二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

For one Reason

INDEX|18ページ/31ページ|

次のページ前のページ
 

 奇妙な効果音が出そうな勢いで、Lに頬をつままれる。
「な、なにするん」
「月君。お願いがあります」
「なんだよ」
 ひりひりする頬を押さえてつっけどんに問うと、無駄に真摯な顔つきになってLは言った。
「私の前で感情を偽らないでください。私は月君の全てを受け止めたい」
「・・・は?」
 奴の素っ頓狂な言動にはだいぶ慣れたつもりだったが、甘かったらしい。
 思わずずっこけそうになった月は、相変わらず膝の上に居座っているこの奇妙な男を見下ろした。
「なんだって?」
「怒りたいなら怒ってください。笑いたいなら笑ってください。泣きたいなら泣いてください」
 あなたは、とLは愛しく月の頬に指を滑らせる。
「とても透明な心を持っています。それを私の前で、隠さないでください」
「な、っ・・・!」
 何でそんな言葉が口からすらすらと出てくるのか。
 基本的に口は上手いほうだったが、純然たる日本男児の月は当然そんな言葉は言いなれてもいなくもちろん言われなれてもいなく、本当に狼狽した。その結果、赤面する羽目になったのだが。
「・・・月君。どんな夢だったんですか」
 静かに問われて、月はふっと我に返った。
 彼に特有の、あのまぶしいまでに綺麗な笑みを浮かべて、そうだねとつぶやく。
「僕は、泣いていたんだろう」
「・・・はい。静かに、声はまったくなかったですけれど」
 心臓が止まるかと思った。
 ふっと目を開けたら、隣の彼の目から涙がこぼれていたのだから。
 あわてて枕元においてあったタオルを畳んでそっと彼の目の上に置いた。泣いている月を正視することは出来なかった。ワタリも呼びたくなかった。カメラに、その痕跡も残したくなかった。
 泣いている彼の顔は、Lの心の中に鍵をかけてしまっておきたかった。愛しかったけれど、もう見たくはなかった。
「僕はね、竜崎」
 月の手が癖のあるLの黒髪を撫でた。
 とても優しいその態度は今までになかったもので、喜ぶより驚いたLだったがそれを表に出すことなかった。
「竜崎が死ぬ夢を、見ていた」
「・・・」
 黙ったLに月はごめんと謝罪した。
「縁起でもないだろう。おまけにキラは捕まえられてなかったし」
「私が死ぬ夢で・・・泣いてくださったんですか」
 そうだよ、と月は頷きながらもう一度ゆっくりとLの髪に触れる。
 幼子に対するような態度だったが、異を唱えるつもりはさらさらない。
「――僕が怖いのは、捜査がだめになることでもキラを逃すことでも、ない――お前が死ぬことだったみたいだね」
 話したから逆夢になるといいな、と最後に無邪気な言葉を言って月はLの目にそっとその手をかぶせた。
「おやすみ、竜崎」
「・・・おやすみなさい、月君」
 もう一度唇の先で同じ言葉をつぶやいて、Lはゆっくり目を閉じた。


作品名:For one Reason 作家名:亜沙木