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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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Love yearns act9 other side


愛は何よりも素晴らしく尊きもの。
どんなに金を持っていても、美しくても、永久の命を持っていたとしても
愛は奪い取れるものではない。
この世における奇跡の証。それが愛。
フランスにとって、愛は等しく万人に降り注ぐものであった。
それはあの気に食わない隣人の極太眉毛であってもだ。
そして奴は手に入れたはずだった。
太平洋を隔てた新大陸。フランスの手料理よりも泣きじゃくる情けない男を
選んだあの子。
英領アメリカ―――――今はアメリカ合衆国であるあの子からの愛を。

先に自覚したのはアメリカの方だったと思う。
当時を振り返り、フランスはそう呟いた。
当時からイギリスの重苦しい愛はそれでも真っ当な兄弟愛の形で
アメリカに注がれていた。
注がれていたあの子も淀みのない綺麗な想いをイギリスに返していた。
国としての利益を求め、幾度となくアメリカにフランス領にならないかと誘ったが
個人的な見解ではアメリカはフランス領にならないだろうとわかりきっていた。
アメリカとイギリスは深い絆で結ばれており、あの絆は何人にも引き裂くことは
できないだろうとフランスは悟っていた。
だからこそ、それとなくアメリカに「愛」という感情の素晴らしさ、尊さを
それとなく教えたのだ。
「フランスさん、考えていたんですね」
え、何カナダ。俺が考えなしみたいに見えたの?と心の叫びを涙ぐみながらも
この場面では言うものではなく、そうだよ、考えていたんだよお兄さんはとだけ返して
話を続けた。
けれどその絆は他ならぬアメリカの手で断たれた。
お兄さんが改めてその時の状況を言う必要は無いけれどね。
そう言ってフランスは微笑むんだ。
フランスの向かい側に座る日本とカナダはそれぞれ真剣な面持ちでフランスの話に
耳を傾けていた。
話し続けたせいで軽く痛む喉を潤わせるために水を一口飲み、息を軽く整えて
再び口を開く。
イギリス、あの坊ちゃんは自分がアメリカに欲望を抱いたから独立したのだと
嘆いていた。
「そんな・・・!」
うん、そうだよね。そんなアホなことがあるわけない。
俺たちには感情がある。「人」と変わらない感情だ。
だけどその感情が「国」として責務や宿星を裏回ることは無い。
それは国ならば、誰もが知っていることだ。
けれど、そんな簡単なことさえ忘れてしまうほどに深くイギリスは
アメリカを愛していた。
むしろそう思わなければ、気が狂ってしまったのかもしれない。
直接問いただしたことはなかったが、あのときにはもう欲望を抱くほど
イギリスはアメリカを愛していた。
そして手にした愛を喪ったイギリスは荒れ果てた。
今でもあのときのイギリスを語るとき、欧州の国の中では顔を顰める連中の方が多いほど
荒れ果てて、めちゃくちゃだった。
お兄さんも何度かボコボコにされてし返したけど、正直、あのときのイギリスには
あまり触れたくないんだ。
日本には少し想像がつかないかな。
あいつ、日本の前じゃいっそ滑稽なほど紳士気取りだからね。
そういう一面を見せたくないんじゃないかな。
―――――まあとにかくあの坊ちゃんはアメリカと何とか外交上の上だけでも
話せるようになるまでかなり時間がかかった。
話せるようになっても、アメリカを遠ざけようと冷たい態度ばかり取って。
挙句の果てにアメリカにくたばれと言われたり、逆に冷たい態度取られて落ち込んでさ。
あ、くたばれだけは昔から言われていたな。
それでそのストレス解消にお兄さんはまたボコボコにされたわけ。
酷い話だよ。まったく。
おまけにアメリカはそんなお兄さんたちを見て、仲が良いとか拗ねるしね。
仲良く見えるなんてぞっとするね。俺とあいつだよ?
たとえアメリカが色ボケしていたとしても聞きたくない台詞だね。
お兄さんとイギリスがどうにかなる確率なんて、日本が三次元に興味を持つ
確率ぐらい低いんじゃないの。
「それは・・・小惑星が地球に衝突するくらいの確率ですね」
「あの、日本さん・・・」
そこは怒るべきところじゃないですかとおずおずとカナダが話したが
日本は薄く笑うだけで怒っている気配はない。
(でも、そういう態度が一番怖いんだよね)
イギリスとアメリカの感情のわかりやすさに忘れがちになるが、本来「国」は
感情を取り繕うことが非常に上手い。
日本は言わずもがな、イタリアやスペインといった比較的感情がわかりやすそうな
国でさえ本当の感情を悟るのは難しい。
だが、逆にアメリカとイギリスは隠すべき感情がだだ漏れで、隠さなくて良い感情を
隠してばかりいる。
だからあんなややこしい事態になるのだ。
「・・・アメリカは自分がイギリスさんに嫌われて、憎まれているんだって
 言っていました」
「あの坊ちゃんの態度を見ていたらそう思ってしまうだろうねえ。
 しかも、昔は良かったなんて当てつけのように言われていたらね」
「―――――っ!」
「日本?」
フランスの言葉に過剰に身を震わせたのは日本だった。
まるで自分が言われたかのような反応に訝しげにフランスは名を呼ぶ。
「いえ、何でもありません。私のことは気にせずにお話を続けて下さい」
とても何でもないようには見えなかったが、一度話さないと決めた日本の意思を
翻すことは難しい。
言いたくなったらいつでも言ってちょうだいと冗談混じりに返し、疼く好奇心を
とりあえずは懐に仕舞った。

「あいつらはお互いに傷つけあいながらも何とか公の場でも私的な場でも
 過剰干渉する元兄とそんな兄をうっとおしく思いながらも手を振り払いきれない
 元弟というスタンスを崩すことはなかった。けどね、アメリカは変わらず
 イギリスを愛していたしイギリスもほんっとにわかりにくいけど
 アメリカのことを愛していた」

だからいずれかはこの関係がうまくいかなくなるだろうってお兄さんは思っていた。
愛し合う二人がこのままの関係でいられる筈がない。
上手くいくにせよ、いかないにせよ何らかの変化があるだろうと睨んでいた。
そして、その変化は訪れた。数ヶ月前の春先の日本の会議会場で。