朱璃・翆
gathering (doragon king vr.)
「いやあ、ほんとにお越しいただけるとは。」
レパントが豪快に笑っていった。
「・・・何だそれは。何だったら今から帰ってもいいんだが?」
「いやいやいや、それは困ります。さあさあ、もう始まっております。どうぞこちらへ。他国の方にも翆様を紹介させて下さい。」
「・・・分かった。」
正装に着替えて出向いたときにはすでにパーティは始まっているようで、そこに翆が現れるとレパントは大統領というのに真っ先に翆のもとへやってきて大いに喜んだ。
「群島諸国からお越しいただいたベルナデッド様とカイ様です。おふた方、こちらが我国の創立者でもあります翆・マクドールでございます。」
「まあ、あなたがあの英雄の?会えるなんて、光栄です。」
「へえ、そうなんだ。はじめまして。」
「・・・はじめまして。あの、そんなたいそうな者ではございませんので。」
ベルナデッドという女性は20代後半から30代前半位のはっきりした顔立ちの美人だった。
前のスカル大統領の娘だという話だった。
今は兄が大統領をしているが、都合がつかず彼女が来たというわけらしい。
カイという少年は10代後半位の綺麗な顔立ちで、今回ベルナデッド付きとして一緒にきたとの事。
話しをしているとベルナデッドが丁寧に話し、カイが無頓着な感じで話す為どっちがどっちのお付か分からなくなってくる。
「ああ、翆様、あちらにファレナからお越しいただいた女王騎士の方がいらっしゃいますので、あちらの方にも紹介させて下さい。」
レパントが言った。
「分かった。ではちょっと失礼させていただきます。」
「あら、良かったら私達もご一緒に。もういらっしゃっていたのですね。実はファレナの方とは顔見知りでございまして。」
「・・・俺は顔見知りじゃないけどね?行った方がいい?ベル?」
「そうですね・・・別に構わないですよ。そのあたりで美味しいものでも食べてて下さいな。」
少し考えてベルナデッドが言うとカイはニッコリ分かったと言うとふらっと歩いていってしまった。
「あの・・・ずいぶん変わったお付の人ですね・・・?というか、あなたに付いていなくて良いのですか?」
歩きながら翆はベルナデッドに言った。ベルナデッドはニッコリとして答えた。
「ああ、彼はあれで良いんですよ。いざというときはあれでも強いんですよ?」
「ベル!!」
その時向かおうとしていた方から声がした。
見ると女王騎士と思われる2人がこちらにやってきていた。
2人とも20台前後くらいだと思われる男女だった。男の方はとても美しい銀髪と顔立ちで、女の方はこれまた綺麗な黒髪の美人だった。
「・・・そういえばファレナでは美形が多いと聞いたような・・・。というかあの銀髪・・・。まさか王族でもある女王騎士長・・・にしては若いが・・・?」
翆は呟いた。
こちらからも2人に向かっており、やがて合流した。
「ベル、久しぶりだね。元気にしていた?」
「ファル様こそ、元気そうでなによりです。リオンちゃんも綺麗になって。」
「もう、ベルナデッドさんたら。」
「ああ、失礼した。レパント大統領。ちょっと久しぶりだったもので、申し訳ございません。」
ふとファルと呼ばれた銀髪がレパントにわびた。
「いえいえとんでもない。ああ、紹介させて下さい。これは我々の英雄、翆・マクドールでございます。翆様、こちらがファレナからお越しの女王騎士長であられるファルーシュ様と女王騎士のリオン様です。」
「・・・レパント・・・、その紹介の仕方はやめてくれ・・・。ああ、失礼しました。翆と申します。はじめまして。」
「ああ、あなたがあの。お会いできて嬉しいです。はじめまして。」
ファルーシュがニッコリと言った。
近くで見るとますます綺麗な顔立ちで、騎士の男性的な服装でなければ女性といっても通るだろうと翆は思った。
リオンも横でニッコリとお辞儀をした。こちらはとても愛らしい感じだが、前に聞いた話では王族であるファルーシュ付きの騎士様でかなり腕が立つらしかった。
目の前で見た限りではとてもそんな風には見えないが。
・・・それにしても若く見える。
暫く5人で話していたが、レパントが別のところにも顔を出さないといけないので、と申し訳なさそうに去っていった。
「そういえば、皆さん顔見知りなんですね。ファレナと群島はよく何らかの集まりでもされるのですか?」
翆が聞いた。ベルナデッドが言った。
「いえ、そういうわけではないんですよ。」
「実は10年前にお恥ずかしながら内乱がありまして、その戦いの時に同じ仲間として戦った仲なんですよ。」
ファルーシュがニッコリと言った。
「ああ、あの・・・。そうでしたか。・・・そういえば群島では150年ほど前に有名な戦いがありましたよね?」
翆は何らかの話を聞こうとそっちへ話を持っていった。
「ええ。逸話が残っているくらいですから。龍神様が群島を守って下さったっていう。」
ニッコリとベルナデッドが言った。しめた、と翆は思った。
「ああ、その逸話、僕も知っております。・・・2種類あるんですよね?実は亡き父がそちらの方に知り合いがおりまして、一般的には伝わっていない話も聞いた事があるんです。」
「まあ、そうなんですか。でもまあ、あくまでもお話ですから・・・。」
ベルナデッドはなんだかそのままこの話を終わらそうとしているように感じた。
なぜだろう。
王族のみに伝わっている方を知っていると言ったのがまずかったのだろうかと翆はいぶかしんだ。
「ああ、翆さんは知っているかなあ・・・。」
「王子、聞いてみられては?」
「うん、そうだね。ちなみに何度も言うけど王子はいい加減もうやめてね?僕もいい年なんだし。」
「あ、申し訳ありません。つい癖で。」
ファルーシュとリオンが何か話している。
なにが知りたいのだろうと思っていたらファルーシュが聞いてきた。
「トランより上にある国で最近戦争があったでしょう?で、歳若い少年が軍主を務め上げてこの間王になったと聞いたんだけど、翆さん、その人と知り合いではないですか?レパント大統領に聞こうと思ってたんですけど、もしかしたら翆さんも知っておられるかなあと思って・・・。」
「・・・何か用でも?」
「あ、そんなに構えないで下さい。用ってほどではないので逆にレパント大統領にも聞きにくかったんですよ。ただの僕の好奇心です。勿論翆さん、あなたにもお会いしてみたかったんですけどね。その王の噂が今僕の周りでも持ちきりで。まあ旬の話題なんでしょうね。それで一度お会いしてみたいなあと思っていたんですよ。」
・・・なぜ顔を赤らめて言うのだ・・・翆は心底紹介したくないと思ってしまった。