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お前にもう一度愛を込めたキスを

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 元々スペインに調子を崩されまくってずっと付き合い続けてきていたのだった。どうもスペインと話していると自分のペースが崩される。それはスペインがそういう性格の男だからなのか、彼との相性が悪いからなのかは分からない。

「目障りだからとっとと帰れって話やろ?」
「別にそこまでは言わねぇけど、俺はお前と今までみたいな付き合いをする気はねぇし、ここに来られても相手なんてしてやらねぇぞって事は理解して欲しいと思ってる。だから」
「同じやん」

 プロイセンの言葉を途中で遮るようにして冷えた口調でそう言うと、スペインが内容と不釣り合いな陽気な笑みを浮かべた。思い切り彼の機嫌を損ねた事が伝わってくる。
 けれど、損ねたからなんだというのか。どうせ何かあればその時々の状況であっさり敵に回るんだろう相手だ。こちらも彼が目的の邪魔になるようだったら容赦なく剣を抜くだろう。国同士てある以上、個人的な友好関係なんて築く意味はたいして無い。
 全く、と呆れたように言ってスペインがふいに距離を詰めた。不意打ちでキスをされてプロイセンの体が一瞬固まる。だから最初は警戒していたのにいつの間に解いてしまったんだ。反射的に目を閉じてしまって、傍から見たらまるでスペインのキスを受け入れたみたいに見えてしまっただろう。くそっ、とプロイセンはスペインから一歩引く。
「逃げんでもええやん」
 悪びれた様子も無くプロイセンの肩を掴もうとしたスペインの手を叩き払うと、プロイセンはスペインを睨みつけた。スペインのペースに巻き込まれて堪るか。
「ダメだ、今ので最後だからな!」
「じゃあまた勝手にしたるわ」
「んな事したらぶん殴る!」
「プーちゃん乱暴過ぎん?」
 苦笑してスペインがあっさりと腕を引く。本気で殴られそうだと判断したんだろう、いい判断だ。

「じゃあプーちゃんのちゅーも貰った事やし、今度こそちゃんと帰るで。見送りはいらへんよ」

 勝手な事を言ってスペインが今度こそ屋敷に背を向ける。まだ人んちの玄関先でシエスタされては堪らないと、スペインがきちんと大通りの方へ向かって行くのを見届けて、プロイセンは屋敷に戻った。片付けなければならない事は山ほどあるんだ、余計な時間をとられてしまった、と足早に廊下を歩いて執務室に引き返す。
 これでしばらくスペインと会う事は無いだろう。結局仲直りはできなかったな、とプロイセンは弟の言葉を思い出す。けれど、あいつと仲良くしてなんになるっていうんだ。
 どうもすっきりしない気持ちで部屋に戻ってからしばらくして、また執務室のドアが叩かれた。今日は一体なんだというんだろうか。
 けれど許可を得て部屋に入ってきた部下からの報告に、プロイセンは血相を変えた。

「ヴェストが?」

 報告そのものは、他愛も無い内容だ。ドイツが部屋にいない、と。大した事は無いはずだ、たまには違う空気を吸いたくなる事くらいあるだろう。
 そう思いながらプロイセンは弟の部屋に踏み込んだ。確かに弟の姿は影も形も無い。部屋を見回したプロイセンは、何か弟がいる場所の手がかりでも無いかと部屋の中に手掛かりを探す。
 彼が誰にも言わずに予定していた行動を崩す事はそうない事だ。気分転換に庭でも見て回っているならそれでいい。さっき自分の部屋に顔を覗かせたドイツは、部屋に戻ると言っていた。そして今は、予定では部屋で読書をしている時間だ。
「ヴェスト、お兄様だぞー」
 いるなら返事をしろ、と部屋中に声を響かせてみてもなんの答えも無い。プロイセンに心配を掛けるような事をする性格で無い事はよく知っている。
 どうしたんだろうかと危ぶむプロイセンの不安を煽るように、外からの風を受けてふわりとカーテンが揺れた。弟の部屋が几帳面に片付いているのはいつもの事だが、一点だけ彼らしくない所がある。
 弟がいる時この部屋の窓は大きく開けられているが、部屋から出る時はきちんと弟の手によって閉じられていたはずだ。という事は、この開け放たれた窓は、すぐに部屋に戻るつもりだという意味のはずだろう。
 もしかしたら、プロイセンの部屋に顔を出して、それから弟は彼の部屋に戻っていないのかも知れない。弟の身に何があったんだろうか。何があった。他に何の事件の報告も受けてはいない。よく晴れたベルリンの街はいつも通り穏やかだ。何か。そうだ、誰かおかしな奴が出入りしてはいなかっただろうか。心当たりがあって、プロイセンは思わず強く舌打ちした。

「……スペイン、か」

 できれば疑いたく無い相手だ。プロイセンはそう思った。