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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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それなのにイギリスは友人の忠告を忘れ、最悪の方向へと二人の関係を導いてしまった。
やはり自分にはアメリカを幸せにすることなど無理なことなのだろうか?
おこがましい、思いあがった考えなのだろうか?
視線をカナダから外し、真っ白なテーブルクロスに落とす。
視界が滲むのは涙か。
自分の弱さが嫌になる。
無理、かもしれない、と口に出そうとした時、不意にとある光景が脳内を過った。

『俺、イギリスより好きな人なんていないよ』

『―――――っ』

『昔からずっとイギリスが一番なんだ』

世界で一番好きな人が居るとアメリカに告白された時のやり取りだ。
あのときイギリスはアメリカの告白を家族としての愛情が一番という意味で受け取った。
だが、そうではないと今ならわかる。
このとき既にアメリカは真っ直ぐにイギリスのことが好きだと告げていたのだ。
イギリスの意に沿うようにあの子に戻っていても、なお、愛しているのだと
アメリカは叫び続けていた。
気持ちを落ち着かせるために息を吸い込んで顔を上げる。
上げた拍子に涙が零れ落ちたが、イギリスは気にせずに口を開く。

「俺は、昔も今もアメリカを愛している。あいつを嫌いになったことなんてない。
 今までの俺には覚悟がなかった。だからアメリカを何度も泣かせた。
 けど、今回は間違えない。俺は、俺の手で、あいつを幸せにする」

はっきりと宣言をして口を噤む。
泣きながらの宣言は格好悪いことこの上ないが、これはこれで自分らしい宣言だろう。
零れ落ちる涙を拭うことなく驚いた表情の二人を半ば睨みつけるように見つめる。
ちくしょう。これだけ恥ずかしい告白をしたんだ。
お前ら何か言いやがれ。
そんな言葉が喉元までこみ上げてきたが実際に音になる前にフランスが
大げさに天を仰いだ。

「お前そこまでアメリカのことを愛しちゃっているならきちんと言いなさいよ。
 もう信じらんない」
「今回ばかりはフランスさんに同意です。イギリスさん、そういうことはアメリカに
 直接言ってあげて下さい」
「な、なんだよお前ら!んなこと言わなくたってわかってるんだよ。だから今週末に
 アメリカに行って・・・・・・」

告白するんだよと尻すぼみになっていく言葉にカナダは重ねて「お願いします。でないと
アメリカに逃げられてしまいますよ」と脅しをかけた。
カナダ自身は脅しではないと言っていたが、あれは立派な脅しだ。
同席しているフランスにも散々からかわれ煽られ爆発したイギリスがフランスに
制裁を加えたところで少し遅い昼食は終わった。
それが三日ほど前の話だ。
そして全ての仕事を終わらせ、緊急時以外の連絡を入れないように調整した週末。
約束通りにイギリスはアメリカの地を踏んでいた。
クリスマス前のホリデーシーズンを迎えたニューヨークは郊外といえども
華やかな雰囲気をまとっていた。
少し前に中心地から郊外に引っ越しをしたアメリカは待ち合わせに使う場所も
ニューヨーク中心地から郊外の駅前の小さな広場へと変えていた。
場所をはっきりと指定しなかったが、いつもの待ち合わせ場所と言えばここだ。
その時計の前でイギリスはもう3時間は待っていた。
この時期はロンドンも寒いのだがニューヨークは更に寒い。
最初は痛かった肌も今はもう何も感じない。
ベンチに腰掛けているイギリスは手袋を外して悴んだ指にはあ、と息を吹きかけた。
だがそれは逆効果で少しだけ温まった指を冷たい風がすぐに凍らせる。
暖かさを感じた直後の寒風は余計に染みて、思わずイギリスは天を仰いだ。
空を覆っている灰色の分厚い雲からはちらちらと雪が舞い降りている。
傘を差すほどではないが絶え間なく降り続ける雪は着実にイギリスの体温と
体力を奪っていった。
視界に入る時計の針はもう17時を示している。
けれど、アメリカは来ない。連絡も、ない。

(やっぱ、来ねえのかな)

アメリカにここで待っていると告げた時、彼は返事をしなかった。
だから彼がここに来なかったとしてもイギリスは責めることはできない。
だけど、信じたかったのだ。
アメリカが来てくれて、イギリスの話を聞いてくれるという可能性を。
その結果、嫌いだと言われても諦めるつもりなど今のイギリスには無かった。
彼がイエスと言ってくれるまで口説き続ける。
そう決意をしてここまでやってきたのだ。

(さみい)

手袋をつけ直して、今度は手袋越しに指を擦り、寒さを紛らわせる。
ニューヨークの寒さは熟知しているのできちんとコートを着込み
マフラーも手袋も着けているのだが、三時間もの間、動かずにじっと待ち続けて
いたせいかイギリスの体は冷え切っていた。
先ほどまでは携帯をチェックする余裕があったが、今はコートに入っている
携帯を取り出す気力もない。
灰色の空を見つめたまま息を吐くとすぐに白く染まって宙に溶けていく。
ああ、自分も溶けてしまいそうだなと思って目を伏せた。

(アメリカ)

小さく名を呟く。
早く会いたい。会って好きだと、愛していると伝えたい。
だから来てくれアメリカ。
祈るように腹の上で指を組む。
空を見続けたせいで首が酷く痛むが戻せない。
眠気とは少し違う、もっと冷たく恐ろしいものが少しずつ意識を侵していく。

(アメ、リカ)

雪が降る音も微かに聞こえるざわめきも全てが遠のいていく。
誰かが近づいてきて体を揺さぶり、声をあげていた。
けれど、イギリスの耳はもう、何も聞こえない。
体を揺さぶる声も、何もかもが遠い。
瞼を持ち上げることすら億劫で揺さぶる手を振り払おうと身を捩ると
ずるりとベンチから身体が滑り落ち、どさり、と地面に身体が叩きつけられた。
しかしその衝撃すら意識を引き戻すに至らない。
そしてそのまま、ふつり、とイギリスの意識は途切れ、暗闇に落ちて行った。