THIS LOVE @6/27新刊サンプル
日常的に自宅の郵便受けを確認しない彼が、その時なんとなくアパートに備え付けのポストの中をのぞいてみたのは、本当に偶然の出来事だった。でも、彼は、その行為に、無意識のうちにしろ、何かしら予感めいたものをみとめていたと言っても良いかもしれない。彼には、以前からそういうところがあった。でも、人間二十数年生きれば、誰だってそういう勘のようなものは少なからず身につく筈だ。他人に感心されるたびに、門田はそんなふうに弁解をしてきた。弁解、というのも、おかしな表現かもしれないけれど。自分の長所だと思っていなかった部分を誉められたとき、彼はときどきそのような言い訳じみたことを口にしてしまう。
封筒の宛名面には、間違いなく自分の住所と名前が迷いのない筆跡で書かれていた。彼は裏返して差出人を確認するが、そこには何の文字も残されてはいなかった。意図的になのか、うっかり忘れていたのかは、わからない。
作品名:THIS LOVE @6/27新刊サンプル 作家名:浜田