二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

初恋をつらぬくということ

INDEX|19ページ/26ページ|

次のページ前のページ
 

雨は相変わらずの勢いで降り続いている。
その中で、お互い、なにも言わずに相手を見て立ちつくす。
耳には雨音だけが聞こえる。
しばらくして。
「そーか」
銀時が抑揚のない声で言った。
表情もない。
さらに、その眼が伏せられた。
「わかった」
その傘が動く。
顔が隠れる。
続けて、こちらに向いていた身体が、帰るほうを向いた。
「……自分勝手な気持ちを押しつけちまって、悪かったな」
銀時は淡々とした口調で詫びた。
そして、歩きだす。
離れていく。
桂は動けずにいた。
だから、傘を差したうしろ姿は、雨の中、どんどん遠ざかる。
銀時。
胸の中で、その名を呼ぶ。
本当は、口で呼びたい。
呼び止めたい。
しかし、口を閉じたままでいる。
呼び止めてその先どうするのかを考えると、結局なにもできないという答えが出てくる。
どうしようもないんだ。
そう自分に言い聞かせる。
だが。
頭に、さっき自分に向けられていた鋭い眼差しが浮かんできた。
耳に、好きだ、と告げた声がよみがえってきた。
胸の中で感情が激しく揺れる。
駆け出したいような落ち着かない気分になる。
でも、どうしようもないんだ。
そう強く思い、頭や耳にある記憶を打ち消す。
傘を持つ手にいっそう力が入った。
桂はなにも思い出さないようにして、歩きだした。















作品名:初恋をつらぬくということ 作家名:hujio