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朱璃・翆

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new life and after



「ここが今日から朱璃の家だ。さあ、入りなさい。」
「・・・。」

ゲンカクという奴に連れてこられたのはどこかのんびりした雰囲気の街で、家はその外れにあった。
黙ったまま何も話さない俺に、そいつは何も聞かず、一人で喋っていた。

俺はナミに捨てられたようなものだった。
なぜだ、なにがいけなかったんだ・・・?ずっとその疑問が頭の中を渦巻いていた。

「ナナミ。こっちに来なさい。この子は朱璃だ。今日からお前と兄弟になるんだよ?」
「ホントー?初めまして。あたしナナミ。よろしくね!!」
「・・・。」
「朱璃。この子がナナミだ。お前のお姉ちゃんになる。仲良くしなさい。」
「・・・。」
「ねえ、じいちゃん。どうして朱璃、喋ってくんないの?怒ってんの?」
「いや。ちょっと悲しい事があったんだ・・・。ナナミ、朱璃の面倒、よく見てやってくれよ?」
「はあい。」


・・・悲しい事?そんな言葉で片付けられるか。どうしてなんだ・・・。どうして・・・。


俺はただただナミの事を考えていた。
その間ゲンカクは何も言わなかった。
ナナミはこんな俺に一生懸命話しかけ笑いかけてきた。


ある日、ゲンカクは出かける所があると、朝から家を出て行った。
道場には俺とナナミ2人だけだった。俺は相変わらず魂の抜けたような感じのままひたすら考えていた。


結局俺がダメだったんだ・・・。

所詮アバズレから生まれて蔑まされ、玩ばれてきただけの存在。
きっとナミだって俺を疎んじていたのではないだろうか・・・?
子供らしくないと言っていた。
俺はきっと人に好かれるような上等な生き物ではないという事ではないのか・・・?


俺は・・・誰にも受け入れらる資格もない、つまらない存在なのではないのか・・・?


そう考えれば考えるほど、そうに違いないと思えた。
急におかしくなった。
俺は笑い出した。
そうだ、きっと、そうだ。
あはははは・・・?

ふと見ると、ナナミが俺を恐ろしいものでも見るように見ていた。
そう、間違いなく怯えていた。今にも泣きそうになっていた。

いつも笑って話しかけてくれていたナナミが、怯えて、泣きそうに・・・。

「・・・泣・・・か、ない、で・・・?」

思わず声が出た。
ナナミはびっくりしたように俺を見たあと、ニッコリと笑った。ああ、そうだった。ニッコリ、笑えば、万事、上手くいくんだろ・・・?
笑えばいいんだ。ナナミの笑顔は素敵だった。
俺もいつも笑っていればいいんだ。嘘でも。
そうしたら、もう、誰も俺を嫌わない・・・?俺の事捨てたりしない・・・?

そうだ・・・。俺じゃなくなればいい。可愛らしい、子供でいれば、きっと・・・。


俺はナナミにニッコリ笑いかけた。嘘の笑顔なら容易く作れる。ほら、ナナミも喜んでいる。
そうだ。俺じゃなくならないと、ここからも捨てられるかもしれない。
俺みたいなガキが1人で世の中渡っていけるほど甘くないという事は知っていた。


そして、俺は皮を被った。


それからの俺は誰からも可愛がられた。
当然だろ?俺は自分が見目がいい事は幼い頃に嫌という程分からされている。そんな俺が愛想良く可愛らしく笑顔で話すんだ。誰もが魅せられて、当然じゃないか。

ただ、たまにゲンカクじいちゃんは悲しそうな顔で俺を見ていた。
普段はナナミと同じように俺を育ててくれた、鍛えてくれたじいちゃん。
ふとした時に見ると、俺を悲しそうな顔で見る。

止めろ、憐れんでいるのか・・・?俺が皮を被っていると知っているのか?そうしてその上で憐れんでいるのか・・・?

・・・良いじいちゃんだったが、結局確認する事もなく死んでいった。
憐れむくらいならいっそ笑ってけなしてくれた方がマシだった。
ぶつかってきてくれた方が嬉しかったのに・・・。

後でゲンカクは英雄だったと知った。そして何もかも捨ててこの地にやってきたと。
ふふ・・・、世を儚んでいたのか?投げやりにでもなっていたのか?だから俺にもぶつかってこなかったのか?


・・・いや、よそう。ただの推測だし、実際じいちゃんは俺やナナミを可愛がり、しっかり育ててくれたんだから。
それに何を思おうが、言おうが、すでに墓の中だ。もう、どうでも、いい。

・・・そう、俺は何もかも、どうでも良かった。
ただあるのは生存本能だけ。
しかしそれすらだんだんとどうでもいいような気がしてきていた。

何をしても、何を食べても、誰を抱いても、満たされない。
周りの知る朱璃と実際の俺とのギャップがどんどん開いていくような気がする。それとともに何もかもがどうでもよくなっていく。

だってそうだろ?実際の俺がいくら中で泣こうが喚こうが、皮を被ってニッコリしていれば、誰も気付かないんだ。
ああ、勿論俺がそうなるようにしている訳だけども。結局俺は俺でなくて良い訳だ。何でもいい訳だ。


ならばなぜ俺は生きている必要があるんだ?何の為に俺という自我はあるんだ?人形でも問題ないじゃないか?
作品名:朱璃・翆 作家名:かなみ