ひぐらしのなく頃に 壊 姉探し編
第三話
封鎖解除のおかしさはかなり前から議論されていた。
平成11年頃。インターネットも日本国民にかなり浸透した時代で、そのインターネットで行われる流行ものというものは、もっぱらが某巨大掲示板を用いた情報交換だった。
情報交換といってもくだらないことを話し合う掲示板もあれば、企業の悪口を上から下まで書き続けるような掲示板、ありとあらゆる情報が入り交じっていた。
その中でも一大勢力を放っていたのが「オカルト板」である。
この掲示板は大きなカテゴリで「都市伝説」に属するものだったが、議論が加熱し過ぎて連日多くのスレッドが作成され、都市伝説から名をオカルトに変えるほどの勢いを持っていた。
オカルト板の中では国内外を問わないあらゆるジャンルのオカルト話が持ち込まれ、科学的な証明がどうとか、プラズマによって再現可能だとか、霊の仕業だとかそういう議論が四六時中行われていた。
その中で人気のあったものが国内某県の某村で起きた災害に関するものだった。
則ち「雛見沢大災害」。この村の閉鎖的な風潮や宗教的な思想は必ずと言っていいほどこう
いった掲示板の話題に毎日上がっていた。いわゆる「オヤシロさまの祟り」。この村は外部からの人間を嫌い、そして内部の人間を外に出すことを嫌うと言う鎖国的な掟があったという。
しかしオカルトマニアの心をつかんだのはその鎖国的な掟ではない。掟を破ったものに降り掛かると言われる「祟り」が彼らの心を鷲掴みにしていた。曰く「鬼隠し」という。世間一般でいうなら「神隠し」が掟を破ったものに起きるというのが定説だが、雛見沢大災害は神隠しなどでは断じて無い。
人が行方不明になると言う証明が不可能な曖昧な祟りではない。この大災害によってオヤシロさまは天災によって祟りをもたらす破壊の神にまでなっていた。
加えて祟りを予言していたと言う謎の機密文書、そしてその年まで4年連続で起こっていた連続怪死事件もまた彼らを虜にする要因だった。
理論派の人々にもこの災害はおかしなことばかりだという。20年という長期にわたる閉鎖期間や、ガス発生により影響が出ているはずなのに全く変化のない自然体系。政府が公式に発表した情報には信憑性が無いといい、ありとあらゆる観点からいちゃもんをつけている。
私はこの頃初めてインターネットに触れて、そして雛見沢の封鎖が未だに続いていることを知った。三宅島ですら5〜6年で封鎖は解除されたのだ。
封鎖解除されたのは平成17年で、私が初めてインターネットに触れたのは平成12年頃、つまりその時点でも雛見沢は15年は封鎖されていたことになる。異常な数字だ。父さんが雛見沢になかなか連れて行ってくれない理由の一つはこれだったのだ。
そしてネットにはこんな情報も流れていた。
雛見沢大災害の前日だか前々日だかに起きた、雛見沢分校の女子生徒が起こした雛見沢分校の篭城・爆破事件。
雛見沢に一つしか無い学校の生徒全員を人質として立てこもり、雛見沢に存在する寄生虫の危機性、また宇宙人による村ないし地球の乗っ取りだとかを主張。最後は脅迫として学校中に撒いていたガソリンが引火・爆発し、校舎は柱一本も残らず、犯人含め生徒も全員死亡したという、まさに「狂人」が起こしたとしか思えない事件が発生した。
そして翌日か翌々日に雛見沢大災害が発生。しかも大災害は立てこもり事件を引き起こした少女が持っていた機密文書、通称「34号文書」に記されていた予言とほぼ同一であるというのである。
雛見沢分校篭城事件・・・実は私の姉は直接大災害によって亡くなったのではなく、その事件によって亡くなってしまったのだ。
つまり私の姉はその学校の生徒であったということだ。
作品名:ひぐらしのなく頃に 壊 姉探し編 作家名:疲れた