二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

わるいゆめ3

INDEX|2ページ/4ページ|

次のページ前のページ
 

2.

服などの生活用品を取りに行くために、久しぶりに我が家へ足を向けた帝人は、
扉の前に見慣れた姿がうずくまっているのを見つけ、眉を上げた。
「…正臣。」
声をかけると、ようやくこちらに気づいたようにその影は顔をあげた。
「みか…ど。」
何故か息も絶え絶え、といった様子の正臣に、心配になって、傍らにひざをつく。
その瞳を覗き込むと、どこか靄がかかったような色をしていて、
ぴん、と思いついて、その額に手を当てる。
ひどい熱だった。
よく見ると、衣服や髪がしめっているようだった。
少し前まで降っていた雨に濡れてしまったのだろうか。
「正臣、風邪引くよ。」
もう熱出てるけど、と思いつつ声をかけても、もはや反応がなく、正臣はただ荒い息を繰り返していた。
はあ、とため息をつき、意識を失ってしまったらしい正臣を家の中に運び込むべく、
まずは、扉を塞いでいるその体を動かすために手をかけた。

コトコトと、コンロで何かを煮込む音に、ふと目を覚ました。
頭がひどく熱くて思考がぼんやりと霞む。
ここ、どこだ…。
体全体がだるくて、頭もうまくはたらかない。
視界に入った古めかしい天井には見覚えがあった。
ここは、確か…
思い出そうとしたときに、
「目、覚めた?」
耳に飛び込んできた声に、意識が一気に覚醒し、飛び起きようとする。
その瞬間に頭が激しい痛みを発し、うめき声を上げて再び布団に戻る。
「正臣、まだ寝てないとだめだよ。」
子供に言い聞かせるように帝人は言う。
「みか、ど…」
先ほど起き上がった拍子に、正臣の額から落ちたタオルを拾い、
傍らに置いてあった洗面器の水に浸す、帝人の一連の動きを目で追う正臣。
「あんなに濡れた状態でふらふらするなんて、風邪で死んじゃっても知らないよ」
帝人は、少し怒ったように言いながら、タオルを絞る。
そのタオルをもう一度正臣の額に置こうとするところまで目で見送って、近づいた腕を勢いよく捉えた。
「っ!」
無理やり起き上がって、正臣は帝人と視線を合わせた。
「帝人」
「い、痛いよ正臣。」
掴んでいる腕を離すよう促す帝人を無視して、正臣は問いかけた。
「帝人、なんであんなことしてるんだ。」
ひゅっと息を吸う帝人。
「…ダラーズを、僕の理想のダラーズにするためだよ。
 そして、正臣と園原さんが安心して暮らせる居場所を作るんだ。」
淡々と告げる帝人に、正臣は反駁した。
「俺はそんなこと望んじゃいない。
 杏里だって、どんな目的のためだとしても、お前があんなことする所なんて見たくないに決まってる。」
熱で朦朧とする頭で、けれど必死に伝える。
「あんなこと、大したことじゃないよ。
 ダラーズを綺麗にするためなら、”あれくらいのこと”はしないとね。」
微笑みすらしながら告げる帝人に、意識の決定的な溝を感じながらも、正臣はめげずに続けた。
「あれくらいって…、お前は自分がやっていることをわかってるのか。
 相手が頭のイカれた悪党とはいえ、闇討ちしたり、火を…つけたりするなんて、
 全然、お前らしくないだろ!」
叫ぶように告げるが、帝人はそんな正臣の反応が理解できない、とでも言うように首を傾げた。
「僕らしくってどういうことさ?
 とにかく、だから、正臣は待っていてくれたらいいんだよ。
 僕がいいというまで、安全なところにいてくれたらいい。」
頑なに、正臣の言うことを理解せず、蚊帳の外に置こうとする帝人に、
かっとなって、意図せず、その言葉が口から漏れた。
「あの、黒沼青葉っていう奴の方が、俺たちより大事になったのか!」
予想外の言葉に目を見開く帝人。
「なに、言って…」
「俺たちより、あの男がもってくる「非日常」を選ぶのか」
睨み付けるように告げると、帝人はあわてた様に首を振った。
「ち、ちが…!」
帝人は純粋に混乱して反論しようとしていることがわかったが、
一度口にした言葉から、蟠っていた感情を溢れ出し、止まらなかった。
そんな馬鹿げたこと口にすべきじゃない、と理性は叫ぶのに、熱に加えて、
ずっと求めていた帝人が、目の前にいて、その体温が感じれる距離にいるという事実に、
自分はおかしくなっていたのだと思う。
「あの青葉って言う男と、寝たんだろう!!」
帝人は目を大きく見開いた。
「な、にを…」
愕然としたような表情の帝人に、告げる。
「あの青葉って奴から直接聞いた」
それを聞いた帝人は唇をわななかせた。
その反応に、信じたくなかった事実を肯定され、崖から突き落とされたような気分に陥る。
「…ほんとうなのか、帝人。」
掴んだ腕を引き寄せて、問い詰める。
帝人は唇を引き結んで、答えない。
「あんな奴に、抱かれたって言うのか…。
 そんなに、あいつを利用したかったのか…!?」
帝人を掴む腕の力を強めると、帝人は顔をしかめ、視線をそらした。
「そんなこと、正臣に関係ない…」
吐き捨てるような口調に、再び頭に血が上る。
「関係ない!?関係なくなんかない!!」
叩き付けるように叫んで、
「帝人、お前はっ、何で…!!」
視線を合わせようとしない帝人が許せなくて、その肩を掴んで、思い切り力をこめて押し倒した。
「っ!」
畳の床に頭をしたたかに打ち付けて、うめき声をもらす帝人。
痛みをこらえて、自分を押さえつける親友の影を見上げ、首をかしげる。
「まさおみ…?」
影になって表情が分からない正臣に、不安なものを感じて問いかける。
「帝人…。」
苦しげに名を呼ばれる。
「俺、は、俺は、ずっとお前のことが、、」
ひどく大切なことを告げるように言葉をつむぐ正臣に、帝人は息をのむ。
その顔がゆっくりと近づいてきて、帝人の首筋に顔をうずめる。
「ま、正臣…」
うろたえて、でも、跳ね除けることもできない帝人は、ただ、視線をさ迷わせる事しかできない。
うわごとのように帝人の名前を呟く正臣に、ひどく哀しいような気分が湧き上がってきて、
恐る恐る腕を伸ばし、その背をゆっくりなでてやる。
どれぐらいたっただろうか、長いような短いような時間の後に、
正臣から、規則的な呼吸の音が聞こえてきて、気づく。
「正臣、寝たの?」
反応がない。やはり、意識を失ってしまったようだ。
感じる体温も、相当高い。
ひどい熱を出していたのに、あんなに激したら、体にいいはずがない。
眠ってしまった正臣の背をもう一度撫でて、はあ、とため息を零す。
僕のせい、か。
正臣には、ひどいことをしているのかもしれない。
それでも、自分の生き方を変えるつもりはないのだ。
あのとき感じた無力感を、再び味わいたくない。
そのために、今はただ---。

作品名:わるいゆめ3 作家名:てん