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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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「イギリスさんがそんなことを・・・」
「うん。俺がイギリスのことを好きになるなんてありえないって。冗談でも言うなって
 はっきりと言われたよ」
あのとき、アメリカを映し出す碧玉は傷ついたようにひび割れていた。
それはそうだろう。
彼はれっきとした異性愛者であのときだってお前の好きなのはベラルーシや
ハンガリーなのだと主張していた。
あの的外れな主張には正直笑い出しそうになったけれど、笑いだしたら同時に
涙も零しそうで、ただぐっと堪えるしかなかった。
彼はあくまでアメリカを可愛い弟としか見ていなくてハグや行き過ぎたキスも
弟に対する愛情表現でしかなかった。
一つのものに執着しやすい気質を持つ人だから気付かなかったのだろう。
その愛しい弟が兄に対して欲望を抱いているなんてことは。
「それに俺がイギリスを好きなせいで色んな人に迷惑をかけているからね。
 ヒーローとして、それはいけないことだと思うんだ」
「それで、キミは後悔しない?」
カナダの問いにアメリカはうんと頷き、そしてやや間を取ってから口を開く。
「すごい後悔すると思う。正直、諦められるか自信が無いんだ。
 何せ、二百年以上も好きだったしね。それでも俺は決意しないといけないんだ。
 彼のためにも、ね」
鮮やかな笑みを浮かべてアメリカは胸中にある思いを吐きだした。
きっと現実は言葉以上に後悔するのだろう。
諦めなければよかった。彼のことを好きでいたいと苦しむのだろう。
けれども、もう終わりにしなければならない。
彼の苦しみに終止符を打つためにも。
黙ってアメリカの言葉を聞いていたカナダはううんと唸った後
苦しいものを吐きだすように唇を開く。
「キミってば極端だよね。それがアメリカなんだろうけど」
「はっきり決着をつけないと気持ち悪いじゃないか。それに迷っている
 余裕なんてないだろ」
そう言いながらも揺れている蒼い瞳はアメリカの心情を如実に表していた。
アメリカの心情は言葉ほど整理されていないのだろう。
それがわからないカナダではないからどうしようと一瞬逡巡を見せかけた。
だが、それは本当に一瞬のことでもう言うべき言葉は決まっている。
「休む期間だと思えばいいんじゃないかな。諦めるとか止めるとかじゃなくて
 一休みする期間。ずっとイギリスさんのこと好きだったんだから
 そういう時期にあってもいいんじゃない」
「けど俺は」
「じゃあアメリカはあんなに好きだったイギリスさんのこと、明日から諦める
 ことができる?」
「それは・・・・・・」
「難しく考えないで。働きすぎたら僕たちだって休むだろう。それと同じだよ。
 恋愛にだってお休みが必要なんだ」
投げ出されていたアメリカの手に己の手を重ねてカナダは微笑んだ。
アメリカは迷うように視線を下に向けていたが、やがて覚悟を決めたように
視線をカナダに向けて、こくりと一つ頷く。
「そうだね。休みだと思えばいいのかな」
「そうだよ。キミ、休むことなら得意じゃないか。キミの秘書官が
 アメリカは休みに関わることだとはりきるって言っていたよ」
「彼、そんなことを言っていたのかい?」
「うん、この前会ったときにね」
くすくすと笑うカナダに毒を抜かれたようにアメリカは肩を落とした。
秘書官には今度会ったときに余計なことを言わないように釘を刺さなければいけない。
そうでなくとも、この兄弟には勝てないのだから。
「さて。そろそろ会議場に戻らないと。日本さんがドイツさんのことを抑えているから
 大丈夫だと思うけど、遅くなったら怒られちゃうしね」
「うん。・・・そうだね」
カナダの言うとおり、昼休みが終わってからかなりの時間が経っているので
戻らないとまずいということはわかる。
しかし、会議場にはイギリスがいる。
いくらお休み期間とはいえ、あのようなやり取りをした後で彼と会うのは気まずかった。
「・・・安心して、と言っていいかわからないけど、残っているのはドイツさんと
 日本さんだけで会議自体は休会になっているんだ。一応、休会といっても
 議長に説明しないといけないから」
「そう、なんだ」
安心したとは言えずに曖昧に頷くだけにアメリカは留めた。
イギリスと顔を合わせなくて済むことにほっとしたが、今、彼がどんなに傷ついている
だろうかと思いを馳せると苦しくて堪らなくなる。
そんなアメリカの気持ちを宥めるようにカナダが重ねた手にぎゅっと力を込めた。
そうだ。自分にはこんなに優しい兄弟が居る。
いつまでもうじうじと悩んではいられない。
「じゃあ行こうか。道はわかるよねカナダ」
「任せて。会議場までの近道があるから」
手を重ねたまま立ち上がって、カナダの後を追うように歩きだす。
いつもカナダの先を歩いていたから彼の後を着いて歩くなんて久しぶりだ。
先を進むカナダの背中を見つめながら昔を思い返す。
そうだ、あの頃はカナダじゃなくてイギリスが手を引いてくれた。
イギリスはアメリカを見つけるのが本当に下手だったけれど、最終的には必ず見つけて
手を引いて反対側にはカナダを連れて、三人で家に帰った。
あのときと少し状況は違うけれど、懐かしくてもどかしい気持ちになる。
「アメリカ?どうかした?」
「ううん、何でもないよ」
訝しげに振り返る兄弟に首を振って、隣に並んだ。
手を引かれるよりは並んで歩いた方がいい。
ここにイギリスも居たらいいのになとごく自然に思いながら
アメリカは繋がれた手にギュッと力を込めた。