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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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「食事を召し上がっていませんのでお腹がすいているかと思いまして」
「Thanks.日本は気がきくなあ」
会議後の食事会に参加しなかった自分を心配して日本は訪ねてきてくれたらしい。
ハンバーガーではなさそうだが、日本の選ぶ食べ物に間違いがないとわかっている
アメリカはお礼を言って紙袋を受け取った。
茶色の紙袋はずっしりしていてなかなかボリュームがありそうだ。
一人で食べきれる量ではあったが、日本も少し食べていかないかい?と誘うと
少し間を空けた後「お言葉に甘えて」と頷く。
日本を中に招いた後、先に座らせてアメリカはインスタントの珈琲を二つ淹れた。
インスタントといってもそれなりに香りの良い匂いがする紙コップを自分の前と
日本の前に一つずつ置くと「ありがとうございます」と律儀に礼が返ってくる。
アメリカも日本の向かい側に腰かけ、早速紙袋を空けることにした。
ずっしりとした紙袋に入っていたのはペーコンと卵のサンドイッチに
密封容器に入ったポトフ。
それと綺麗に剥かれたリンゴが仲良く入っていた。
丁寧にラップに巻かれたサンドイッチを目前にしたままアメリカは動かない。
じわりと反射的に目頭が熱くなるのをぐっと堪える。
まさか、まさかと期待する心を口唇を噛みしめることで抑えつけた。
(日本が気を使ってくれただけだ。違う。だって俺は・・・)
「アメリカさん?」
「ああ・・・頂くよ」
日本に促されるように名前を呼ばれて、ようやくアメリカはサンドイッチを手に取った。
カリカリというよりも黒焦げに近いベーコンにぐちゃぐちゃの卵。
パンは卵が半熟のおかげでしんなりしている。
おそるおそる口に入れてみれば、強烈な焦げの苦みとしょっぱすぎる卵の味が舌を突く。
それでも、もぐもぐと咀嚼し呑み込んで残りをラップの上に戻す。
ポトフの蓋を開けるとふわりとコンソメの香りが漂った。
付いていたフォークでごろりと入っている肉を刺す。
口に運んで咀嚼すると少しだけ違う、それでも懐かしい味が口の中いっぱいに広がった。
食べるため以外に口を開けば、何かが零れ落ちてしまいそうな気がして
アメリカは無言で食事を続ける。
日本は最初に珈琲に一口口をつけただけで料理には手をつけていない。
まるで見守るようにアメリカを見つめられているのが恥ずかしくて
アメリカは視線を下に落とす。
となれば視界に入ってくるのは「日本」から差し入れられたはずの食べ物だ。
けれど、アメリカは知っている。
以前日本が差し入れと称して持ってきたものと違うことを。
それに日本は料理が上手なのだからベーコンを焦がさないし
卵はぐちゃぐちゃにならない。
ポトフの味はいくら日本が料理上手でもこの味は出せない。
リンゴだけは日本が剥いたかもしれない。
リンゴをこんなに可愛い形に剥いたことがアメリカの記憶上ではあの二人はない。
デザートのリンゴまでまるっとお腹に納めてからようやくアメリカは口を開いた。
「これ・・・作ったのフランスとイギリスだろ」
わかるよ。彼らの作ったものをずっと食べてきたんだから。
日本には聞こえないように小さく呟いた。
もっとも聞こえたとしても日本は聞こえていなかったふりをしてくれるだろう。
彼は伝説の読める空気を知っているのだから。
「・・・はい、そうです。お二人が作られました」
「やっぱりね。すぐにわかったよ。ベーコンは焦げてるし卵はぐちゃぐちゃ。
 ポトフのこの味はフランスにしか出せないだろうしね」
「お二人に頼まれてしまいまして。・・・元気のないアメリカさんに
 何か召し上がってほしいからと」
「―――――、フランスのはともかくイギリスのは余計だったな。日本に来てまで
 イギリスの料理を食べる羽目になるとは思わなかったんだぞ」
口を尖らせてアメリカが嫌そうに言うと日本はふふふと笑った。
その笑い方が子供の我儘を聞いているような笑い方だったのでアメリカは
少しだけ機嫌を損ねる。
とはいっても不機嫌は長続きしない。
日本がからかうために笑ったのではないと理解しているし、いちいち腹を立てる
べきではないとわかっている。
わかってはいるのだが、どうしても拗ねてしまう部分はあるのだ。
ため息をつき、アメリカは珈琲がほとんど残っていないカップを弄ぶ。
いつものアルカイックスマイルを浮かべアメリカを眺めていた日本が僅かに
口元を引き結んだ。
本題に入るのだろう。
日本に悟られないようにアメリカは心の準備をした。
「お二人はとても心配していました。お二人だけではありません。皆さんも心配して
 いらっしゃいますよ。もちろん私も」
「心配しないでと言ったんだけどな」
「そんな顔で言われても説得力がありませんよ」
いつになく手厳しい日本の言葉にアメリカは言葉を失う。
思い返してみれば、彼はアメリカの部屋に来てからアメリカから視線を逸らしていない。
視線を逸らしたのはむしろアメリカの方だ。
人とあまり目線を合わせ続けない日本にしては珍しい。
その珍しい日本を前にしてアメリカは気づく。もしかして日本は―――――
「もしかして日本は怒っているかい?」
「おや、貴方が気づくなんて珍しい。・・・・・・冗談です。怒ってはいませんよ」
ただ、心配なだけです。
からかわれたと気づいたアメリカがブーイングの声を上げるより早く日本は言い添える。
出鼻をくじかれたアメリカはもごもごと動かす。
八橋に包んでいない言葉は対応に困る。
曖昧な物言いが日本の特徴だというのにこうも真っ直ぐ言われるとごまかすことすら
できなくなる。
黙り込んだアメリカに対し日本は言葉を続ける。
「怒っているのはアメリカさんではありませんか?」
「・・・今日のキミはずいぶんはっきりと聞くんだね」
「この件に関してはごまかしては答えてくれないと思いまして」
にっこり笑う彼はイギリスと同様童顔なのに妙に迫力がある。
しかし日本に本当のことを言うことなどできない。
彼がイギリスやフランスから休憩中にあったことを聞いていたとしても
どうしてそのようなことになったのかなど言えるはずもない。