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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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Love yearns act12 UK side


イギリスのロンドン郊外にある隠れ家のようなパブ。
客はさほど多くなく、経営状況が心配になるような日々が続くが
不思議と閉店するという噂すらたつことが無い。
というのも、このパブには大層なパトロンがついており、その気まぐれが
続く限りは潰れることが無い。
常連客の間でまことしやかに囁かれている噂であるが誰も信じている者はいない。
そのようなパトロンが実際に存在するのならばこのような寂れたパブなど
経営していないだろう。
しかしこの噂は真実であり、パトロンは存在する。
日が変わる狭間時間。パブでいえばゴールデンタイムに相当する時間。
その素晴らしき時間にパブのカウンターに一人突っ伏している男がそのパトロンである。
一時間ほど前にふらりと現れたその男はキープしていたウイスキーを
まるで水を飲んでいるかのようにハイペースに飲んでいた。
普段は嗜む程度に上品に飲むのだが今日は煽るように飲み続け
すでにボトルを一本空けている。

「アメリカ・・・・・・」

バーカウンターに突っ伏している男―――――イギリスは涙を啜りながら
最愛の子の名を呼ぶ。
ドイツからとんぼ返りをしたイギリスは荷物を屋敷に投げ込むように置き
その足でパブを渡り歩いた。
ここに来るまでにすでに数本のボトルを体内に収めており、普段ならばとっくに
脱いで暴れていてもおかしくないアルコール量を摂取していた。
しかし今宵は飲めど飲めど酔いが回らない。
ただの色のついた水を飲んでいるのではないかと錯覚しそうになるが
喉を焼くような苦味は水にはないものであり、その苦味だけが今、己の
飲んでいるものが水ではなく酒なのだとわかる要素であった。
すん、と鼻を啜って身を起こす。
ぐるぐると頭の中で何回も再生されるのは傷ついてひび割れたオーシャンブルー。
きつく寄せられた眉根。戦慄く口唇。
ああ、彼はなんと言っていたか。
―――――覚えている。忘れてはいない。
だけど意味がわからない。

『キミがいなければ、俺は満足に呼吸もできやしないのに』

ぐるぐると永遠に回り続けるメリーゴーランドのように何度も繰り返される言葉。
いなければ、息ができないのはこちらの台詞だ。
アメリカがいなくなった世界で生きていくことなどできない。
もしも本当にアメリカがいなくなったとしたら、『国』としてのイギリスは
生きていても『個人』としてのイギリスは息絶えるだろう。
そのようにアメリカも考えたというのだろうか?
イギリスが消滅した時に彼も息絶えてしまうのだろうか。

(そうだったらどんなに―――――いや、それは困る)

同じようにアメリカが思ってくれていたとしたらそれは喜ばしいことだ。
けれど同時にあってはならないことでもあるのだ。
自分の為などに彼が損なわれることなどあってはならない。
彼と自分では存在価値が違いすぎるのだ。
そういうところが卑下しているのだといわれるのかもしれないが
イギリスにとっては単なる事実でしかなかった。
もしもアメリカを愛していなかったとしてもその考えは変わらないだろう。
一目会ったときからもう決まっていたのだ。
どのように彼に対する感情が変化していっても根本的なものは変わらない。
あのとき、アメリカがイギリスを選んでくれたときに決まっていたのだ。
イギリスの持つ何もかもを差し置いても、イギリス自身ですら彼には敵わないのだと。
それはもう運命だとか宿命だとかそのような言葉にできない不思議なものに
決めつけられていると言ってもいい。
大好きなアメリカ。愛しいアメリカ。
何よりも大切な宝物。
大輪の花火のように明るく笑う彼の顔が脳内をよぎり、また涙が溢れてくる。
本当の本当に、心の底から好きなのだ。愛しているのだ。
アメリカ以上に愛する存在など、想う者など存在しないのだ。
どんなに憎んでも恨んでもこの愛を覆すことなどできない。

「アメリカ・・・・・・」

ずずっと鼻を啜り、少しだけ身を起してグラスに入った酒を煽り、再び伏せる。
こうしていても事態は何も変わらないことをイギリスは熟知していた。
むしろ逃げているぶん、悪くなっているといってもいい。
昼休みも終わり、会議が始まっても戻ってこない二人を心配して
探しに来てくれたのはカナダだった。
情けないことにべそべそと泣きながら話すイギリスの言葉をカナダは辛抱強く
聞いてくれて、後のことは任せてくれていい。大国二人を欠いたままで
会議は続けられないから会議自体は休会になった。だからそのままロンドンへ
帰っても構わないとまで気を使ってくれた。
普段のイギリスならば、そんな甘えることはできない。
ロンドンに帰るにしてもきちんと自分の口から開催国であるドイツに謝罪をすると
主張していただろう。
しかしイギリスは後のことを全てカナダに託し、逃げるようにロンドンに帰ってきた。
そしてパブを巡り、みっともない姿を晒し続けている。
ああもう本当に、いつしかのアメリカの言葉のようにくたばっちまえばいいんだ。
そう思って再び酒を煽ろうとした時、ドアのベルのからんと鳴る音が
イギリスの耳に届いた。