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みとなんこ@紺
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HYBRID RAINBOW

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「――――う、…相棒?大丈夫か?」
「…え?」
聞き慣れた呼び声に促されるように目を開ければ、心配そうに自分を覗き込む半身と目が合った。途端、安堵したように柔らかい笑みを浮かべる彼に一気に意識が覚醒した。
「…大丈夫か?」
「あ、うん。何ともないけど・・・って、え?」
今度はとりあえず自分の置かれた状況を確認しようと辺りを見渡して、固まった。
「…心の、回廊にいたよね?」
「ああ」
「扉があって、それに触れたら凄い光に目がくらんで…」
気が付いたら、
「キ、キミの部屋…かな?」
物理法則を完全に無視した入り組んだ迷路に、無数の扉。見慣れたもう一人の遊戯の心の部屋のよう、だが。
「・・・どうだろうな。オレにもよく判らないぜ・・・」
少なくとも知らない場所だ。
静謐な空気で張りつめたようなもう一人の遊戯の部屋とも、暖かい何かで満たされたような遊戯の部屋とも違う。受ける印象は酷く曖昧だ。少しでも目を逸らしたら、振り向いた時先程とは違う光景が広がっていても気付かないかもしれない。
だが何故だか警戒する気にはなれない、不可思議な空間。・・・さっきまで歩いていた心の回廊によく似ている気がする。
「何なんだろうね・・・」
…って、あれ?
「・・・もう一人のボク、上の方に何か浮いてる」
「・・・クマかな」
相棒の部屋にあったぬいぐるみの。
「…何で!?」
それはこっちが聞きたい。

よくよく見渡せば、あちらこちらに何となく見覚えのあるモノが転がってたり、浮いてたり。
ただでさえ地がシュールな光景なのに、更にそういったアイテムの数々が何だかエキセントリック度合いを深めているような・・・。
「・・・相棒とオレの部屋が混ざってるみたいだな」
「うわー・・・」
何かすっごいねー…。ていうか、デュエルディスク、浮いてるんだけど。
「感心も観察もしてる場合じゃないと思うんだが…」
「うん・・・それは判ってるんだけどさー・・・」
えへり、と遊戯が緩い笑みを浮かべたその時だった。

『遊戯ー』

「え、」
「ママさん、か?」
前触れなく思いの外大きな声で呼びかけられて、2人は同時に身体を竦ませた。

『遊戯ー?ゆ・う・ぎ、起きないの?リンゴ切ったのよーいらないのー?』

どうやら返事がないので様子を見に上がってくるらしい。
「わわわ、ママ・・・!」
「相棒、ちゃんとベッドに入ってきたか?今日は行き倒れてないな?」
「う、うん、入ってきたけど・・・!って。何、行き倒れって」
さらりと遊戯の疑問を遮って、『外』の様子に意識を向ける。
「とりあえずはやく戻れ、相棒!」
「う、うん・・・って」
「相棒、何して…」
「も、戻れないん…だ、けど…」
「何・・・っ?」
呆然としている遊戯のかわりに、もう一人の遊戯は一つ舌打ちしていつものように意識を『外』に飛ばす。常ならほんの短い浮遊感がして・・・って。
何ともない。
「・・・オレもだ・・・」
「うそォ!?」
あわてふためく遊戯と、呆然と立ちつくすもう一人の遊戯の内心の葛藤を余所に、もうその時には母親は部屋のドアを開けていた。

『もう、こんな早くに寝ちゃって…。しょうのない子ね。いつまで経っても子供なんだから』

仕方ないわね、おじいちゃんと半分個にしようかしら。
・・・納得されてしまった。今時小学生すら寝てないだろう時間に寝こけている息子(高校生)を。
「子供ってしみじみ言わないでよー!もー、りんご食べるってばー!」
「そんな事言ってる場合じゃないぜ、相棒!今はまだ良いが朝になっても戻れていなかったら・・・!」
「わわわ、どうしーよう、明日テストなのにー…!」
「・・・・・・だから問題はそこじゃないだろう・・・」
相棒の混乱、いまだ治まらず。
もう一人の遊戯は額に手を当てて大きく息を吐き出した。
「・・・とりあえず出口か何かがないか探してみよう。今のままじゃ手掛かりも何もないからな」
「――――…そうだね。あんまり遠くへ行かないようにして、何か見付けたら声を掛けるよ」
一頻り混乱して、一旦状況を飲み込んで。
自分の調子を取り戻すと、遊戯は順応と切り替えが異様に早い。王様の相棒の肩書きは伊達ではないのだ。
時間の感覚がないので残り時間がどのくらいなのかはよく判らないが、とりあえず明日の朝までには何とかしなければ。
それじゃ後でと互いに声を掛けて、それぞれ違う方向へ走り出した。

作品名:HYBRID RAINBOW 作家名:みとなんこ@紺