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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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Love yearns act2


その後の会議はアメリカにとって散々な結果に終わった。
「やあ遅れてすまないね。ヒーローは遅れて登場するものだから許しておくれよ!」
と登場したものの、イギリスとフランスは妙にこちらを窺っているし
ドイツには怒られるどころか心配されてしまった。
Don´t worryと強がって見せたけどごまかしきれなかった赤い目元と
妙なハイテンションに集まる様々な目線を無視して最後まで参加し、合衆国としての
体面を何とか取り繕った。
会議の後は予定されていた夕食会を断り、部屋に引っ込んだ後はけたたましいほど
鳴り響く携帯の電源を切り、備え付けの電話の線を抜き、部屋に引き籠る。
どうせ連絡してくるのはイギリスだけだ。
妙なところで押しの弱いところがあるからこうして断固として連絡を取りたくないという
態度を取れば押しかけてくることはない。
「それにここは日本だしね・・・」
日本には格好悪いところを見せたくない、紳士でありたいと思っているイギリスの
ことだから他の国に滞在しているときのように無理やり押しかけてくる
可能性はほぼない。
快適に過ごす準備を終えたアメリカはテキサスを外し、ネクタイを緩め引き抜いて
ベッドにダイブした。
ぼふんと豪快にベッドが揺れたが気にせずに枕に顔を埋める。
津波のように眠気が押し寄せてくるが、神経が張り詰めているせいか
目を閉じても眠りには落ちない。
枕はふかふかでベッドのスプリングも心地よく、身体は今すぐにでも眠りに
つきたがっているのに、あのときのイギリスの表情が頭から離れないおかげで
アメリカの心はざわめいたままだ。
(あんな表情、俺には見せてくれない)
安堵した顔というのは英領アメリカだったときに何度か目にしている。
大好きな紅茶を飲んでいるとき、野原に咲いていた花を差し出したとき
眠っていたアメリカが目を覚ましたとき。
そういった瞬間にアメリカは何度か目撃をしていた。
アメリカといると心がなごむと口にしてくれたことはあったが、敵から脅威から
守ってもらっての安堵した顔はWW2のときですらアメリカに晒したことはなかった。
イギリスは強い。
何せあの大英帝国様だ。
アメリカに守られなくとも一人で戦い抜き生きていくことが出来る。
バトルオブブリテンのときですら、身体中に包帯を巻きつけ、血の失い過ぎで
重度の貧血を起こしているのにイギリスは背を伸ばし、ギラギラと光る瞳をもって
アメリカに対した。
漸くの参戦を告げたときもイギリスは安堵した顔など見せずに「よろしく頼む
合衆国殿」と温度を窺わせない声で告げたのだ。
イギリスはアメリカに弱い姿を見せない。
それは元兄としての意地なのか、彼の高いプライドによるものかは定かではない。
涙を零しても本当に落ち込んだ姿は絶対に晒さない。
そのことに気づいたとき、アメリカの胸に大きな絶望が広がった。
どんなに愛おしい人を支えたいとアメリカが願ってもイギリスが受け入れることはない。
けれど、アメリカはせめてイギリスの支えになりたかった。
―――――イギリスを愛していたから。

しかしイギリスは異性愛者だからアメリカと結ばれることはない。
そもそも元とはいえ兄弟だったのだからアメリカがイギリスに抱いた
気持ちそのものがおかしい。
アメリカがイギリスに性欲を伴う愛情を抱いていると知ったら卒倒してしまうだろう。
そうはわかってはいても気持ちを無くすことはできなかった。
独立から二百年以上が経った今でもあの頃と気持ちは変わっていないと
アメリカは言い切れる。
だからといってアメリカは好意を表に出したことはなかった。
むしろ彼が嫌いだ―――――とまではいかなくとも「くたばれイギリス」が口癖に
なるほどにはイギリスを煙たがっているふりをしている。
そこまでアメリカが態度を徹底させたのはイギリスに想いを悟られないためだ。
叶わないことは分かっている。
だけど、想いまではイギリスに否定されたくなかった。
想いが叶わなくても何百年も好きだったことを否定されたくない。
そしてもしも想いが露見し、少しでもイギリスに軽蔑の眼差しを向けられたら。
想像だけでも架空の眼差しはアメリカの胸をやすやすと切り裂く。
故にアメリカは態度を徹底した。
空気を読めないふりをしてイギリスを欺く。
心が痛まないわけではなかったけれど気持ちがばれるよりはよっぽどマシだった。
それに本当にイギリスが苦しいときにはすぐに助けられるようにしている。
アメリカとして動くことが難しければ個人で助けに行く。
誰にも、それこそイギリスにさえわかってもらえなくてもアメリカはイギリスを
支えると決めていた。
だからこうして抑え込んでいた気持ちが吹き出してしまい、イギリスを傷つけた日は
自己嫌悪でどうにかなってしまいそうだった。
幸い、フランスがすぐに追いかけてくれたから大丈夫だっただろうけど
イギリスは傷ついたはずだ。
後できちんと謝りにいかないといけない。
素直な言葉で謝ることはできなくとも、そうしなければ自分を許せない。

トントン。

「―――――っ」
突然のノック音にアメリカは息を呑んだ。
電話が通じないことに業を煮やしたイギリスが自ら乗り込んできたのかと思ったが
それにしては叩き方が穏やかだ。
イギリスでなければ誰が・・・?と首をかしげたアメリカの耳に聞きなれた
穏やかな声が扉越しに届く。
「アメリカさん。いらっしゃいますか?私です。日本です」
「日本・・・」
名を呼んで肩の力を抜いた。
イギリスで無かったことに安堵し、日本には悪いのだが少しだけ落ち込んだ。
そもそも彼が来ないように遠ざけたのは自分なのだから落ち込む権利など無い。
そうはいってもどことなく沈む気分を叱咤し、アメリカは置きあがって
テキサスを掛けた。
日本ならば開けない理由はない。
会議中のことがあるので躊躇いながらもアメリカがロックを外し
扉を開けると日本がスーツのまま手に茶色の紙袋を携えて立っていた。