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【テニプリ】温泉に行こう!

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「昔は人形みたいに可愛かったのに、どこをどうすればこんなに可愛いげのない男に育つんだろうな?」
「悪かったな。可愛いげなくて…ってゆーか、てめぇに言われたくねぇよ。てめぇだって、うさぎのぬいぐるみみてぇだったじゃねぇか。それが、どうしたら、こんな仏頂面の無愛想野郎になるんだよ。アーン?」
「…知るか」
ぶすりと手塚が答える。幼馴染みはこれだから、困る。信号が青になり、手塚は再び正面を向く。跡部は鼻を鳴らすと窓の外に視線をくれた。ウィンドウを下ろして、目を細める。風が心地よい。
「…郊外になってきたな」
高層ビルは消え失せ、住宅地が広がる。車は左折すると緑多い山沿いを走り始めた。
「もうすぐ着くぞ」
車は山道へと入る。緩やかなカーブが暫く続き、開けた場所に家屋が見える。こじんまりとした駐車場スペースに手塚は車を止めた。
「ここだ」
車を降りて、跡部は物珍しいのか、辺りを見回す。完璧に山中だ。青々とした木々が深い緑の木陰を作り、山鳥の鳴き声がする。近くには渓流でもあるのか、水の流れる音もする。
「越前とお前の趣味が一致したとこだな」
「言われてみればそうかもな。…ほら、行くぞ」
促され、砂利道を踏んで、木造の建物の中に入る。受付には愛想の良さそうなおばさんが手塚と跡部を見止めて、微笑んだ。
「いらっしゃいませ。今日はいつものお連れ様と違うのね」
「今日はたまたまです。部屋はどこが空いてますか?」
「今は…」
随分と親しげだ。顔を覚えられる程、頻繁に訪れているらしい。
「跡部」
「アン?」
「今、桶風呂と石風呂が空いてるそうだ。お前、どれがいい?」
差し出されたメニュー表を見やる。
「桶?」
「…それで、お願いします」
「はい、ありがとうございます」
手塚は受付を済ませ、ドライヤーの入った竹籠を受け取ると興味深げに小さな土産物の販売スペースを覗き込んでいる跡部の腕を掴んだ。
「行くぞ」
受付を出て、長屋になった『桶の湯』と書かれた部屋の前、手塚は引き戸を開く。中に入ると京間の三畳程の丸い小さなちゃぶ台とテレビの置かれた畳敷の小部屋があり、その奥に一畳程の脱衣スペースがある。跡部はきょろきょろと室内を見回した。
「へぇ〜」
こういうところには、余り縁がない。見る物全てが珍しい。そんな跡部を尻目に手塚は脱衣所に入ると、服を脱ぎ始めた。
「いきなり、脱ぐなよ」