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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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「では祖国。キャサリンさんには伝えておきますので」
「おい、キャサリンに言うのかよ」
「ええ。何か不都合なことでも?」

報告は終わったと一礼をして、執務室を出て行こうとしたジェームズは
不思議そうに振り返った。
不思議そうな表情を浮かべているジェームズにアルフレッドを溺愛している彼女に
あのような言葉を伝えればどんなことになるか想像つくだろ、と言いかけて
イギリスは口を噤んだ。
どちらにせよ、今度会ったときにとびきりの嫌味を言われることは確定しているのだ。
ならば、少々言葉が行き過ぎても問題は・・・あるだろうが、黙っているのも癪だ。

「いや、ない。よろしく伝えておいてくれ」
「・・・・・・どのようにすれば、この言葉をよろしく伝えられるのですか」

はあ、と疲れ切った表情で再びため息をついたジェームズはとぼとぼと執務室を
出て行った。
その後ろ姿を見送ってからイギリスは椅子に腰かける。
そろそろ上司に昨日の会議のことについて報告に赴かなければならないが
朝から少々疲れてしまった。
背もたれにどっしり体を預けて、軽く目を伏せる。
報告内容を推敲しながら想いを馳せるのは太平洋を挟んだかの地。

「アメリカ・・・・・・」

小さく名を呼んでイギリスは目を開けた。
シミ一つない綺麗な白亜の天井は彼の勤めるホワイトハウスを彷彿とさせる。
いや、あちらは微かにクリーム色がかかった白だ。
ここまで白くはない。

「どうしてっかな、あいつ」

今頃はもう飛行機に乗った頃だろうか。
以前、今日の予定を聞いた時にはオフだと言っていたので、もしかするとまだドイツで
ゆっくりしているのかもしれない。
今回のドイツでの会議も含めて、世界会議などで使われるホテルに宿泊する際は
明確なチェックアウト時間は設けられていないことが多い。
というよりはほとんど設けられていないと言ってもいい。
大抵はワンフロア全体を日程にも余裕を持たせて貸し切っているため、場合によっては
ホテルに滞在したまま観光に出かけたり、次の仕事までの時間を潰す国も多い。
イギリスもそうした使い方をしている一人であり、大陸での仕事が連続する場合には
わざわざ本国に戻らず、ホテルに滞在していることの方が多かった。
アメリカはどちらかというとさっさとチェックアウトしてしまう方だが
仕事に余裕のある時はホテルを拠点にしてカナダや日本を連れまわして
食べ歩きへ出かけることもある。
今日もそうして過ごしているのだろうかと想像しかけたところで振り払うように
ゆっくりと首を左右に振った。
背もたれに預けていた身体をゆっくりと起こし、机に肘を着いて組んだ指に
額を強く押し付ける。

「アメリカ・・・っ」

絞り出すように出した声はみっともないほど縋るような響きを秘めていた。
彼を幸せにするのだと誓った心とあれほど傷つけておいて今更できるのかと
責める心が激しくひしめぎ合う。
彼を愛している。
明るい笑顔を見るのが好きだ。美味しいものを食べてにこにこしている姿を
見るのも好きだ。
ヒーローだと胸を張り、願望を口にする姿も好きだ。
もちろん、本当に心の底から馬鹿だと思う時もあるし、憎んでいた時期だって長かった。
それでも全ての感情を超越するほどの「愛」が彼を欲している。
それこそ、一生をかけた「愛」だ。
気の遠くなるほど長い、国の一生をかけたアメリカへの愛。
この想いが成就するかどうかは今週末にかかっている。
組んだ手に額を押し付けたまま伏せていた瞼をゆっくりと開く。
ぴかぴかに磨き上げられたマホガニーの机は情けないイギリスの顔を
克明に映し出していた。
しばし無言で机に映し出されている顔を見つめ返し、一度硬く瞳を伏せてから顔をあげて
机に置いてある電話機のうち、左側の上司直通の受話器を持ち上げる。
彼と迎える週末の為にも仕事はきちんと終わらせておかなければならない。
すぐに繋がった上司に昨日のことを報告しながらイギリスはどうすれば休暇に
呼び出しが入らずに済むのかスケジュールを計算し始めた。

□ ■ □ ■

午後一番のフランスとの打ち合わせが終わったイギリスはいけすかない隣人と共に
フランスお勧めだというフレンチレストランに向かっていた。
午前中に気合を入れて仕事をしすぎたおかげで昼食を取るタイミングを逃し
そのままフランスに向かって打ち合わせに臨んだのだが、よりによって打ち合わせの
最中だという最悪のタイミングでお腹が鳴ってしまった。
もちろん、それなりに真剣に行っていた打ち合わせの雰囲気はぶち壊され
腹が捩れそうなほど笑っているフランスにイギリスは鉄拳制裁を喰らわせた。
その後も機嫌の悪いイギリスに恐れをなしたフランスが笑ったお詫びにと
お気に入りのレストランを紹介すると告げた。
それだけならば、行かないと言いだすほどの機嫌の悪さだったが、オフをフランスで
過ごしているカナダも来ると聞いて、仕方なく、そう仕方なくだ、行くことを
了承したのである。
打ち合わせで利用した会議室のあるホテルから車で一時間。
市街地から少し外れたレストランは畑に隣接した素朴な雰囲気の店だった。
10分ほど前にカナダから先に着いたという連絡を貰い、先に中で待っていてくれと
フランスが返したので、二人はカナダを待つことなくレストランに入る。
お昼を過ぎて、夕食を取るには少し早いといった時間帯のせいか人はまばらだったが
店内は暖かいざわめきに満ちており、その中をウェイトレスに先導されて
予約を入れていたという個室に向かった。