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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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「僕はイギリスさんのことを尊敬しているし、立派な人だと思っている。
 けど、この件に関してだけは酷い人だと思うんだ」
感情を乗せない淡々としたもの言いは怒っているようで少しだけ怖い。
イギリスは怒らせてもそんなに怖くないけれど、普段穏やかなカナダが怒ると
こちらが泣くまで説教をしてくるものだから、アメリカは怒ったカナダが苦手だった。
「俺が悪いんだ。だから・・・・・・」
「アメリカ、聞いて」
立ち上がったカナダがアメリカの正面に膝を着いてしゃがみ込み
青い瞳をまっすぐに覗きこむ。
らしくなく逸らそうとした視線を頬を両手で包みこんで固定させ
幼子に言い聞かせるように言葉を紡いだ。
「今のキミは混乱している。イギリスさんに小さい頃のキミしかいらないと言われて」
「・・・・・・」
言葉など出なかった。
カナダの言うとおりだ。
イギリスは、今のアメリカを必要としていない。
彼が必要なのは、好きなのは英領アメリカなのだから。
そんなことは言われなくてもわかっている。
そのわかっている事実を改めて他人の口から聞くと胸がぎゅっと締め付けられるような
痛みを感じた。
真っ直ぐにこちらを見つめる菫色から逃れたくて震える手を持ち上げてカナダの手を
引き離そうとしたが、まるで接着剤でくっつけたかのようにぴったりとくっついた手は
アメリカの力をもってしても離れない。
どうして、と言葉ではなく視線で問いかければ、カナダの視線は本当に少しだけ
わずかに緩んだ。
「それでもキミはイギリスさんの為にあの頃のキミに戻ろうと努力をした。
 少しでもイギリスさんを喜ばせたかったし、何よりもキミはイギリスさんを
 愛していた」
「うん。それでイギリスが喜んでくれるならよかったんだ」
吐きだした言葉に嘘はなかった。
事実、イギリスはとても喜んでくれた。
あんなに幸せそうにしていたのを見ることができたのは英領アメリカの頃しか
なかったから、英領アメリカに戻るという己の選択は間違っていないのだと
胸を張ることができた。
「だけどその代わりに失ったものがあるよね」
「失ったもの・・・?」
訝しげにアメリカは呟く。
アメリカが英領アメリカになることで失ったもの。
そんなものがあっただろうか?
全く予想もつかない。
得たものはあれど失ったものなんかないじゃないか。
そんな気持ちを込めてカナダを見つめ返すと笑っていたカナダがふとその表情を
真剣なものに変化させる。
「自由。アメリカ合衆国が誇る自由をキミは失った」
「失ってなんか・・・!」
「イギリスさんの思うように沿って生きる今の生き方が自由だと言えるのかい?」
「・・・そうやって生きるのも、俺が選んだ、自由な生き方の一つだ」
だから失っていないよと言い張るアメリカの声は震えていた。
自由を失う。
それはアメリカにとって自我の崩壊と意味が等しいことだ。
何者にも縛られずに己の道を歩む。自由の国アメリカ。
国象である『アメリカ』もまた何者にも縛られない自由の象徴であるはずだ。
事実、アメリカは誰にも縛られずに生きている。
今回のことだって、誰かに強制されたわけではない。
全て自分の意志と手で掴みとったものだ。
「お願い、気付いてよアメリカ。今のキミはひどく歪んでいる。体調不良だって
 キミがキミを歪めているから起こるんだ」
「俺は」
「キミがイギリスさんを好きなことが駄目なんじゃない。キミが自分を無理に
 押し殺すことが駄目なんだ!」
頬に添えられていた手がアメリカの腕を掴んでがくがくと揺さぶりをかける。
揺さぶりをかけているカナダは必死で今にも泣きだしそうだ。
そのカナダの手を自由になりきれない手で掴んで制止した。
そして口を開く。
「しょうがないだろ。あの人は、今の俺なんて見てくれないんだから」
「アメリカ」
「けどね、もういいんだ。俺は止めるから」
「え?」
ぽかんとアメリカを見つめるカナダに向かって笑みを浮かべる。
笑顔を見せるのは得意だけれど、今の自分がきちんと笑えているか自信がない。
だけれど笑わなければ駄目だ。
笑わないときっと泣きだしてしまう。
みっともなく泣きじゃくってしまう。

「俺は、イギリスを好きでいることを止めるんだ」

嘘だよねと絞り出したカナダの声はそのまま宙に溶けて消えてしまいそうなほど
儚い響きを秘めていた。
「嘘じゃないよ。嘘でこんなこと言えるもんか」
「だってキミ、好きでいることを止めるなんて・・・!」
カナダはまるで自分がアメリカであるかのように悲壮な声を上げ
顔を真っ青に染めていた。
いや、アメリカはこんな悲壮な声を上げないから反応としてはイギリスに近い。
そんな悲壮な声を上げるほど優しい兄弟はアメリカの痛みを自分の痛みのように
感じているのだろう。
それがくすぐったくって、嬉しい。
仲の良い友好国と言われる国はいくつもあるけれど、こんな風に真の意味で
アメリカの感情を掬い取ってくれるのはカナダだけだ。
日本やフランスも掬い取ってくれるけど少しだけ違う。
「僕があんなことを言ったから止めるの?」
「違うよ。・・・あのねカナダ。俺の話を聞いてほしいんだ」
そう切り出して、長い話になるからとカナダを隣に座らせ、英領アメリカとして
イギリスと共に過ごした数ヶ月間をアメリカは語り始めた。
一緒のベッドで眠っていたこと。
世界で一番大好きだと言ってもらいキスをしたこと。
一日中、イギリスの家で睦あったこと。
さすがに昼休みにあった告白劇を話すときには胸が痛み、言葉が止まりそうになったが
それでも最後まで話すことができた。