わるいゆめ3
正臣が次に目を覚ましたとき、部屋には既に人の気配がなかった。
起き上がると、温くなった濡れタオルが額からずり落ちるが、熱はもうほとんど下がっているようだった。
布団の脇には、盆に載ったおかゆとお茶が用意してあり、そこには小さなメモが置いてあった。
『おかゆ、せっかく作ったから、食べてね。』
署名も何もない、そっけない書き置きだったが、誰が用意したのかは明らかだった。
「帝人…」
誰もいない部屋で、大切な幼馴染を呼ぶ声が空気を震わせるが、返事はもちろんなかった。
暗い部屋の真ん中で、うずくまる。
もう、帝人はここには帰ってこないような気がした。