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朱璃・翆

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朱璃というのは不思議な少年のようだった。


吸い込まれそうな美しい瞳を持ち、色白で儚げで類まれな容姿を持つ少年。
とても可愛らしい様子で話し、ニッコリと笑いかけられると惹き付けられずにはいられない魅力的な少年。

しかしあんなに明るいのに、1人でいる時、ぼんやりしたかと思うと、時折表情に影が差す。
あんなに気さくなのに誰にもなびかないように思われる。
あんなに優しげなのに、戦場では鬼神の如く敵を倒し駆け回る。

相対性が垣間見える少年。

出生はまったく定かではなく、ゲンカクに預けられる前の事はナナミですら知らないらしい。


色々な人に聞いてみて感じた、皆の持つ朱璃の印象である。

とても愛されている反面、どこかつかみ所のない、現実感のない様子で、例えるなら物語の主人公や天使のような存在として朱璃を見ている(というより、崇めている?)所があるように思われる。

「うちの道場に来た頃はね、しばらく泣きも笑いも喋りもしなくって、いつも呆然とした感じであらぬところを見ていたの。なんだか捨て犬を思い出させるような感じだった。でもね、暫くたったある日にね、突然笑い出したの。その時はじいちゃん留守であたしだけしかいなくって、実は凄く怖かったんだ。なぜかほんとに怖かった。今思えば若干10歳にもなっていないような子供のする表情じゃなかったんじゃないかなあ・・・。笑い声だって無邪気さなんて全然なくって・・・。泣きそうになっていたあたしに気付いた朱璃はね、次の瞬間には笑うのを止めてじっと見てきたかと思うと、”泣かないで?”って慰めてくれたんだ。初めて喋ってくれて、それだけであたし嬉しくなってニッコリ笑ったの。そしたら朱璃もあたしの顔を見たかと思うとニッコリ笑ってくれたんだ・・・。それからかな?今のような朱璃になったのは・・・。」

翆は朱璃の大事な人って聞いたから・・・とナナミが打ち明け話のように、ゲンカクに拾われた頃の朱璃について話してくれた。

「でも、道場に来る前の事については、あたしにも何も教えてくれなかったな。聞いてもはぐらかされるの。だから聞かない事にしたんだ。じいちゃんがいない今、朱璃本人以外に少しでも道場に来る前の事知ってる人、多分誰もいないと思う。」

そう言って、ナナミは少し寂しげに笑った。

何が、あったのだろう・・・。
ほんの小さな幼子に、何が。

急に笑い出した時に何かを悟ったのだろう。
そして目の前にはこれから唯一家族になるかもしれない少女が、自分を見て泣きそうになっている。
朱璃はその時点から皮を被ったに違いない。

事情はまったく分からないが、多分誰にも捨てられないように、離れていかないように、拒絶されないよう人好きのする自分を演じてきたのではないだろうかと思った。
そしてなんだかとてもせつなくなった。
なんだか可哀想な位に怯えた幼い朱璃がいるようなそんな錯覚が生じた。

「普段の朱璃も大好きだけど、多分ホントの朱璃はきっと出してくれないんだろうなって思うんだ。勿論皆は普段の朱璃が本来の朱璃だと思ってるだろうけど・・・。あたしはおねえちゃんだから・・・分かるんだ。って偉そうな事言ってるけど、多分あたしのせいじゃないかなって思う・・・。朱璃が苦しんでる時にあたしが怯えて拒絶するような態度しちゃったから・・・。だからホントはおねえちゃん失格だよね・・・?」
「・・・ナナミだってほんの小さな子供だったんだ。君のせいじゃないよ。君が自分を責める必要なんてない。それに朱璃だって君を責めてやしないよ?君のことはとても大切な家族だと思っている。」
「・・・ありがとう。えへ。翆さんって、初めは無愛想で怖い人かなって思ったけど、とっても優しいね?朱璃が好きになるのも分かる気がする。」
「・・・好きって・・・。あの、僕達男同士だし、朱璃は別に僕の事好きな訳じゃないと思うけど・・・」

・・・どっちかといえば・・・おもちゃ?
子供が自分の所有物として主張するようなおもちゃに近いような気がする・・・。

「えーそんな事ないよー?絶対翆さんの事好きだと思う。それに男だ女だって関係ないよ?好きになったら性別なんて。」
「過激だね・・・。」

ナナミはうふふと笑った。

「朱璃、きっとあなたなら本当の自分を出せてるんじゃないかなって思うんだ。朱璃の事、よろしくお願いします。」

そう言ってペコッと頭を下げると、またうふふと笑って、じゃあねと去っていった。
作品名:朱璃・翆 作家名:かなみ