トラブル・スクエア2
臨也が去り、残された二人の間に流れる空気は、仲良くなってから初めての少し気まずいものだった。京平は気持ちを支配していた怒りをおさめきれずに、しかし静雄を責め立てるのも躊躇われて、ただ無口で座り込む。食欲はもう無かったが、再び弁当を膝に乗せて、箸を動かした。
その横に静雄は、シャツのボタンを留めながら同じように座って、困ったような顔をしていた。そして暫くしてから、恐る恐る見つめてくる。
「門田……ごめん、俺」
「別に」
箸を動かしながら、うっかり冷たく返してしまった。
慌てて顔を上げる。
「い、いや……そのだな、別に気にしてない……ってそういうことだ」
「……ん、そうか」
見るからに凹んでいる横顔に、自分の怒りをぶつけることなど出来ない。
しかし知りたかった。凹むということは、悪いと思っているということだ。悪いと思っているのなら、どうして臨也の誘いに応じてしまうのだろう。何故我慢できない。
考えれば考えるほど――苛々してくる。
その気持ちをぶつけたくなくて、急いで弁当の残りをかきこむと、それを鞄にしまいながら京平は立ち上がった。
続けて静雄もすぐに立ち上がる。――が、それを京平は制した。
「ごめん、静雄。ちょっと一人で考えたいことがあるんだ」
「あ、――そうか」
静雄は一瞬驚いた様な顔をして、それから俯きがちに頷いた。
「分かった」
「ごめんな、それじゃ」
急いで歩きだす。とても嫌な気分だった。
作品名:トラブル・スクエア2 作家名:あいたろ