二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

テクニシャンな彼

INDEX|2ページ/6ページ|

次のページ前のページ
 










「───鋼のの部屋の前で何をしているんだね?ハボック大尉、ブレダ大尉」
扉の前にへばり付いている大きな物体×2を、どこか呆れたような声音でロイは呼ぶ。
ぎっくん、と肩を震わせた二人は、振り返りロイを見ると、あわてたように口をぱくぱくさせながらなんとか言葉を紡いでいく。
「少将…いやそれが、」
「鐵の…アルフォンスの奴がですね、この中へ入っていったきり、出てこねぇモンですから」
「アルフォンスが、か?」
首を傾げたロイに、二人がこくこく頷く。
アルフォンスは銀時計を持った国家錬金術師だが、職業軍人ではなく、司令部の敷地内にある錬金術研究所の職員だ。
とはいえ銀時計を所持している以上、召集さえ掛かれば軍務に赴くことになるのだが。
「ここに入ってから、もう20分以上経ってるんッスよ。あいつ今週は休みで、鋼の大将を迎えに来たって言ってたのに」
「ああ、研究所の施設内の、改修工事が行われていてな。今日から3日間、職員は全員休みに入っているそうだ」
「ええ、アルフォンスに聞きました。で、エドワードも、今日は未だ残業中なんですけど」
「だったら、アルフォンスが鋼のを手伝っているか、世間話でもしているのだろう?あれも優秀だし、今日は特にこれといって、事件も起きてないのだから」
「いや、最初はそう思ってたんですけどね。世間話だったら、休憩ついでに俺たちも混ぜてもらおうかな〜と思ってここに来たら…」
そこまで言うと、ブレダはハボックと顔を合わせ、何とも言えない表情を浮かべる。
「何があったんだ?」
「…いや、大将の……声が、聞こえたんッス」
「声?」
ロイが反芻すると、二人はまた揃ってこくこく頷く。
「話をしてるんだから、多少声が漏れてきてもおかしくはないだろう」
「…いや、世間話とか仕事の途中で、あんな声は出ないでしょう」
「あんな声…?」
眉をひそめたロイを、ハボックが扉に耳を近づけて手招く。
「ほら、少将も」
ブレダもハボックの横で、扉に耳を近づける。
どうやら同じポーズを取れということらしい。
「…………?」
なぜ私が、と思いながら、ロイもそれに倣って扉に耳を寄せる。






『───すごく、堅くなってる。ここだよね?』
穏やかに、けれどどこか楽しそうに問いかけているのはアルフォンス。
『…や、そこ…っ』
『ああ、やっぱりね』
『い、ぁ…っ』
対するエドワードは、まともに返事を返せていない。
『ダメでしょう?兄さん。こんなになるまで放っておくなんて』
『ん…だって』
ようやく紡ぎ出した言葉は少し掠れていて、かすかに気怠げにも聞こえる。
『そういうときはボクに言ってね、って前にも言ったじゃない。辛いのはボクじゃなくて、兄さんなんだよ』
『…だけど、オマエに手間、かけさせるのは……』
苦しげに言い募るエドワードの言葉を、アルフォンスはため息一つで止めさせる。
『───あのね兄さん。ボクが一度として、こうするのを手間だって言ったことがあった?』
心底呆れたような、声音。
『あなたじゃなきゃ、ボク自分からこんなことしないよ?』
『ふ…ぅっ』
『あなたがそういう顔するから、いつでもしてあげたいって思うんだよ。…ねぇ、気持ちいい?』
『……ん』
問いかけに返ってきたのは、ひどく素直な、幼い子供のような返事。
『良かった。ボクね、あなたのその表情、すごく好きなんだ』
『そ…なのか?』
『うん。だって、ボクだけが引き出せる表情でしょう?すごく嬉しいもの。───他の誰にも、させちゃダメだよ?』
『あ、たりまえだ…っ』
言って聞かせる声は、注意するように促す、というよりは甘やかす、と言った方が相応しいトーンで。
『だから遠慮なんてしないで。して欲しくなったら、いつでも言って。…ね?』
『アル…』
小さく呼んだ声は、ひどく甘く耳に響く。


作品名:テクニシャンな彼 作家名:新澤やひろ