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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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「イギリス、お前は本当に心の底からアメリカのことを愛しているんだな」
「なっ・・・ふざけんじゃ」
「からかっているんじゃないよ」

今までの長い腐れ縁の付き合いの中でも見たことのないような柔らかい笑みを浮かべて
フランスはイギリスを見据えた。
その笑みに一瞬だけ気圧されたがすぐにいつもの調子を取り戻して
気持ち悪ぃんだよ髭と吐き捨てる。
だが動揺はグラスを握る手に如実に表れていて、声に出さずフランスは笑う。
笑われた気配を敏感に察知したイギリスは射殺しそうな瞳でフランスを睨みつける。
そして舌打ちをして酒を追加した。
「あ、こいつ飲み過ぎだから水割りでよろしくね」
「んなまずい飲み方しねえよ!!」
「夕方から通しで飲んでいるんだからいい加減にしろって。あ、マスターMerci」
「ここでテメエの言葉出すんじゃねえ」
「やだね。誰がお前の言うことを聞くか」
「クソ髭・・・・・・」
ギリギリと歯軋りが聞こえそうなほど噛みしめたイギリスは合間を縫って出された酒が
フランスの横割り通り、水で割られたものであることに気付いて、ますます表情を
険しくする。
確かに夕方から飲んではいるが、今日はまったくといっていいほど酔いを感じていない。
それなのに薄くなるだけで旨みなど全く感じられない水割りなど飲めるはずがない。
だが、出されたものをつき返すのも憚れて、イギリスは仕方なしにグラスに口をつけた。
「薄い・・・・・・」
「明日も仕事はあるんだから我慢しないと」
「テメエの酒も水で割ってやろうか?」
「俺は今日初めて酒を口にしたからいいの」
勢いよくグラスを空けていくフランスに比べ、イギリスは先ほどの勢いが嘘のように
静かにグラスを傾けている。
「酔いでもしなければ、坊ちゃんにアドバイスなんてできないからね」
「いらねえからさっさと消えろ」
「いいから聞きなさいって」
駄々をこねる子供をあやす様な口調で言われて、イギリスは片眉を上げた。
しかしその口から言葉が零れることはなく、ただ黙って酒を口に運び続ける。
イギリスの中で多少の不満がくすぶっているだろうが、意見に耳を傾ける体制に
なったことを感じ取ったフランスはイギリスにではなくワイングラスに
視線を落として口を開いた。

「イギリス。お前さ、自分の手であいつを幸せにしてやろうって思ったことはないの?」
「ハア?」
「他の誰かじゃなくて、お前自身の手でアメリカを幸せにする。
 その方がイギリスらしいと思うけど」
「・・・・・・」
「イギリス?」
「考えたこともなかった。俺が、この俺が誰かを幸せにするなんて」

茫然とした、愕然とした面持ちでイギリスは呟く。
「愛」を知らない自分が誰かを愛せるなんて思いもしなかった。
けれど、アメリカに出会いイギリスは「愛」を知った。
知ったばかりの「愛」をイギリスは溢れるのにも構わずアメリカに注ぎ続けた。
注ぎすぎた「愛」は溢れかえり、決壊して、全てを押し流した。
そうして残ったのは空っぽなイギリス。
そんな自分が他の誰かを、他の誰でもないアメリカを幸せにできるなんて
考えたこともなかった。
考えられるはずもなかった。
昔の自分は奪うことしか考えていなくて誰かに何かを与えることなんて
知りもしなかった。
アメリカに出会い、与えることを知ったけれど、自分は与え方がとても下手だ。
だからきっと誰かを幸せにするなんて無理だ。
その誰かがアメリカならば尚更。
「まさかやってもいないのに無理とか考えてないだろうね?」
「考えるまでもないことだろうが」
「ほんっとアメリカのことになるとネガティブだね」
「・・・・・・うるせえ」
力無く罵ってイギリスは項垂れた。
アメリカに対してポジティブであったことなど彼がまだ自分の植民地であった頃か
つい先日の子供返りを起した時期しかない。
今の、独立以後のアメリカに対してポジティブに物事を考えるなど
ありえないことであった。
彼との関係を前向きに考えるには独立戦争のことが根深く根差し過ぎていたし
何よりイギリスはアメリカに嫌われているのだと思い込んでいた。
愛する人間に徹底的に嫌われていると知っていて、前向きになれるほど
イギリスは楽観的な人間ではない。
唇を噛んで俯いているイギリスの頭をフランスはぽんぽんと叩いた。
その仕草は駄々っこを宥めるというよりも励ましている意味合いの方が
強いような気がして、イギリスは払いのけることも不満を漏らすこともなく受け入れる。

「・・・アメリカのことが好きなんだよね?」
「ああ」
「だったら悩むことはない。ぐだぐだ悩んでないで、あいつを幸せにしておやり」
「けど俺は・・・っ」
「アメリカをこれ以上泣かせるつもり?」

比喩のないストレートな言葉にイギリスはフランスに視線を向け、真意を探るように
じっと青い瞳を見た。
対するフランスは淡く微笑んだまま視線を逸らすことなく見返す。
迷いのないフランスの瞳の中のイギリスは対照的に躊躇いを隠せないでいる。
その戸惑いから逃げるようにイギリスは再びグラスに視線を戻し
血が滲みそうになるほど唇を固く噛みしめて、咄嗟に吐き出しそうになった
拒否の言葉を飲み込んだ。