
そっと自らの指先で拭われてしまった。