君に巡る季節
「……日本っ…」
「……さ、て。お湯でも沸かしてきましょうか」
紅くなった頬を隠すように顔を背け、慌てて立ち上がる。
「日本、待てよ!」
こたつ布団から出て、急須を持って台所に立とうとする日本の袖口を、イギリスは慌てて掴んだ。
「な、んですか?」
顔を背けて、視線をそらす日本。イギリスは、立ち上がろうとする日本の袖を無言で引いて、座るように促した。
顔を背けたままゆっくりと腰を下ろさせる。イギリスは日本の頬に手を触れて、熱くなったそれを確かめた。
「今のは、日本が誘ったんだよな?」
「なんのことでしょうか?」
「あんな風に言っておいて、違うとは言わせないぜ」
頬に触れた手を滑らせて、口元に触れる。イギリスの指が日本の唇をなぞった。
「……イギリスさんも、エスパーになったんですか?」
「わかるさ。日本のことなら」
話すたび、唇に触れる指がくすぐったそうに震える。イギリスは、日本の背けた顔を振り向かせて、視線を合わせた。
「…日本っ」
「…はい……」
「キス、していいよな?」
「……私の心がわかるんでしょう?」
見つめ合った視線で笑いをこぼして、イギリスは右手のひらで日本の瞳を覆った。そっと、頬に唇を軽く触れて、二、三度。
「くすぐったいですよ…!」
「でも、日本は目隠しされるのが好きだろ」
「…っ、変態大使っ…!」
「…なんとでも言ってくれ」
手のひらを額に滑らせ、閉じた瞳にキスを降らす。右目と左目に一回ずつ。固く閉ざされたまぶたを少しだけ舌で遊んで、ゆっくりと唇へ。
乾いた日本の唇を湿らせるように、軽く触れるだけのキスを二回。舌でその薄い唇をなぞり、次第に口内へと潜り込ませる。
「……っんっ……」
わずかに開いた日本の口から、吐息が漏れる。日本の薄い舌にイギリスのものが絡みついた。わずかに触れるだけの繊細な愛撫の後に、深く口内を犯し、絡める日本の舌を激しく攻める。
「っ…ん……、んん、っ…!」
呼吸も忘れそうになる深いキスに、日本の意識がぼんやりと薄まる。体が痺れるような強引な接触が、ようやくゆっくりと余韻を残して離れた。
「……さすが…」
「んっ?」
「世界一キスが上手い国ですね…」
「変態大使のテクニックに惚れ直したか?」
額をあわせて、熱くなったお互いの体温を感じる。こんなにも巧みなキスをしておきながら、イギリスの顔は日本と同じ程か、それ以上に赤かった。
「私のまだ知らないイギリスさんを知っていくのが、怖いようなところもありますが…」
「あぁ…」
「どんなイギリスさんも、好きなんでしょうね。私は」
惚れた弱みにも困ったものです、と、ふざけた調子でため息をついた日本に、イギリスはもう一度、愛おしそうにキスをした。