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朱璃・翆

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まるでアラビアンナイトの夜のように、朱璃は幾夜も寝物語を聞かせてくれた。
僕は切なく悲しい思いでいつも話しを聞いていた。

なんて話。なんて経験。なんて辛さ。なんて切なさ。なんて思い。

僕はただ朱璃を抱きしめる事しかできなかった。
それでもいつも朱璃はまるで暖かい親鳥の羽に包まれた小鳥のように僕に体を委ねてきた。
その体はとても華奢で、こんなに小さな少年がいったいどれ程の苦しみと思いを抱えて生きてきたのだろうと苦しくなった。
しかも今はこれ程大きな地の軍主を務め上げている。そして敵はかつての友。

計り知れない負担。よく今まで本当の狂気に、のまれずいてくれたものだ。

「翆・・・」

朱璃は呟いたがぐっすり眠っているようである。・・・僕にして上げられる事なんて大してないのかもしれない。
でもこんな僕を欲してくれるというなら、こんな僕で救われるというなら、僕は今までと変わらずにいよう。

そうして僕も眠りに落ちた。

「う・・・ん・・・、・・・ん・・・?」
「あ、起きたあ?」

朱璃の声。目を開けた。だって・・・。

「起こしちゃったのかなー。」
「・・・いや、そりゃ、起きるだろ・・・?お前・・・、何してんだ・・・。」
「えー?だってさあ、あんまり可愛い寝顔だったもんで、ついムラムラって、ね?」
「ね、じゃない!!このバカっ。って、あ、ちょっと・・・」
「寝てて、いい、よ?」
「眠れるか!?ちょ・・・あ、止め・・・っあっ・・・」

結局ベッドから起きて出てきたのはだいぶ後の事になってしまった・・・。

「・・・いい加減にしてくれ・・・。」

僕は遅めのブランチをレストランで取りながらぐったりと朱璃に呟いた。

「えー?なんてゆーかなあ、遅めの思春期?」
「・・・意味分からないし・・・。第一お前別に今思春期でも遅くないだろ・・・?15、6なら別にそんな時期でもおかしくないだろ?」
「あ、そうか。翆さんもそれくらいの頃ってお盛んだったのかなあ?」

ニッコリと朱璃が言った。

「・・・いや・・・、ちょうど解放戦争していたから、それどころじゃなかったし・・・ってお前もそうだよな、今・・・。」
「あはー、そうですねえ。」

どこか人事のように朱璃は言った。まったく、ほんとのん気だな。いくら投げやりだったとはいえ、やはりある意味大物だと思う。

「戦争終わった後は暫く放蕩してたんですかあ?」

食べ終わり、ちょっと書類を片付けたいから、と朱璃が言ったので今日は特に予定のなかった僕も朱璃の部屋に一緒に向かっていた。

「ああ、そうだな。」
「・・・ナミと同じ歳くらいの頃だなあ。少年は17歳前後に旅立ちたくなるものなのか?」
「・・・そんな訳ないだろ・・・。でも、そうか、朱璃、言ってたものね?17、8歳位だったかもって。でもそんな歳で幼い子供を連れて旅をするって、現実難しいと思うけどな?それに話だけ聞いてると僕が聞いてもとても大人だと思ってしまうんだがな・・・?」

話しながら部屋に入った。朱璃は机に座り、書類の束を手にとりながら言った。

「ああ。俺もよく考えたら不思議だなって思う。それに凄く旅慣れていた。ずいぶん昔から1人で旅しているって感じだった。・・・今もまだ生きているなら・・・27歳くらいか・・・?」
「話の中のナミさんは、当時ですでにそんな歳越えてるようなイメージだがな?」
「はは・・・。俺なんかもし今会っても当時のままの気がしてしまう・・・・て、・・・あの、さあ?」

書類を処理しながら話していた朱璃だが、不意に手を休め顔を上げて僕に呼びかけてきた。

「何だ?」
「うーん、飛躍しすぎかもしんないけどな?真の紋章持ちって可能性ないだろうか・・・?そうだとしたらなんだか納得いくんだよな?」

真の紋章・・・。
確かにそうなら、少年といっていい風貌だとしても老成した雰囲気や旅慣れた様子も理解できるが・・・。

「分かるけど、そうそう真の紋章持ちなんて会えないんじゃないか?なんていったってこの広い世界でたった27しかない訳だし、おおっぴらにされないものも沢山あるだろうし・・・。」
「そうだろけどさ、ルックだってあれ、本人は特に言わないけど、真の風の紋章だぜ?んでレックナートだってそうだろ?あとハルモニアからハイランドに渡されたっていう獣の紋章も身近、とは言わないが近くにあるしさあ?そしてあなただってそうだし・・・。案外近くに色々集まるもんなんじゃないのか?・・・ねえ、あなた俺よりよく歴史とかも知ってるだろ?戦争があった陰にはよく真の紋章がちらほらするって聞くけどさあ、過去にナミと言う名前、出てくる戦いってなかった?」
「あったらお前に聞いたときに気付くんじゃないのか?」
「いや、俺の話を聞いているときはさ、そんな事思いもよらずに聞いているだろ?ねえ、考えてみてよ?あなたの家柄なら一般に伝わらないような歴史だって文献やらで知っているだろ?」
「・・・うーん・・・。そりゃ、そうだけど・・・。ちょっと時間くれないか?すべてを即答できるほどは僕の記憶も良くはない。」
「ああ、勿論。ごめんね?変な事頼んでさ?」
「いや、構わない。お前の頼みだ。喜んで調べるよ。」

そう言うと、朱璃は満面の笑顔を見せた。
周りに見せる(僕にしたらうそ臭い)笑顔とも、普段僕に見せる悪魔のような笑顔とも違う、きっと本来朱璃が持っていたのであろう、本物の笑顔。

そんな笑顔が見られるなら人殺しだって厭わないと思わせるような、とても貴重な、僕の、宝物。
僕ですらほんのたまにしか見ることが出来ない、そんなすばらしいこの笑顔が見れたのなら、あの大量の文献を調べる事なんて安いものだ。

「・・・えーと、こほん。あー、じゃあ調べる為には僕は家に帰らないといけないから。明日からちょっと暫くは来られないけど・・・。」
「あーっ、そうかあー!!うえー、それって考えてなかったよなー。じゃあ、俺も・・・」
「お前は仕事があるだろ?まったく・・・。」
「じゃあさあ、俺、通うよ。毎日やる事終えてからさあ。だったらいいだろ?」
「何言ってんだ、バカ。そんな事だめにきまってんだろ?体壊したらどうするんだ?何かあったらどうするんだ?ダメだ。」
「そんなの知らない。俺がそうするって決めたんだからそうすんだよ。」

朱璃はそう言って悪魔の微笑みを見せた。
ああ、もう。こんなところは相変わらずだ・・・。くそっ、絶対何があっても明日中に調べ倒してやる。

・・・僕の執念だろうか、それとも神はいたのだろうか?すぐに目的のものは見つかった。

僕はすぐに朱璃のもとに向かった。あまりに帰ってくるのが早かったので忘れ物でもしたのかと朱璃は思ったらしい。

「朱璃。今から約150年前に南の方の群島諸国で戦争があったんだ。群島での首謀者は一般の文献では今でも船の名前になっているリノっていう王様なんだけどね、伝承では真の紋章を持った龍神が救ったとなっているんだ。その龍神と呼ばれていた人物の名前が、ナミと言われている。」
作品名:朱璃・翆 作家名:かなみ