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みとなんこ@紺
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HYBRID RAINBOW

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遠慮なしに走り回りながら、目に付く扉を適当に開けて回る。危なそうな気配は感じないが、そろりと覗き込むだけで中までは入らないようにしながら。
覗き込む部屋は、やはり何か妙な感じなものが多い。
何もない部屋もあれば、何かの小物が置かれているような所もあり、時折ほんの短い記憶のような、何かのヴィジョンが過ぎるような所もある。
何度か同じ事をくり返し、いくつめかの扉を開けた時、そこで見たものへの違和感に、嫌な予感が背を走った。
…二手分かれたのは拙かったかもしれない。
頭上(天地上下がおかしいこの空間では正しいのかどうかは知らないが)に掛かった通路を走っている相棒を目の端に確認した途端、彼は今見たものを頭が理解するより早く、足を止めた。
「・・・相棒!待て、やっぱりここはおかしい!」
「え、どうしたの、もう一人のボク…って、うわぁ!腕が、腕がないよ、もう一人のボク!」
通路の途中で立ち止まってこちらを見上げている相棒の顔は蒼白だ。
腕か。向こうはこちらの腕が消えているように見えるのか。相棒の腹がなくて向こうの景色が透けているのを見てしまった分、ショッキングさはこっちの方が上かな、と呑気に頭の隅で考えている辺り、逆に危険かもしれない。
さっきはそんなにじっくり観察していなかったが、よく見れば空間が変だ。
目に見えない何かに遮られてか、扉や道が現れては消えているように見える。まるで空間がバラバラにされたパズルのようになってしまっている。…元々が錯覚を起こさせるおかしな作りの場所だ。気付くのが遅れた。
見通しの甘さに自分自身に舌打ちしたいような内心をおくびにも出さず、もう一人の遊戯はあえてゆっくりと、遊戯が一番安心する声で大丈夫だと繰り返した。
「…大丈夫だ。そっちから見えないだけで腕はある。何処か欠けている訳じゃない。それより、ここはおかしい。感覚が変だ。分かれるのは止めておいた方がいい。…来た道、辿れるか?」
「…うん、大丈夫だと思う」
「さっきの場所まで戻って落ち合おう。出口を探すのはそれからだ」
「わかった!」
元来た方向へ戻る相棒を見送って、もう一人の遊戯も踵を返して走り出した。

確かに心の部屋の無数の扉の向こうには、今まで自分たちが見て、体感して来た記憶を忠実にヴィジョンとして再生する、そんな部屋も確かにあった。
だがここで見るそれは、印象はどれもこれも酷く曖昧な感じがする。すべてを見たわけではなく、本当に通りすがりに一瞬だけ目の端に止めるだけ、と言った見方ではあったが。どう言ったらいいのか判らないが…、自分が見てきたものじゃないような気がする。かといってもう一人の自分が見てきたものでもないような・・・。
(――――オレたちの記憶じゃない、ということか?)
そう言えば随分知らない連中も出てきていた。
それに、――――そうだ。オレたち自身の記憶なら、ヴィジョンに"武藤遊戯"が2人映る筈がない。

ここは、何だ。

「相棒・・・!」
焦るな。焦りは判断力も鈍らせる。自分の事だけじゃない、それよりもっと大切な・・・
「な・・・ッ?」
二手に分かれた広場へ続く筈の最後の扉を押し開いて足を踏み入れた瞬間、目を疑った。
戻っている。さっき、相棒に落ち合おうと約束した場所まで。
今度は逆に道を辿ってみるが、結果は同じ。
道が完全にループしているのだ。そう簡単には出してはくれないらしい。
「…ッこんな時に…!」
定石の手が使えないというのなら、あえて別の道を選ぶしか、方法がない。ここでは何処に連れて行かれるのか判らない不確定要素でしかないが、じっとしていられる筈もない。
もう一人の遊戯は一つ舌打ちすると、手近な扉に手を伸ばした。

作品名:HYBRID RAINBOW 作家名:みとなんこ@紺