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朱璃・翆

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きょろきょろして朱璃は呟いた。

「ふん。魔術師の塔の中だよ。やれなくて残念だね。」
「って立ち聞き!?」

翆がすかさず言って赤くなった。
朱璃はちらっとルックを見てニッコリと言った。

「やだなあ、ルックったら下品だよー?何言ってるの?僕ルックがそんな事言う人だって知らなかったなー?」

ルックは顔を引きつらせて言った。

「やっぱあんたあいつに似た嫌な性格だね。ほんとにいい性格してるよ。」
「?あいつ?それにしてもルックに性格云々は言われたくないなあ僕。」

翆は、朱璃とルックの背後に何か黒いものが見えたような気がした。

「ちょっと、お前らいい加減にしろ。ああ、ルック、悪かったね、ありがとう。」

翆が間に入って言った。

「ふん。」

ルックはそのままどこかへ行ってしまった。

「なんだよ、ルックにだけ優しくない?」

朱璃がぷーとふくれたように翆に言った。

「いや、ルックに無理言ってばかりだったから。それより朱璃。僕は実は勝手な事をしていた。怒らないでくれる?」
「俺が翆を?なんで。翆になら何されてもいいよ俺。」

そう言われて翆は赤くなる。

「・・・。あ、その、えっと実は・・・僕、お前に断りもなくナミさんを探していたんだ、ごめん・・・。」

朱璃はポカンとし、そして慌てたように言った。

「えっ!?そ、そうだったの?な、何でまた。」
「いや、お前見てたらその、まだナミさんの事、吹っ切れていないようで・・・。その、まだ思い出としての記憶よりはどっちかといえば心の引っかかりみたいなままのような気がして・・・。やっぱり少なくとも1度会ったほうがいいんじゃないかって思って・・・。」
「・・・翆・・・。」
「ごめん。勝手な事だとは思ったんだけど、その、僕からしたら会える可能性があるのに会わないなんて勿体無いと思うんだ。」

その言葉を聞いて朱璃は翆の大切な死んでいった人達を思った。
朱璃は翆を抱きしめた。

「・・・ありがとう。翆の気持ち、嬉しいよ。ずっと、どうしようかとか悩んでたんだろ、あなたの事だから。俺の為に悩まないで。そのほうが俺は辛いよ。それに、俺があなたを怒る訳ないだろ。あなたがする事は何だって受け入れるのに。しかもこんな大変な事、俺の為にしようとしてくれていたなんて。俺、ホント嬉しいから。大好きだよ、翆。」
「朱、朱璃・・・。その、僕も・・・大好き、だ・・・。」
「おや、翆さん、そんなとこで誰とお楽しみ・・・、・・・え・・・?」

抱き合っていたらナミが向こうから声をかけてきた。

はじめは後姿の為朱璃に気付かなかったようだが、すぐに分かったらしくそのまま固まったように動かなくなった。
朱璃のほうも声が聞こえた瞬間ピクッとした。

そして暫くすると翆から離れて恐る恐る振り向いた。

「朱・・・璃・・・」
「ナ・・・?え・・・ナ、ミ・・・?」
「な、何で・・・。まさか・・・翆さ、ん・・・」

ナミは固まったように動かないまま呟いた。
翆は俯いてわびた。

「・・・悪い・・・。」

ナミは相変わらず固まっていた。

朱璃も立ち尽くしていたが、次の瞬間には駆け出していた。
気付けばナミをつかんでいた。

「こっこの野郎っ。お、俺を置いていくな、んてっ、あなたなんかっあなたなんかっ」

俯くナミ。

「う、あ・・・う、わああああああん、バカっナミのバカぁぁぁあわああああん。会い、会いたかったっ会いたかったんだよーっわあああああん」

しかし次の瞬間には朱璃は誰もが想像も出来ないくらい、子供のように号泣し、ナミにすがりついて離さなかった。
ナミのポカンと開けた口が震える。2人は朱璃がすがりつき抱きついた勢いでそのまま倒れるように座り込んだ。

「ご・・・ごめ・・・ごめんね・・・?ごめん・・・朱璃・・・ごめん・・・」

見ていた翆までもが涙が溢れてきた。

「うわああああああん。ナミっナミぃーっ。わあああああん」

ナミは朱璃を抱きしめ背中をポンポンとたたき、そうしてさらにギュッと抱きしめた。
朱璃は暫く泣き止む事はなかった。

そして最近の激務とナミに抱かれている安心感とでか、まるで子供に帰ってしまったかのように泣き疲れたように眠ってしまった。
ナミはその体を愛しむように抱きしめそして抱え上げ立ち上がった。

「・・・こんな、朱璃、初めて見た。・・・まるであなたに会えて子供の頃に戻ったみたいだ。」
「・・・うん・・・。翆さん・・・ありがとう・・・。」

そしてナミは朱璃を抱きかかえたまま近くの部屋に入っていった。
多分ベッドに寝かせにいったのだろう。
きっと寝顔だって近くでずっと見ていたいだろうと、翆はその場から離れた。
暫くそっとしておこうと思った。


「・・・ありがとう、翆さん。本当に・・・。俺だけだと多分このままずっと会わないままだったと思う。・・・朱璃に・・・会えて、きちんと話せて、良かった。」

夜、翆が用意してもらった部屋にいるとノックがして、ナミが入ってきてそう言った。

「いや、もう礼はいい。何度も聞かされると僕もどうしていいか分からないから。それに僕も良かったと思っているし。・・・朱璃は?」
「ああ今風呂に入っているよ。あの後暫くして朱璃が起きて、2人で話しをしたんだ。さっきまでね。で、俺が顔が腫れているっていったら、君に腫れた顔は見せられないとか言ってあわててバスルームに入っていったよ。」
「・・・バカだな。」

翆はふっと笑って言った。それからナミを見て言った。

「あ、そういえばこの間は何でお付なんて?」
「ああ。やあ、たまにね、故郷にフラッと訪れた時に王族関係者に見つかる事があるんだ。彼らは代々俺の事知っていてね?あー実は俺リノ・エン・クルデスの息子だったんだよね、で鬱陶しい事に後を継がせようとするんだけど絶対嫌だからさあ。で、継がない代わりにああやって仕事押し付けられる事があるんだよね?」
「えー・・・」
作品名:朱璃・翆 作家名:かなみ