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朱璃・翆

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conclusion



「シュウってさ、もしかして僕の本性、気付いてる?」

朱璃は執務室でシュウと2人、戦後の事務処理をしている時に聞いた。

戦後・・・。

朱璃達はハイランドに打ち勝った。
周りはお祭りムードである。勿論今夜は大パーティになるだろう。その前に取り急ぎ処理しないといけない分のみを黙々とこなしていた。

「・・・俺を何だと思っていたんだ?腹黒い軍師なんだぞ?あなたの薄っぺらい皮くらい見抜けなくてこの戦争に勝てたとお思いですか?」

シュウは顔色も変えずに書類に向き合いながらサラッと言ってのけた。

「はは・・・確かに・・・。わお、凄いね?そのくせ何も言わず?」
「俺は勝つために軍師をしていたからな。あなたが被りたいなら戦いに影響がない限り好きなだけ被っていれば良かったからです。と言うより被ってくれていた方がスムーズでしたしね?」
「ああ、やっぱり?」
「いえ、本性を否定している訳ではないですよ?よく知っていればあなたがどれ程粗野であろうとも愛すべき人だと皆思うでしょう。ただ初対面ではやはりあなたの皮が一般受けしますからね。」

愛すべき人と言われ珍しく朱璃は少し赤くなった。

「・・・やっぱり狸だな・・・?」
「ふふふ。ではその狸からお願いがあります。朱璃殿。どうか、このままこの国の王となってはもらえまいか?皆の前で言うつもりだったがちょっとな・・・。2人の時に言っておいた方がいいのではと思ってな。」
「ああ、それな?・・・確かにこの地が安定するまでは軍主をしていた俺がまとめた方がいいんだろうな・・・。だが俺は・・・」
「・・・やはり、ジョウイ殿に会いに行くのか?」
「ああ。決着をつけないといけないんだ。このままではだめなんだ。」
「・・・そうか・・・。その様子だと居場所は分かっているようだが?」
「・・・ああ。悪いが誰にも言わないでくれ。ハイランドを打ち破った時点で、もうジョウイはただのジョウイだ。頼む。」
「ふふ・・・俺は何も言ってませんよ。では存分に決着をつけて来るといい。我らはお待ちしておりますよ。国王としてのあなたのご帰還を。」
「・・・悪いな。・・・お前、いい男だったんだな。」
「何を今更。」


そして朱璃はそのまま城を去った。

そして約束の地へ向かった。


「・・・翆、怒るかな?黙って出てきて・・・。」

内心でゴメンとあやまりながら峠を進んだ。


・・・あの滝のところへ・・・。


絶対、そこに、ジョウイは、いる。


「・・・やあ。朱璃。来てくれると思ってたよ・・・。」

少しやつれた様子のジョウイがいた。

「ジョウイ・・・。」
「ここで最後の幕引きといこう。」

そう言ってジョウイは棍を構えた。
朱璃は構えることをせず、手をだらりとしたまま言った。

「君と戦う気はないよ。」
「今更何を言っているんだ?もう、僕達は戦うしかないんだよ・・・。そして、僕は君にやられるだろう。これでブライト家も最後という訳だ。」

そしてジョウイは朱璃に向かっていき、棍を打ち込む。朱璃はそれをトンファーで受けはしたが、何もやり返さない。
暫くその繰り返しだった。

「・・・朱璃・・・なぜやり返してこないんだ・・・?」
「ねえ、ジョウイ。僕達が争う必要性が分からないんだ。」
「何を言ってるんだ。・・・ハイランドは負けた。大将である僕が生き残る訳にはいかない。それに・・・紋章だって・・・」
「うん、知ってる。不完全だからね、このままだと良い結果とはいかないだろうね?それでも、僕・・・俺はお前を殺したくないんだ・・・。もう、誰も失いたくない。それにナナミの最後の言葉でもある。」
「・・・君は・・・いつだって・・・強かった・・・。・・・僕はそれを・・・うらやんでたのかもしれない・・・。」
「・・・俺は強くないよ?だから本性だって怖くて出せなかった。お前やナナミの前でだって・・・。でも、これからはやり直したいんだ、お前とも。生きていればどんな事だってやれる筈だ。死んでしまえば・・・何もかも、終わりなんだ。なあ、ジョウイ。生きようよ?紋章だってどうにも出来ないと決まった訳じゃない。なんだって可能性はあるんだよ。」
「・・・朱・・・璃・・・。」


その時2人の紋章が突然輝きだした。


2人とも驚いている中レックナートが現れた。



彼女の説明によると奇跡が起きたらしい。
紋章は不完全のままだというのにお互い命を吸われるという事態は免れたというのだ。



「・・・な?なんだって、やっぱ可能性あんだろ?」
「ほんとにびっくりしたよ・・・。でも・・・奇跡ってホントにあるんだね?」


2人で峠を下りながら話した。
そこにシュウが現れた。

「シュウ!!どうしてここに!?」
「頼まれていたものでね?終戦後に話す、と。あなたはジョウイ殿との決着があったから終わるまで待っていた。・・・ナナミは生きている。」
「何を・・・。・・・!!ナ・・・ナナミが!?」
「ああ。」

あの時ナナミはどうやら自分をつい庇ってしまう朱璃を思い、自ら死んだ事にして、すべてが終わるまでは隠れていようと決めたらしい。
シュウもそれに賛成したという訳だ。

「ナナミは道場にいる。」
「・・・シュウ・・・。あなたはやっぱり狸だ。・・・覚えておけよ?俺の元でこき使ってやる。」

シュウはニヤリとし去っていった。


2人は駆け出した。

あの道場へ!!


家につくと物音に気付いたナナミが出てきた。3人とも駆け出し、抱き合った。

「・・・朱璃・・・ごめんなさい。あたしがホウアン先生にお願いしたの・・・。あの時、朱璃はあたしを庇おうとした。思ったの。このまま争いが終わる前に、朱璃はあたしを庇って死んでしまうのではないかって・・・。あなたは死んではだめだった。軍主としてだけじゃなく朱璃として、皆の為、あたしの為、そして翆さんの為に。でもあたしが側にいたら・・・。あなたを苦しませるって分かってたけど・・・ホントに、ご・・・めん、なさい・・・。」

「・・・生きていてくれて・・・良かった・・・。嬉しいよ・・・。バカナナミ!!もうこんな事、許さないからなっ?」
「・・・ホント、僕に黙って出ていくなんて、許さないよ?」
「翆!?」

3人で抱き合っている前に翆があらわれた。

「シュウに問い詰めたんだ。絶対お前はジョウイ君のところにいくだろうって分かってたから。ナナミの事は驚いたけど・・・良かった。で、僕も待たせてもらってたんだ。お前は絶対僕に対価を払うって約束したから、2人で無事ここまで来るって信じてたからな。でもー」

翆が最後まで言う前に朱璃は、ナナミとジョウイが赤くなっているのも構わず翆を抱きしめキスをした。
作品名:朱璃・翆 作家名:かなみ