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【テニプリ】温泉に行こう!

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『チケットの有効期限が今日までなんだ。…でなければ、誘わん』
むすりと手塚に返され、跡部は舌打ちする。どうやら、自分は手塚の目に入れても痛くない可愛い恋人越前リョーマの代わりらしい。冗談ではない。
「他の奴、当たれよ」
恋人の代わりに温泉に付き合ってやるほど、暇ではない。
『そう出来ればそうしているが、浮気するなら、お前にしろとリョーマに言われているからな』
憮然とする跡部に追い討ちを掛けるように手塚は言葉を続けた。その言葉に跡部は髪を掻き上げる手を止め、瞠目した。一気に目が覚めた。
「…アァン?」
今、とてつもなく変なことを聞いた気がする。
『…跡部?』
「…お前、今、何て言った?」
『跡部』
「名前じゃねぇ。その前だ。浮気するならって、何だよ?!」
『するつもりはないぞ。俺は越前一筋だからな』
きっぱりと手塚が言う。跡部は溜息を吐いた。
「…いや、それは嫌と言う程、解ってるからよ。浮気するなら、俺って、どうして、俺なんだよ?」
『俺に聞かれても解らん。リョーマに聞いてくれ』
「…そーするぜ」
何を考えているのか、手塚の恋人の考えることはさっぱり解らない。それにあっさり従う手塚も手塚だと跡部は思う。
『それで?』
「アーン?」
『行くのか、行かないのか?』
手塚に返事を急かされ、暫く考えて、跡部はたまには庶民の風呂に行ってみるのも悪くないかと思い直し、頷いた。
「いいぜ。付き合ってやる」
『そうか。少し、遠いところなんだが、9時半に迎えに来るから、準備しておけ』
「おうよ」
また、後で。…と言って、通話が切れる。時計を見ると7時過ぎ。随分、休日にしては早い時間に起こされたもんだと跡部は溜息を吐いた。







 約束した時間、5分前にチャイムが鳴る。手塚はルーズな癖に時間はやたら正確で遅れようものなら煩い。

「今、行く」

返事を返して、地下の駐車場に降りると、四駆の運転席に手塚が見える。助手席に乗り込むとゆっくりと車が動き始めた。
「お前、免許、持ってたのかよ?」
シートに凭れ、シートベルトを締める。乗りなれない助手席だが座り心地はまあまあだ。跡部はハンドルを握る手塚を見やった。
「あぁ。あると便利だからな」
「四駆は趣味か?」
「山に良く行くからな。普通乗用車では行けるところが限られるだろう」