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みとなんこ@紺
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Doubt

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4.







「・・・もう、乱暴だなぁ」


キィ、と。小さく金属がきしむ音に紛れて、少年の声が響く。
「・・・ほんと。大将ばりに短気だな」
「えー、そんな事は・・・」
ないです、よ?
とは続けられなかったらしい。
何を思い出して言いよどんだのかは興味があれど、今のところはそこにはそれ以上突っ込まない方向で。完全に足音も気配も遠ざかったのを確認して、ハボックはアルフォンスを影にして、廃材になかば埋もれていた身体を起こした。
手を伸ばして弾き飛ばされた鎧の頭部を手に取ると元の通りはめてやる。
「ありがとな、アル。助かったぜ」
えへへ、と照れたように笑うのが可愛らしくて、ポンポンと鎧の頭を撫でてやってから、ハボックは腕を回しつつ立ち上がった。
「・・・とりあえず、話聞く前に先に場所移動するか。大将は?」
「さっきの人たちを追い掛けていった筈だけど・・・」

・・・・・・。

如何とも言いがたい沈黙が落ちる。
追いかけてって。あの兄が。
あの計り知れない頭の回転率に比例してるかのごとく、時にとてつもなく気の短いあの兄が。
「・・・連中が巣に戻る前にやっちゃわないよな・・・?」
思わずぽそりとそう呟けば、その弟は微妙に遠い目をしたようだった。(本当のところはどうなのかさすがに分らないが、何となく)
「大丈夫だと思いますけど・・・」
微妙に保障できません、と。鎧に魂を宿した子供は困ったように首をかしげた。





さっきの銃声の事もあるし、連中が戻ってこないとも限らない。それに人が集まってきたらやっかいだから、と2人は早々にその場から離れた。
しかし何処からマークされたかは分らないので宿には戻れない。さて、どうしたものか。多少警戒しながら裏通りを行きつつ、ハボックは傍らの鎧姿の少年を見やった。
「そういや、大将とアルは何でこんな所に?」
「一旦イーストシティに戻るつもりでたまたま司令部に連絡したら、中尉からお話聞いたんです。ボクら、ここにはちょっと近いところにいたので」
「そっか、ラッキーだったな。・・・ま、お前らには貧乏くじだっただろうけど」
「そんな事ないですよ!いつもお世話になってるんですから。お手伝いできる事は、少ないですけど」
「いや、実際さっきも助かったぜ。あれ以上騒ぎ大きくするのもマズかったし」
「そういってもらえると嬉しいな。・・・でも少尉、さっきの人たちって、・・・どうなんですか?」
「どうってのは?」
「うまく言えないんですけど・・・ホントに、あんな人たちに大佐が捕まっちゃったんですか?」

「あの程度の連中に、だろ?」

少々補足すれば、アルフォンスは僅かな逡巡の後、遠慮がちに頷いた。
「んー・・・」
基本的に嫌な方向にも有名人な上司なので、何か顔を見知ってたヤクザな連中に、一人なのをこれ幸いと拉致られた、という可能性はなきにしもあらずではあるが、可能性としては低いかなと思っている。
相手が誰であるか判っていると仮定して、連れてったのがプロというかテロリストの皆さんだったりすると、とっくの昔に何らかの犯行声明が届いているはずだが、今の所そんな事もないし。
なにせ連れて行きかたもアレだ。白昼堂々というわけではないが、目撃者も多い。その後の行動は不明なのでひとまず置いておくとしても、あまりにも粗が目立つ。
「たぶん、何か企んでんだと思うんだけどなぁ・・・」
「え、大佐が?」
たぶん。
今回の件は軍部内のごく一部の人間(ぶっちゃけ大佐に近い部下連中のみ)にしか伝わっていない。下手に話が広がればそこで生まれる弊害の方が多いからだ。
大佐の不在を狙って面倒ごとを起こそうとするのは、何もテロリスト初めとする犯罪者の皆さんだけではないのだ。その辺、大変に面倒くさい。
身内であるはずの軍部内にも敵がいるのは、若年ながら破竹の勢いで階位を上げているあの上官にとって仕方のない事ではあるのだが。
彼の人を邪魔者扱いしたい一部の連中にとっては、突くネタは何でも良いのだ。
下手にバレれば格好の標的になるだろう。だからこそ今隙を見せるわけにはいかない。
大佐を連れて行った連中が何であれ、事態を確認しないままに下手に軍を動かして大事にすれば上にも伝わる。そうなれば嬉々として暴れだす連中が出る。
査察か何だか知らないが、数日後に東部へやってくるという件の将軍もそんな感じだし。
なら、そんな事態になる前に、さっさとご本人様を見つけて早々にご帰還願えばいい、のだが。
その中で気になるとしたら、そんなの相手に大佐が二晩も大人しくしてる理由くらいで。
っほんとに、何をしているんだか。
うーん、と小さく唸るハボックの表情は釈然としない感じだ。



それもそうだろう。自分だって、兄だってそうだ。司令部に電話を入れた兄の隣で大人しく待ちながら、徐々に変わっていくその表情を見て、徐々に傾いて。
途中ではぁ?と思いっきりツッコンだ兄の気持ちは判らなくもない。

だって大佐が拉致られたって。

聞いた時は、一瞬からかわれているのかと思ったが、電話口に寄って一緒に聞いた中尉の声は至極マジメだった。(いつもと同じ、といえば同じだが)半信半疑のままザクロスへとやってきたが、町の空気は長閑なもので、何か事件など起こりそうもなかったのに。
取りあえず適当に人に話を聞きながら、宿でも行こうかと言っていた矢先に、目の前を数人の人相の宜しくない男達が数人駈けていったので、2人で思わず後を追ったのだ。
2手に分かれて、男達が向かっているであろう方向へ回り込んだつもりが、廃材置き場のような所へ出てしまい、戻ろうかと思った矢先に、路地から飛び出してきたハボックとかち合った、と。
だが、結局の所、2人分合わせてもたいした情報ではなく。
「・・・こりゃ大将に期待するしかねぇかな」
さっきの連中を追っていったらしいエドワードのお手並み拝見、ということになりそうだ。
「何処で落ち合うとか決めてるのか?」
「いいえ、でも合図か何かがあると思います」
良くも悪くもこういう事態にも慣れっこな2人だ。その辺は任せても大丈夫だろう。時間はとっくに昼をまわっている。ここらではシェスタと洒落込む風潮でもあるのか、往来を行く人の姿は少ない。
・・・と、ハボックはそこである事に気付いた。
そう言えば、いかに郊外とはいえ、銃声は確実に響いたはずだ。なのに軍が動いていない。
・・・・・・そういやさっきも軍の話を聞いた、ような。

「あ」

落ちかけた思考を遮るように、アルフォンスが小さく声を上げた。
「アル?」
「見付けましたよ、兄さんの合図」
ほら、と立ち止まって指を指し示す方向を見遣れば、山手の方の小高い建物の屋上に、翻る旗ひとつ。
良く見れば、旗の真ん中に何処かで見たマークが記されている。ぴこ、と立ったアンテナと三つ編み。エドワードが遊び半分(だと思ってる)でよく使っているアレだ。
あの下にいるはずだから、と先導するアルフォンスの後に続いて走っていけば。
裏通りの路地の角、無造作に積まれた木箱に腰掛けたエドワードがこっち、と手を振っていた。
「あ、少尉だったんだ、さっきのアレ」
久し振りー、とか無邪気に手を振る子供に同じように返してやろうと上げかけた手が微妙に止まる。
作品名:Doubt 作家名:みとなんこ@紺