朱璃・翆
「はあ・・・」
朱璃はため息をついて自分の部屋に戻ってきた。
今日1日ファルーシュ(とリオン)に城と城下町を案内した。
ファルーシュは好奇心旺盛で色々な所に朱璃を振り回した。
多分今まであまりのんびり街を歩く事もなかったのだろう。
出店で売られているつまらないおもちゃにまで興味を示してお土産だと言って色々買っていた。
朱璃がたまたま自分も食べたくてついでに買った肉まんを渡すとはちきれんばかりの笑みを見せた。
そしてリオンと2人でめずらしそうにパクパクと食べていた。
色んなところに連れまわされてかなり疲れたはずだが、朱璃は実は何だか自分も楽しかった。
思えば自分も子供のような視点で街を楽しんだ事がなかったと思い出した。
ファルーシュは自分より10歳前後は年上なのに、それこそ子供のように楽しんでおり、自分までその気分に釣られていたようだった。
本当なら鬱陶しい筈の年上の彼が何だかかわいらしくて、またそう思っている事に気付いた朱璃はため息をつくしかなかった。
そうして1日付き合い、ようやく解放された朱璃が風呂に入ってから部屋に戻ってきたのは夜もかなり遅い時間だった。
「ん?・・・翆・・・?」
翆の気配がした。
暗い部屋に目が慣れると、朱璃のベッドで翆が眠っていた。
待っていてくれたのだろうか・・・?
で、待ちくたびれて眠ってしまったのだろうか・・・?
朱璃はそっとベッドに近づき、静かに自分もベッドに入った。
「・・・ん・・・。・・・あ・・・。」
「ごめん、起こした?」
「・・・今、戻ってきたのか・・・?」
「うん。ああ、風呂に入ってたけど。」
ガバッと翆が起き上がった。
「えっ!?ファルーシュと!?」
「わっ。ええっ?いや、ひ、1人でだけど・・・」
翆の剣幕に驚きつつ朱璃は答えた。
翆はハッとして向こうを向いてまた横になった。
「翆ー?」
「な、何でもないっ。・・・お疲れ様っ、じゃ、じゃあもう寝たら?」
背中を向けたまま翆はそう言った。
朱璃はとても愛しくなって、そっと翆に覆いかぶさった。
「ねえ、待っててくれたの?」
「い、いや、その、た、たまたまだ。」
「へえ?たまたま俺の部屋に何の用事だったんだ?くくっ・・・翆、かわいい・・・。」
「なっ何」
かわいいと言われて翆がガバッと向き直った。
朱璃はすかさずそんな翆に口づけた。
初めは抵抗していた翆も次第に受け入れ出した。
「・・・ん・・・。」
「・・・俺が好きなのは翆だけだよ・・・。愛してるのは、翆だけ・・・」
「・・・朱、璃・・・」
朱璃は深く口づけながらそう囁き、翆の服を脱がしていく。
翆の首や鎖骨に口づける。
自分も脱いでいく。
「ん・・・」
「・・・俺の大切な翆・・・」
翆の胸に顔を埋めつつ囁く。
翆はビクッと体を震わせる。
朱璃の手が下へ伸びる。
「っあっ、や、ああ・・・」
「・・・俺の翆・・・」
その後翆は、朱璃が暖かい湯で絞ったタオルで拭いてくれている時に言った。
「・・・お前・・・なんかサドっ気ある・・・。絶対・・・。」
「あは、違うよ、あなたがあんまり可愛くてそそらせるからだよ。だからじらしたりいじめてみたくなる。」
「ばっばかっ。もう・・・。・・・あ、・・・その、・・・今日は、1日、どうだったんだ・・・?」
とたんに朱璃の目が泳ぐ。
「え?あ、ああ、うん、えーと、あーまあまあ、かな・・・?」
朱璃の顔に枕が飛んできた。