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夢を見るヒト

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 わざわざ背凭れまで回り込み、そこに肘を突き頬杖を突く。29年前と一つも違っていない容姿、性格。怖気が走る。高松は不快げに眉を顰めた。それがあの石が与えた栄誉だとでも言うつもりだろうか。
 ヒト如きがいつまでも到達出来ない地点にジャンは居る。それは秘石の人形としての当たり前でがあるが、同時に常世に居る限り何時誰に気付かれ実験動物扱いされるのか分かったものではない。
(元々、こんな物など無くても目なんて良く見える癖に)
 現総帥と同じ顔は、誰かが気付くかも知れないと掛けた眼鏡は勿論伊達眼鏡だ。常に自己修復を繰り返している人形に身体能力の低下は有り得ない。眼鏡は当然サービスが見立てた物で、友人知人に見せたところ爆笑の嵐だった。
 勿論高松も爆笑組だったが、それはそんな事をするより他に無いほど自分は嫉妬していたのだ。
 憮然とするジャンの姿はそれはもう拗ねた子供も斯くや、と言わんばかりで尚更笑えた。サービスがそんなジャンを撫でて『私の見立てた眼鏡だからね。大丈夫みんな見慣れたら普通だよ』と褒めているのか貶しているのか分からない言葉を掛けるとあからさまにジャンは顔を晴れやかにし、その言葉を聞いたシンタローが今度は『なんでおじさんがチンなんかの為にもの見立てんだよ!』と膨れて、マジックにからかわれていた。……すぐにガンマ砲の撃ち合いになったが。
 思い切り疲れる記憶を引き出したためか、呆れで今一度溜息を吐いた。そんな不快な由来の眼鏡など取ってしまえ。無言で両手を伸ばしてジャンの鼻先に掛かっている眼鏡を外す。
 まるで子供が悪戯でもするように、そうっとした仕草は慣れた物なのだろうか。起きない事を確認した後、テーブルの上に眼鏡を放り投げた。カチン、と小さな音を立てて、眼鏡は抵抗一つ出来ない。そんな些細な事に気を良くし、唇の端を持ち上げる。
眼鏡を見下げるのは、親友を見下げる事と同義だろうか。しかしそれでも心で思う事を止める事は出来なかった。ジャンが、決して他の人間に心を動かさない事を知っていて、傍に居ない男に。
 彼は彼のしたい事をすればいい。そこに居てくれると言うだけで安心するから。とはその男の言である。なんと欲の無い事か。ジャンが帰ってきただけで泣いた者の言う言葉ではないだろう。
 あまりの不快さに、眉を寄せて息を詰める。
作品名:夢を見るヒト 作家名:nkn