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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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「見つけた」
アメリカと似ている顔をほわりと綻ばせたカナダは敷き詰められた落ち葉の絨毯を
さくさくと踏み締めながらアメリカに近づく。
遠くから見たときは気付けなかったが、雪が降りそうなほど寒い温度の中
カナダはうっすらと汗をかいていた。
それほどまでに迷惑をかけてしまったことが申し訳なくてアメリカは視線を下に落とす。
普段ならば気にもしないけれど、イギリス譲りのネガティブを発揮している
アメリカには些細なことですら気になってしょうがなかった。
「隣座るよ」
にこにこと微笑んだままカナダはアメリカの隣に腰掛ける。
スーツが汚れるのではないかと思ったが、地面にそのまま腰掛けているのは
アメリカも同じことなので黙って隣に座ることを受け入れた。
「・・・・・・見つかると思わなかった」
「何言っているの。昔からかくれんぼで僕に勝てたことないじゃないか」
ぽつりと呟くとカナダは苦笑しながら昔のことを持ち出してきた。
常のアメリカならば怒りだしているところだが、うん、と小さく頷いて
キミは昔から強かったねと素直に同意した。
普段だって怒りはするけれど、別に昔のことが嫌なわけでも嫌いなわけでもないのだ。
ただ気恥ずかしいだけで。
「キミは見つけるのが上手で隠れるのは下手。イギリスさんは隠れるのは上手だったけど
 見つけるのは下手だった」
「・・・・・・カナダは見つけるのも隠れるのも上手だったね」
「キミもイギリスさんもお互いを探すのに必死で僕のことは
 あまり気にしていなかったからね」
「怒っているのかい?」
「今更だよ。それにこんなことで怒っていたらドイツさんみたいに
 怒りっぽくなっちゃう」
「そんなことを言っているのを聞かれたらドイツに怒られるよ」
「大丈夫。キミがばらさなければドイツさんにはばれないから」
おどけたような台詞にアメリカはようやく視線を隣のカナダに向ける。
にこにこと笑うカナダに含みなどない。
過去のことを持ち出したのはカナダだったが、負い目があるのはアメリカだ。
しかも今はややネガティブに物事を考えてしまうからにこにこと笑う兄弟の
本当の気持ちが気になってしょうがなかった。
けれどカナダは言葉の通り、本当に今は気にしていないようで少しだけ安堵する。
「俺はヒーローだからね。兄弟の秘密をばらしたりしないんだぞ」
「キミがヒーローでよかったよ。ドイツさんに怒られなくて済む」
「はは、俺に感謝するといいんだぞ」
話しているうちにようやくいつもの調子を取り戻してきたアメリカが
軽く笑い声を立てた。
こうして笑うのも久しぶりのような気がする。
目尻に滲んだ涙を指で拭うとカナダが小さく「アメリカ」と名前を呼んだ。
なんだい?と答えるとえっとね、と言い淀む。
「・・・今は逆になったね。アメリカは見つけるのは上手だけど隠れるのは下手だ」
「ヒーローは隠れちゃ駄目だからね!当然のことだろ」
「そうかな?僕はそうは思わないけど」
「ハリウッドのヒーローは皆正々堂々としているよ。ヒーローとして
 俺も見習うべきなんだ」
「・・・・・・アメリカ」
今度はもう少しはっきりと名前を呼んでカナダは眉を下げた。
困らせているとわかっているけれど、今はまだ向き合う勇気がなかった。
ヒーローは正々堂々としているべきだと口にしたばかりなのに正々堂々とできない。
何故ならカナダはきっと『彼』の話をするからだ。
アメリカが置き去りにして傷つけた彼の話を。
気にならないと言ったら真っ赤なウソになるけれど今は向き合えない。
今更ながらに怖いのだ。
彼が自分のことを嫌いになって恨んでしまうかもしれないことが。
好きでいることを諦めるはずなのにこれ以上嫌われることが怖かった。

「キミのことをとても心配してたよ。自分のせいで嫌な思いをさせた。
 傷つけてしまったって」

どくん、と心臓が嫌な音を立てて脈打った。
誰が嫌な思いをしたって?傷ついたって?
そんなの決まっている。
嫌な思いをしたのも傷ついたのもイギリスだ。
それなのに彼はこんな自分を心配してくれているのだという。
そんなわけないじゃないかと緩く首を振ってアメリカはカナダの言葉を否定した。

「キミに昔の自分をなぞらせる様な真似をさせてしまったって言ってた。
 キミが嫌がることを知っていたけど、止めることができなかったって」
「だって・・・だってイギリスはあんなに喜んでいたじゃないか」

英領アメリカに戻っていた頃、イギリスはとても優しくて紳士的だった。
キスもハグもたくさんしてくれたし、夜はいつも一緒のベッドで寝てくれた。
あまり我儘を言わないようにしていたけれど、何故かイギリスはアメリカの
言いたいことをわかっていて、先回りするように我儘を聞いてくれていた。
あの頃の幸せが再び戻ってきたかのような幸福に彩られた日々を
アメリカはこの数カ月の間過ごしてきた。
今日、あの日のようにアメリカが壊してしまうまでは。
「ねえアメリカ。イギリスさんって酷い人だよね」
「え?」
カナダの口から飛び出した思いもよらぬ言葉にアメリカは目を瞬かせる。
イギリスのことをどこか尊敬している節のあるカナダがそんな言葉を言うなど
考えられなかった。
イギリスを酷い人と評したカナダは穏やかな表情を浮かべていて
真意を読み取れない。
どちらにせよ、その言葉に頷くことなんて到底出来なくてアメリカは否定するために
口を開く。
「イギリスは酷くない。酷いのはむしろ俺の方だ。彼の可愛いアメリカを
 二度も奪ったのだから」
「キミに今の自分はいらないと言わせても?」
「・・・・・・そうだぞ。イギリスは酷くなんかない」
少しだけ言葉に詰まって反論するとカナダは目を伏せて「そう」と呟く。
何故カナダがイギリスを酷いと評するのかわからなくて口を尖らせると
伏せていた目をゆるりと開いて、独り言のようにカナダは言葉を続けた。