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殺したいぐらい

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会長専用の椅子に座りながら反省文を書くための用紙を渡してくる会長。俺はそれを受け取るために近づくわけだが。

「お前、妙なトコ律儀だったりするよな」

「うるせっ。ほら早く寄越しやがれ」

用紙を引っ手繰る様に受け取る。そんなこと言われなくとも自分がそういうような所が律儀だってのは理解してる。めんどくさいと言いながらもやらないと落ち着かないんだよな。
面倒なら最初から問題起こさなければいいんだけどな。それが出来たら苦労はしねぇよ。

「おい」

「ふぁ?」

突如、ネクタイを引っ張られて机に両手を突く形になる。傍から見たら俺が会長を襲ってるみたいだな。何でこんな時に珍しくネクタイなんかしてきたんだ、俺。


「お前、此処怪我してるぞ」

そう言って会長が指差したのは俺の右腕。言われてみてみれば赤い滲み。

「ふぁあああ?!!」

「うるせぇ!!」

慌てて袖を捲って傷口を確認すると十センチほどの斬り傷。いまだに血は流れてる。

「お前!!そんなでかい傷なんで気がつかねぇんだよ!」

「知らねぇよ!・・・痛っ」

突如傷の有る方の腕を引かれ、腕の傷が会長の前へ晒される。

「何す・・・」

あろうことか会長は腕の傷を舐めやがった。

「・・・鉄の味がするな」

傷口をなぞる様に舐める。時たま塞ぎきっていない傷口を抉る様に舐めてやればこいつは震えやがった。

「な、何すん、だよ・・・っ!」

「何って消毒だが?」

「んな消毒が、あるわけねぇだろ!」

ちらりと上目にこいつの顔を確かめると痛みか何かは知らんが耐えるように目を瞑ってやがった。些か頬にも赤みが差しているように見えた。


 


「・・・ギルベルト」

「ふぁ?!」

傷口から唇を離しこいつ名を紡ぐ。初めて名前を呼んだからな。驚いたのか閉じていた目を見開いて俺のほうを向く。それを利用して同時にネクタイを再び引き、こいつを抱き寄せる。
俺より背が高いのがムカつくが、今は好都合な事に間に机を挟んでるからその差はなくなっていた。

「会長?」

「何勝手に傷、付けられてるんだよ」

「は・・・?」

「ギルベルト」
作品名:殺したいぐらい 作家名:常陸彼方