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朱璃・翆

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companion



「・・・なあシュウ。お前、俺に恨みでもあんのか・・・?」

執務室でシュウと2人で書類を前に話し合っていた時、ふと朱璃が言った。

「いや?なぜです。」

「なぜえ?よくまあそんな事が言えるな?ファルーシュをこの城に滞在させた上、昨日なんか翆に伝言頼んだろ!?1日ファルーシュに付き合うようにってさ?お陰で俺は針のむしろに座ってる気分なんだからな。くそっ。昨夜もせっかく翆といい感じだったってのに、ファルーシュがらみであの人がつむじ曲げちゃってさあ。俺裸のまま寝室から追い出されたんだからな。・・・まあそのまま仕方なく寝たら、気づけば朝自分のベッドで寝てたけどな、翆なしで。」
「それはご愁傷様。だが俺は適当にあしらえとしか言っていないはずだし、翆殿もそれは承知のはずだが?あなたが翆殿の気に触るような態度をとったのではないのか?やましい事でもしたんじゃないのか?」
「ぐっ・・・。い、いや、俺は何にもしてないぞ?」
「何を焦っている?ふふ、何もしていなくても何か思う事でもあったのではないのか?それが翆殿の癪に触ったのではないか?」

シュウは何もかも見透かしたかのように薄っすら笑いながらからかう様に言った。
朱璃はジロッとシュウを睨む。

「お前はほんと嫌な奴だな。その無駄に働く頭は仕事の時だけに使えよ。あーもう、くそっ。俺ちょっと屋上の空気吸ってくる。」
「くくく・・・どうぞ。」

朱璃はまたジロッとシュウを睨みつけると部屋を出て屋上まで歩いた。
外に出ると深呼吸をした。

「んーん、・・・はあ・・・。」

そしてまたため息をついた。

シュウの言ったことは当たらずとも遠からずだった。

確かに朱璃が愛しているのは翆だけだ。
他の人間が入ってくる余地などない。

しかし嫌な奴だろうと思っていたファルーシュが、実はとてもいい奴でしかもとてもかわいらしく思えたのは事実だった。
昨日の朝に話をした時から既に好きなタイプだと思っていた。
恋愛云々抜きで、ただ単純に好きだと思った。

しかし相手は朱璃の事をそういう対象にしている上にとても美しい人だから、確かに少しグラッときたのもある。
その上はしゃいでいた彼は本当に可愛らしかった。

そんな事もあって、本当にファルーシュのことは友達として好きだと思っている割に、ほんの少しの煩悩が混じってしまった為に翆を怒らせたのだと朱璃は思った。
多分朱璃の少しだけ持った邪な気持ちを敏感に察知したのだろう。

「あーあ、どうすっかなあ・・・。」
「何が?」

不意に声がして朱璃はびっくりした。
振り返るとファルーシュがいた。いつも側にいるだろうリオンは今はいなかった。

「なんだ、ファルーシュか。びっくりさせんなよ、何で気配消してんだよ?」
「あはは、びっくりした?気配は、つい、ね。たまにわざとじゃないんだけど消してるときあるみたい。ごめんね?」
「別に謝らなくてもいいよ。リオンさんは?」
「ああ、今は多分散歩してるかな?いっつも仕事熱心で僕から離れる事ないから、たまに無理やり休ませようとするんだけどね、聞いちゃくれないんだよ。だからさっきも散歩がてら色々見学してくるようにってほぼ命令したんだよね。ほんっと真面目なんだ。あーあ、僕より彼女の結婚の方がよっぽど気になるよ。こんな調子じゃいい人見つける暇もないよね?」

ファルーシュはやたら饒舌だった。本当にリオンの事を心配しているのだろう。
と、不意に朱璃をじっと見て言った。

「ところで、ファル。」
「・・・は?」
「僕の事はファルって呼んでくれる?親しい人は皆そう呼ぶんだ。ね?」
「・・・親しい、人・・・。」
「うん。親しい人。」

ファルーシュは無邪気に朱璃に笑いかけた。

ああ、まただ。

別に恋愛対象として好きじゃないのに、無防備に親しいと言ってのけ笑いかけられて朱璃はとても嬉しかった。
そしてそれがまた困ると思った。
また翆に勘違いされてしまう・・・。ただ友達として嬉しいのだが・・・。

「で?何がどうするの?まあいいや。ねえ朱璃。僕の事、その気になってくれた?僕と寝てみたくない?」
「寝て・・・。・・・なあ、ファル。お前さ、いい奴だし、俺やっぱ好きだ。でもその好きは友達としての好きなんだよ。そりゃ俺も男だし、ちょっとは邪な事も考えてしまうけどさあ、翆が大切なんだ。あの人を泣かせたくない。だから悪いけどお前の気持ちには答えられない。」
「あーあ、やっぱり?ね?翆さん。どうしたって僕は君には敵わないでしょう?」
「・・・は?翆って・・・」

朱璃がポカンとしていると物陰から俯いた翆が出てきた。

「ええっ!?」
「あはは、ごめんね、朱璃。内緒にしてて。実はね、さっきレストランで翆さんを見かけたんだ。何かとても辛そうに見えたんだよ。で僕は声もかけずにいきなり翆さんの前に座ったんだ・・・・・」


・・・少し前、レストランにて、急に目の前にファルーシュが座ってきて、翆は唖然とした。

「やあ、元気、ないね?僕のせい?」
「い、いきなり・・・。・・・いや、うん、どうだろう・・・。君のせいでもあるし、朱璃のせいでもあるかな。」
「どうして朱璃のせいでもあるの?」
「・・・朱璃が・・・もしかしたら・・・君の事、好きになるかもしれないから・・・かな。」
「そう、か。あはは、でも考えすぎだよ?君は君が好きになった朱璃が信じられないの?彼はね、大丈夫。君を裏切らないよ。まあ僕的には残念だけどね。1度寝てみたかったしなあ。」
「なっ・・・。・・・はあ・・・。君は何ていうか・・・。でも何でそう言えるんだ?僕からしたら朱璃は君の事、気に入っているように見えるのに。」
「うーん。そうだね、多分彼は僕の事好きになってくれているように思うけど、残念ながら友達として、みたい。でもこのまま押せ押せでなんとかアレに持ち込めないかと思ってたんだけどなあ。でもやっぱり翆さんに悪いよね、そんなの。だから諦めてもいいよ。」
「ファルーシュさん・・・。」
「ファル。親しい人は皆僕の事そう呼ぶんだ。君もファルって呼んで欲しいな。でさあ、翆さん。試してみない?」
「え?試す?」
「そう。まあ試すなんて、朱璃に悪い事なんだけどさ、いいよね?君や僕を悩ます彼が悪いって事でさ?」
「そんな・・・。っていうか、君、悩む、のか?」
「うわー、翆さん意外に失礼だなあ。僕だってそれなりに悩むんだよ?ただ人より考えすぎないって事と、自己解決が早いだけだよ。」
「なんか、うらやましいな、それって。」
「あはは、そう?じゃあ、ね?行こうよ。」
「・・・でも・・・、・・・うん、そうだな、よし、行こうか。」

そうして2人は朱璃を探し、この屋上まで来たというわけだった。

「ほんと、ごめんね?朱璃。でも僕をふる代償だと思ってよ。」

ファルーシュは相変わらずニッコリとして言った。


朱璃はまだポカンとしていた。
翆は俯いていた顔を上げて朱璃に言った。

「・・・ごめん・・・。今の事も昨日の事も・・・」

朱璃ははっとして翆に言った。

「い、いや、翆が謝る必要はないよ。俺の方こそ、ごめん。翆を悲しませたくなんか、ないんだ。」
「朱璃・・・。」
作品名:朱璃・翆 作家名:かなみ