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庭園と煙草

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「シュウはそんなに呑まないからつまんないんだよねー」
古今東西、英雄とは酒精を好むものである。それを証拠にトランの英雄も酒を好む。
「ふん、安酒を飲んで体を壊したがる馬鹿共に付き合う義理はない」
「クラウスとはよく飲んでるくせに……」
顔を逸らして拗ねるように煙草を加える。その様子を鼻で笑い、煉瓦に灰を落とした。
「じゃあお前も酒の味をもっと覚えるが良い。そうしたら俺秘蔵の、カナカンのヴィンテージ物を飲ませてやろう」
「言ったな?」
「あぁ、言ったとも。尤も、お前にそんな日が来ればの話だがな」
煙草を弄びながら静かに笑う。元々デュナン共和国の建国祝いに買った物だ。年号はサキがゲンカク老師に引き取られた年の物。我ながらロマンチストだと笑ったが、何か一つ上げたかったのは確かだ。
「楽しみにしてる。それ」
真顔で、射抜くような視線を伴い発せられた言葉はまるで殺し文句の様だ。話題を変えるように、いい加減短くなった煙草を壁に押しつけ使い物にならなくした後、再び耐熱袋を取り出し吸い殻を放り込んだ。その動作を見たサキも慌てて煙草の先を潰して袋に入れる。残り香が消えるまで、静かに壁に背を預けてぼんやりと空を見つめた。
勢いを付けて一歩踏み出したかと思うと、休憩時間は終わり。とでも言いたげに、軽い足取りで煉瓦造りの庭園を走る。あまりにも穏やか過ぎて、気が緩んでいたのだろう。何時の間にかふわふわと雪が舞っていた。
「何時までも此処にいると風邪引くよ」
くるり、と振り向いて彼が言った事はそんな些細な事でシュウは笑った。去年サキ自身が風邪を引いた事を考えていたのだろう。その心遣いが可笑しかった。
そう言えば、まだ伝えていない事があったと思い出し、ニヤリと笑いながら告げる。

「宿泊先はマクドール邸だから、酒盛りなんぞ出来んぞ」
その情報を提示した瞬間のサキの表情は絵画か何かで残しておきたくなるほど絶望に浸っていた。成る程、それはその筈。かの邸宅で、水のように酒を飲むなどの暴挙が許される訳はない。計画が丸潰れになった絶望は計り知れない物があるだろう。
「グレミオさんのいる所で僕が酒なんて飲める訳無いだろ何考えてるんだよー!!」
ワンブレスの叫びは悲痛の色を帯びていたが撤回など出来る筈が無い事は分かっているのか、ゴンと扉に額をぶつける。
作品名:庭園と煙草 作家名:nkn