HYBRID RAINBOW
元来たルートを辿りながら、三つ目の角を右、正面の扉を抜けて、一番左の扉を・・・右へ。
一応の用心をして辺りに気を配りながら走る。
「ていうか・・・」
本当に、ごちゃごちゃになってるんだなぁ、ここ・・・。…しかし本当に自分たちの記憶なんだろうか。よく判らないものを、一杯見たけど。
…いや、とりあえず考えるのは後にしよう。
まずはあの広場に戻って、もう一人の自分と合流しないと。
「・・・って、え・・・っ?」
扉を勢いよく押し開けたと同時に、吹き付けてきた強い風に思わず目を閉じる。
ざり、と風に混じる乾いた砂の匂いに目を開けた遊戯は、一変した眼前の光景に思考を持って行かれた。
通路が、続くはずだ。この先は。
なのに何故。
「が、」
さすがに驚きが許容量を超えてしまってそれ以上言葉が続かない。
白い廊下。
靴跡が一杯残された壁、規則的にならんだ、窓から射し込む光に、宙を漂う埃が揺れる。何処かから響くチャイムと、喧噪が遠くから近付いてくる。
その独特の空気。
自分にとっての日常の、最たるモノ。
・・・学校、だ。
呆然と立ちつくした。
境目が曖昧になる。
判らなくなる。
どこからどこまでが本当だ。
本当についさっきまで、もう一人の自分と、何処か知れない心の迷宮で、
(今日はテストの最終日で、)
迷って。早く、行かなきゃ。もう一人の自分が待って
(皆と、この後打ち上げに)
酷く早くなった鼓動が、耳元で脈打っている。どうしてだろう、喉が、乾く。
「もう一人のボク…ッ」
無意識に胸元に手を伸ばした。
だがいつもならシャラリ、と綺麗な澄んだ音を響かせる鎖も、その先に揺れる金の四角錐もない。
自分の血の気が引いていく感覚を、はじめて知った。
不意にトン、と背後から肩を叩かれる。のろのろと振り返ろうとして、掛けられた声の主に気付いて少しほっとした。
「よ、遊戯。何ぼーっとしてんのだよ?行かねーのか?」
「城之内くん・・・!ボクの千年パズル、知らない!?」
大丈夫。あんな大切なの何処にやったんだよって、一緒に探してやるって、
早く見付けないと、もう一人のボクが
「はぁ?千年パズル?…なんだ、ソレ」
――――イヤ、だ。
作品名:HYBRID RAINBOW 作家名:みとなんこ@紺