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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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「フランスー、この腐れワイン野郎!テメェがいるのはわかっているんだ。
 こそこそ籠城しないで俺が温厚なうちにこの扉を開けやがれ!!」
ユーロスターで移動の最中も酒を煽り続けていたイギリスはすっかり出来上がっていた。
その泥酔ぶりたるや、裸になって暴れないのが不思議なほどだった。
そこまで酔っているのに、何とかギリギリのところで理性を繋いでいるのは
アメリカの想い人を知りたいという一念。
この一念だけが今にもキレてしまいそうなイギリスの理性を支えていた。
「フ・ラ・ン・ス!!」
だがやはり酔っ払いは酔っ払いだった。
近所の迷惑も考えずに大声を張り上げてイギリスはオーク材で作られた
重厚な厚みを持つドアをドンドンと叩いた。
それなりの厚みがあるドアは音を立てるものの、びくともしない。
開けられる様子も無く、不機嫌になったイギリスははあと酒臭い息を吐き出して
目を細めた。
こうなったら蹴破るしかないかと身構えたイギリスの目先でドアが勢いよく内側へ開く。
「おいイギリス。お前ねぇ、何時だと思って・・・って酒臭っ」
「うっせえクソ髭。テメェがとっとと開けないからだろうが」
「ベルも鳴らしていないのにどうやって開けろって言うのよ」
「感じとれ」
「何それ。理不尽すぎるでしょ」
ぎゃあぎゃあと文句を並べるフランスを押しのけてイギリスは家に上がり込んだ。
そのままずんずんとリビングに向けて足を進める。
押し切られたフランスは追い返す気力も無いのか、ため息をひとつつき
開け放たれた扉を施錠してからイギリスの後を追いかけた。
「お、良いモノ呑んでいるじゃねぇか」
リビングに踏み込んだイギリスはテーブルの上に置かれているワインに目をつけて
にやりと笑った。
シャトー・マルゴー。まだ年代の新しいものではあるが、その名に偽りは無い。
栓を抜いて一気に煽ったイギリスにフランスはたまらず悲鳴を上げる。
「お兄さんのお酒ー!!」
「べあはは!お前にはもったいないから俺が呑んでやったぜ。ざまーみろ」
「なんなのこの子。夜中に人の家押し掛けてきて、騒ぎ立てて、挙句の果てには
 お兄さんの秘蔵のお酒まで呑んで・・・」
「なんなのって決まっているだろ。お前がアメリカの・・・ぐすっ」
べあははと邪悪な笑い声を上げていたイギリスはいきなり鼻を鳴らした。
アメリカに世界で一番好きな人が居ることを思い出し、悲しい気持ちがぶり返してくる。
独立された時とはまた違う、胃の淵、肺の淵からじりじりと込み上げてくる悲しみ。
酒がまわっているせいなのかいつもよりも瞳に涙の幕が張られるのが早い。
あっという間に決壊した堰は何の効力も無く涙を放出させた。
ぼろぼろと思わずぎょっとしてしまうほど涙を流し始めたイギリスは
アメリカのばかぁと零す。
そうなったイギリスの対処に慣れているフランスはため息すら零さず
「とりあえず椅子に座ったら」と涙を零し続けるイギリスに席を勧めた。
席を勧められたイギリスは飲み干したばかりのマルゴーの瓶を抱えて
おとなしく椅子に腰かける。
「で、アメリカがどうしたのよ」
「アメリカの好きな奴を教えろ」
涙をぼろぼろ零し、鼻をぐずぐず鳴らしながらも直球を投げつけてきたイギリスに
さすがのフランスも一瞬だけ息を呑んだ。
だが瞬く間にその表情は取り繕われ、常の飄々とした表情に戻る。
「知っているとして、俺が素直に教えると思う?」
「思わねぇよ。けど、俺よりも好きな人がいないって言ってんのに
 世界で一番好きな人がいるなんて許せないだろ」
「はあ?」
訝しげに声を上げたフランスをイギリスはぎろりと睨んだ。
その眼差しには現役さながらの迫力があったが、何度も対峙しているフランスは
たじろがない。
「さすがにセックスはしてねぇけどキスだっていっぱいしているんだぞ。
 なのに俺より好きな奴が」
「いやいやいや。待てイギリス」
「あぁん?」
抱え込んだ瓶をすりすり撫で撫でしながらとんでもない事実を口にした隣人に
フランスは思わず声を上げた。
声を上げたフランスにイギリスは不機嫌を隠さずに何だよと睨め付ける。
いやいやだってと呟いて額に手を当てた。
イギリスの言葉が本当だとしたらこの事態を傍観するつもりでいたスタンスを
場合によっては変えなくてはならなくなる。
「なに、お前、アメリカにキスとかしているの?」
「してるぞ。舌は入れてねぇけど」
「舌って・・・ということは口にしているのか?」
「ああ。あいつ、すっげー可愛いぞ。まあお前には見せてやらねぇけどな」
デレデレと笑ったイギリスは見るに堪えないほどやにさがっている。
大方、その可愛かったアメリカを思い出しているのだろう。
アメリカとの思い出に浸り、ついでに泥酔しきっているイギリスに
フランスの思案気な表情は届かない。
だからこそ、フランスの逆鱗に触れかねない一言を零すことが出来た。

「だから誰なんだよ。ハンガリー?ウクライナ?ベラルーシ?
 ・・・後はリヒテンシュタインとかか?」
「それ、どういう意味?」
「アメリカの好きな奴の候補だ。俺なりに考えてみたが、まったくわからねえ」
「イギリス!!」

ダンッと思い切りテーブルを拳で叩かれて、さすがのイギリスも酔いが醒めた。
拳をテーブルに叩きつけたフランスは怒りを逃すように細く息を吐く。
決して長くない沈黙が二人の間に流れ、それを破ったのはイギリスが
瓶をテーブルに置いた音だった。
顔の赤みは引かないが、酔いが覚め理知的な光を宿した瞳を伏せて
だって、と子供のように呟く。
「あいつの好みとか考えてもぜんぜんわからねぇし、叶わない恋っていえば
 そいつらしか思い浮かばなかったんだよ」
「・・・・・・女の子じゃないって思わなかったわけ?」
低く問われた言葉にイギリスは首を振った。そして口を開く。
「・・・・・・男なんてありえねえよ。そんなのあいつに失礼だろ」