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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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子ども返りをしてしまったアメリカはまるで昔のようにイギリスに懐いている。
いや、昔以上だ。
昔は何処か遠慮がちに甘えていた側面もあったが、今は全身全霊をもって
イギリスに甘えて拙い愛情を向けてくれている。
そうして差し向けられた他ならぬアメリカからの愛情をイギリスが
受け取らないはずが無かった。
受け止め、イギリスからも溢れんばかりの愛情を注ぎ返し、そして齎されたのが
今のアメリカ。
我が侭で自由奔放なヒーローであるアメリカ合衆国は欠片も見出せず
かつてイギリスが溺愛した可愛い英領アメリカの影を色濃く
宿した―――――否、英領アメリカそのものの彼。
今の少し我が侭でヒーローである彼に戻ってほしいという気持ちが
まったくなかったわけではない。
無いわけではないのだが、戻ってしまったらイギリスへの愛情などなかったことにして
しまうであろうことがひたすら恐かった。
(―――――俺は臆病者だ)
かつては七つの海を支配したことすらあるのに、アメリカに関わることだけは
イギリスに恐れを齎す。
らしくないということはわかっている。
相手は愛し子とはいえ、イギリスの手を振り払って独立した恩知らずだ。
そのような者など歯牙にかける必要も無い。それが「イギリス」の取るべき
態度だなんてことは理解している。
それでも愛してしまったのだ。どうしようもなく。
情けない男だと笑われてもいい。
そんな嘲笑などイギリスを欠片も傷つけない。
イギリスを真に傷つけることが出来るのはアメリカだけなのだから。
「アメリカ」
微笑んでイギリスは名を呼んだ。
なあにと見上げてくる無邪気な表情。
口端をきゅっと持ち上げてイギリスはアメリカの手をとり、指先に口付けた。
アメリカが口唇を許し、イギリスのことが一番なのだと告げられたときに
考えたことがある。
アメリカをデロデロに甘やかして、離れなくすればいいと。
気づいた時にはもう後戻りが出来ないくらい自分に依存すればいい。
大丈夫だ。あのときのように失敗はしない。
逃げる余地も無いほどに染め上げてしまえばいい。
そうして囲って、アメリカを自分のものだけにしてしまえばいいと考えた。
馬鹿馬鹿しいとも思わず、そのときは本気でそうしてやろうと考えた。
だが結局は出来なかった。
アメリカを囲うには障害があまりにも多かったし、何よりも彼は「アメリカ」だ。
今は子ども帰りを起こしているけれども、いつかは魔法は解ける。
魔法が解けた後に残るのは硝子の靴なんかじゃない。
胸を抉られるような嘲笑と温度の無い眼差しだ。
だからこそ、今が長く続けばいいと考えてしまう。
そうすればイギリスはアメリカのことを慈しんでいられる。何も恐れることなく。
「イギリス?」
「ああ。ごめんなアメリカ。なんでもないよ」
心配そうにかけられた声にイギリスは緩く首を振りながら答えた。
それでも心配そうに見つめてくるアメリカの前髪をかき上げて、ちゅっとキスを落とす。
ひゃっとあがった悲鳴が胸を突くほど可愛くて、イギリスは押し切れない笑みを
クスクスと漏らした。
笑われたと感じ取ったアメリカが頬を赤く染めて口を尖らせる。
イギリス。
拗ねた可愛い声に誘われるように口を近づけアメリカの口唇を吐息ごと奪い取った。
飴を舐めているわけでもないのに、人口甘味料のような甘さを感じる唾液を啜って
代わりに己のものを注ぎ込む。
未だにキスに慣れていないアメリカは口元をべたべたにしながらも懸命に喉を鳴らした。
(マジで可愛いなこいつ)
キスは目を閉じるのがマナーだと思いはするが、キスの最中ですらアメリカを
見逃したくなくて、しっかりと見開いたまま舌を絡ませあう。
幼い言動とは違い、アメリカの舌使いは拙いものの子どものそれではない。
経験こそほとんどなさそうだが、ついてこようとする動きに躊躇いは無い。
アメリカの口唇を他人に奪われたかと思うと腸が煮えくり返るような想いが
こみ上げてくるが、そんな気持ちなどおくびにも出さず、イギリスは熱心に
口唇を合わせ続ける。
貪り食うように口唇を奪いはするものの、その先には決して手を伸ばさない。
熱く潤んだ蒼が何を望んでいるのか知っていてもその先にイギリスは進まない。
キスを許されているから勘違いしそうになるが、アメリカにはイギリスよりも
好きな人がいるのだ。
その人に届かない寂しさを埋めているだけで、それ以上の感情は無い。
この一ヶ月で両手どころか両足を使っても足りないほど口付けを交わしたが
イギリスの心が満たされることは無かった。
むしろするたびに癒しようの無い飢餓感がイギリスを満たしていった。
重ねれば重ねるほど、この柔らかくて甘い口唇は己のものではないのだと
突きつけられる。
いつかはあのときのようにこの手を離れていくものだと
イギリスは知っている。わかっている。
だからこそ余計に、なのかもしれない。
アメリカへの口付けを熱心に行ってしまうのは。
手心を一切加えることなく、アメリカの口内を弄びつくしたイギリスは
ようやく解放した。
解放されたアメリカは目を潤ませ、どこかぼうっとした様子で荒く肩で呼吸をしている。
べたべたになった口元をハンカチで拭ってやると気持ち良さそうに目を細めた。
(そういえば、昔もこうやって拭ってやったな)
ご飯を食べるのが下手くそで何時もアメリカはぽろぽろ零しながら食事を取っていた。
そのたびにイギリスは小言を言いながらもこうしてアメリカの口元を拭ってあげたのだ。
懐かしさに頬を緩ませるといきなりぺちんと両手で挟まれた。