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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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「話は良くわかりました。そういうことでしたか・・・」

それまで言葉少なげに話を聞いていた日本がぽつりと呟いた。
フランスやカナダの話を聞いても驚かなかった日本は何かしらこのことについて
知っているのだろう。
何より話の途中で見せた何かの言葉にに反応したあの態度からして明らかだ。
フランスとカナダが引き寄せられるように視線を向けると佇まいを正した日本は
薄い唇をゆっくりと開く。

「私は、アメリカさんが何故戻りたいとおっしゃるのかについて、心当たりがあります。
 本来ならば、私が話して良いものではなく、お二人の許しが必要だと思っています」

ですが。
前置きを紡いで日本は瞳を伏せる。

「私はあのお二人が幸せになれる様に、アメリカさんの言うハッピーエンドに
 辿りつけるように、更にはその後も末長く幸せになっていただきたい。
 ですから、私の勝手な判断で話します」

数秒の間を置き、再び開かれた瞳には憂いが色濃く宿っていた。

「私がアメリカさんからその言葉を聞いたのは半年ほど前のこと。私の国で開かれた
 会議の後のことです。その日、私はアメリカさんにイギリスさんにお話があるので
 小会議室の鍵を貸してほしいと頼まれていました。そして私は鍵を貸したのですが
 三時間ほど経ってもお二人とも戻ってこなかったので、様子を見に行ったのです」

やはり鍵はあの会議の日だったらしい。
フランスは自国での仕事があったため、早々に帰国したのだがそういえばあの二人は
フランスよりも先に姿を消していた。
あれはそういうことだったのか。

「アメリカさんとイギリスさんがいらっしゃるはずの会議室には人一人分の気配しか
 感じられませんでした。おかしいと思い、返答は無かったのですが中に入りますと」

たまらずといった様相で日本は一度言葉を途切らせた。
そして心を落ち着けるように珈琲を口にし、言葉を続ける。

「中に居らっしゃったのはアメリカさんお一人でした。イギリスさんは
 どうしましたかと尋ねますと用があるから先に帰ったとおっしゃいました。そ
 してアメリカさんはこう言ったのです」

『イギリスが俺のこと、嫌いだって』
『弟じゃない俺なんて・・・・・・』

「その言葉に対してアメリカさんも少しきつい言葉を返しました。ですが、それ以上に
 アメリカさんはイギリスさんの言葉に傷つき・・・・・・」

胸が痛くなるような静寂の中、滔々とした日本の声だけが室内の空気を揺るがす。
淡々とした感情を載せない声が逆に苦しくなるほどの痛みを胸に訴えた。

「その後、アメリカさんは今のご自分はいらないのだとおっしゃっていました。
 ハッピーエンドの為にはいらないのだと」
「アメリカの馬鹿・・・!」

ぎゅっと苦しみを堪えるように叫んだカナダの声にフランスは胸中で同意した。
まったくもってその通りだ。
だけど一番の大馬鹿はアメリカではない。
イギリスだ。
やはりイギリスはフランスの言った通り、ビッグベンから紐なしバンジージャンプを
決行することになるに違いない。
ふう、とため息をついたフランスの真向かいでカナダが目元を拭った。
恐らくはアメリカのことを思って涙ぐんでしまったのだろう。
カナダは優しい子だとフランスは思う。
自分なんかよりもカナダはよっぽど優しい子だ。
「けどまあ、ここで俺たちがあれこれ言っても結局どうするかは本人次第なんだよね」
これまでの流れを台無しするようなフランスの台詞に日本はそうですねと頷く。
その言葉にぱっと視線をフランスから日本に向けたカナダが口を開くよりも早く
日本はですが、と前置きをして口を開いた。
「私たちにもお二人のために出来ることが何かあるはずです」
「僕も何か出来ることは無いか探してみます。僕だってあの二人を好きなんです」
「・・・あーあ。二人にそう言われたらお兄さん悪者みたいじゃない」
肩を竦めて言うフランスにようやく二人は笑みを零した。
「フランスさん、洗面所貸して下さい。僕、ちょっと顔洗ってきます」
「はいはいどうぞ。タオルとかも好きに使ってね」
「ありがとうございます」
目元を赤く染めたカナダは礼を言って洗面所に向かって行った。
その姿が完全に見えなくなるのを確認してフランスは口を開く。
「日本ってこういうことに立ち入らないタイプだと思っていた」
「はい。私も思っていました。フランスさんもじつのところはそうですよね」
疑問詞すらつかない切り返しにフランスは苦笑を浮かべた。
素直なところのあるイギリスやアメリカ、カナダに比べて日本の感情は
本当に読みにくい。
何と答えるのが最適なのかしばし考えてから言葉を紡ぐ。
「・・・イギリスに関して言えば、それこそくたばれイギリス!なんだよね。
 そこんとこはずっと変わらないよ。けど、千年以上も隣国やっていると
 あんなちんちくりんでもそれなりに愛着が湧くんだよ。アメリカはま、子供だからね。
 子供をちくちく苛めるほどお兄さん極悪じゃないし。それに愛に一生懸命な子は
 応援したくなるしね」
「ふふっ。フランスさんもお二方に負けず劣らずツンデレですね」
「ええー。あの二人と一緒にするのは勘弁してよ。そういう日本はどうなのさ」
水を向けると日本はきょとんと不思議そうな顔をした。
私ですか?と問い返す声も疑問に満ちている。
そうそう、日本のこともお兄さん聞きたいなとシナを作って言うと
日本は困ったように笑いながらも私は、と口を開く。
「そうですね・・・できれば他人に関わりたくない。放っておきたいですよ。
 人の関係、特に色恋沙汰に関わるととても疲れます。私ももう若くないし
 放っておきたいというのが本音ですね」
「ふうん。とっても「日本」らしいね」
「恐れ入ります。・・・ですが、あの二人を見ているとどうも放っておけないのです。
 これは単なる爺のお節介でしょうけども」
困ったように笑う日本は本人の言葉の通り、爺・・・祖父のような気持ちで
二人を見守っているのだろう。
「その気持ち、わかりたくないけどうっすらわかるよ。あーあ、何だか貧乏くじ
 引いたような気分だね」
「ええ。私もです」
真面目な顔で同意した日本があまりにもおかしくて噴き出すとつられる様に日本も
くすくすと控えめながらも笑みを零した。
そうやって二人で笑いあっているうちにカナダが不思議そうな顔つきで
部屋に戻ってくる。
そりゃあそうだろう。
先ほどまであんなに真剣に話をしていたのだから。
そんな不思議そうなカナダの顔を見て、ますます笑いが込み上げてきた。
「もう、何でそんなに笑っているんですか」
珍しく憤慨したようなカナダの声にごめんなと謝る。
それでも笑いは容易く引っ込まず、日本もくすくすと笑っている。
最初は怒っていたカナダもしだいに笑いを零し、気づけば三人してくすくす笑っていた。
笑い過ぎて滲んだ涙を拭いながらフランスはひそかに思う。
早くあの二人もこんなふうに何でもないことで普通に笑いあえればいいと。
そう思ってしまう自分はアメリカのことを甘ちゃんだと笑えないと心の中で
フランスはぽつりと呟いた。