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Love yearns(米→→→英から始まる英米)

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ドアはオートロックだから鍵をかける必要はない。
一人掛けのソファーから立ち上がったアメリカは妙に疲れている身体を
勢いよくベッドに投げ出した。
指先、足先から疲れがにじみ出ているような気がする。
倒れ込んだまま靴を脱ぎ、テキサスをサイドテーブルに置く。
「日本に言っちゃったんだぞ」
打ち明けるつもりのなかった想い。
アメリカの打ち明けるつもりのなかった想いを知ったのはこれで二人だ。
もう一人は白クマを抱えてどこかぼんやりしているのに誰よりも鋭いカナダ。
カナダにバレてしまったときはそれはもう驚いたけど、一方でカナダならわかるのも
仕方ないとアメリカは思っていた。
英領アメリカがどのようにイギリスと過ごしてきたのか。独立後、イギリスと交流を
断絶していた百年を知っているのはカナダ他ならない。
そういう意味ではフランスもアメリカとイギリスの歴史を知っていると言えるけども
それほど密に関わっていたわけではないから気づいていない。
あくまでアメリカの予想では。
気づいているとすれば、何かしらアクションを起こすはずだからからかいもしない
現状を省みれば、彼は気づいていないだろうとアメリカは確信していた。
それに比べ、日本はイギリスと過ごしてきた日々をほとんど知らず、ここ百年ちょっとの
付き合いしかなく、親しくなったのは数十年だけなのだから彼の観察力は
驚くべきものだといえる。
「イギリスに言わないといいなあ」
願う言葉は自然と小さな声になる。
日本は言わないと約束したが、本当に言わないかどうかはわからない。
彼が約束を破る人だとは思えないけど、イギリスと仲がとても良いから油断はできない。
イギリスがあまりにも辛そうだったら言ってしまうのかもしれない。
そう考えてアメリカは違うと呟く。
「俺は、怖いんだ」
もしも日本が本当にイギリスに言ってしまったとしてもアメリカは日本を
責めないだろう。
多少は怒るかもしれないが、許せないことではない。
それよりもアメリカが恐れているのはイギリスがアメリカを否定することだ。
あの断絶していたときの眼差しで否定されるのが一等怖い。
怖いものが無いはずのヒーローが恐れているのはただそれだけ。
好きになってもらおうとか愛してもらおうとかは考えていない。
ただ愛していることを許してほしい。
イギリス。
枕に顔をぎゅうぎゅうに押しつけて名前を呼ぶ。
心が満たされるのは一瞬ですぐに乾きが忍び寄ってくる。
心が乾くのは愛を欲しがっているから。
けれど、その愛は齎されない。
唯一齎すことができるのはイギリスしかいないのだから。
そのイギリスがアメリカに愛を齎すことはこの先何百年何千年経ってもありえない。
乾いた心は潤うことはない。
それでもアメリカは彼に届くことのない愛を囁き続ける。
好きだ。好き。愛しているよ。愛している。
本人の前では決して言えない想いを込めた言葉を呟きながら
アメリカは逃げるように瞼を閉じた。