THIS LOVE @6/27新刊サンプル
臨也が新羅に初めて出会ったのは、中学二年になった年の五月の半ばだった。始業を知らせるチャイムが鳴ってから十分ほどが過ぎた、今にも雨の降り出しそうに重く曇った朝のことだ。彼はその時のことをよく憶えている。新羅の方はどうだか知らないけれど。話を振れば、そういえばそんなこともあったね、という程度のものだろうと思う。たとえほとんど記憶になくたって、きっと新羅はそう言うだろう。思い出話をそれほど好まないのは臨也も彼も同じだった。ただひとつ、彼の恋人に関することをのぞけば、の話だけれど。
作品名:THIS LOVE @6/27新刊サンプル 作家名:浜田