うさみみ1
腰に回した手とは反対の手で頬に手を添える。
「ふ、フレンお前…!!」
「だって、ユーリ言ってくれないんでしょう? なら仕方ないよね」
「何がどう仕方ないんだよ!」
その突っ込みには笑み一つで返すと、頬から顎へと指を滑らせた。
顔を上向かせて顔を近づける。
「や、やめろ!」
ぐっと身体を押されて離される。
つまり、ユーリは頭をガードしていた手を離したのだ。
隠し事はきっと彼がガードしていたものだろうと踏んだフレンは、ユーリが頭から手を離す状況を作り出したのだった。
目論みは見事成功して、ユーリが隠していたものが現れる。
それを目の当たりにしてフレンは固まった。
「…み、み?」
「あ…あああ…」
ユーリは見られた事に絶望してがくりと項垂れた。
だがフレンはそれ所ではない。
ユーリの頭から二本の黒くて長い、耳。
形状から考えてうさぎのみみ、だろう。
勿論生えているわけではない。カチューシャみたいなものだろうか。
それがユーリの頭にあり、ぴょんと伸びていて左右に揺れていた。
「ゆ、ユーリ…? それ、どうしたの…」
「…………貰った………」
大きな溜息を吐いて、ユーリはぼそりと言った。
不本意極まりない、という表情を隠していない彼は、きっと仲間たちに懇願されて、仕方なくつけているのかもしれない。
「もらっ・…た?」
思わず眉を顰めた。
うさみみを?
一体…誰に?
…こんな。
「…なんて、事だ…」
「フレン…?」
ユーリプラスうさみみ…
こんな、一部の人が喜びそうな物を一体誰が!!
フレンがカッと目を見開くと、様子を伺っていたユーリがビクッと驚いて肩を揺らした。
そしてじっとユーリを見る。
頭の上で揺れている黒い耳からつま先までじっくりと。
「な、なんだよ…」
フレンの視線を訝しんで、ユーリは気持ち後退する。が、フレンの手が相変わらず腰にまわっているためそれは叶わなかった。
フレンはじっくりとユーリを見た後、鼻と口元を掌で覆って目を逸らした。
はっきり言おう。ユーリは可愛い!
普段のユーリも言わずもがなだが、ユーリは何を着ても何をつけていても似合うと思う。いや、僕はどちらかというと産まれたままの姿の方が好きだけど…!!
だけど、うさみみだなんて…うさみみだなんて…!