Doubt_2
ていよくハボックが執務室を追い出されて給湯室で格闘している頃、ちわーっすと気の抜けた声と共に、皆がたむろう司令室の方へ、小さいのと大きいのが顔を出していた。
「あら、エドワード君、アルフォンス君」
「ども」
「こんにちは、ホークアイ中尉」
「はい、こんにちは」
「この間はごめんなさいね。でもお陰で助かったわ」
「や、それは別にいいんだけど。…何か結局手は必要なかったつーか」
「でもさっさと捕まえておかないと、あの人なかなか帰ってこないから」
それってどうなんだ、責任者。
困ったものね、なんて中尉は笑ってるけど、いいのか?それで。
「今回は次の手を打たなくて済んで助かったのよ。・・・こんなつまらない所で使いたくはないもの」
「そ、そうなんだ?」
「そうなのよ」
ウフフフ、と笑う笑顔が綺麗で、ちょっと怖い。
何が発動するところだったのかは判らないが、その場に居合わせるのだけは回避しよう、と2人は各々心に誓った。
「・・・で、さ。た、大佐は?」
ここで出して大丈夫かどうかは判らなかったが、自分の用向きとして避けては通れない。遠慮がちに問い掛ければ、今頃紙飛行機でも投げている頃じゃないかしら、というアレな答えが返ってきた。
「・・・忙しくないんだ?」
「おおむねいつも通りね。・・・ただ、いまはヒューズ中佐が来られているのだけど」
行くなら早くした方が良いわよ、とそれから続いて。
「何でですか?」
いくら顔馴染みの中佐とはいえ、来客中なら遠慮した方が、と問うたアルフォンスに、彼女は極上の笑みを浮かべた。
「中佐が来られると、逃亡率が跳ね上がるのよ」
ごめんなさい。聞いたボクらが馬鹿でした。
それ以上刺激しないように、と。早々に司令室を退去して(よく考えたら、いつものメンバーが誰一人としていなかった。沈静化を待っているのかも知れない)執務室へ向かう道を2人歩く。
微妙に怖い空間だった。
怒らせてはいけない人というのはああいう人の事を言うんだろうが。何で大佐はいつもいつも逆鱗に触れるような事ばかりやってるのか。
「懲りないな」
「仕方ないんじゃないかな」
だって大佐だし。
双方の一致を見たところで、執務室にたどり着いた。
「たいさー」
「兄さん、ノック!」
止まることなく扉を開けた兄に弟からのツッコミが飛ぶがもう遅い。重厚な扉を開けてまず目に入ったのは、ちょっと面白い高さになっている紙の束だった。
が。
「第一お前の泣き言はヒューズののろけなみに長くてうっとうしい」
「そんなひどいですか!?」
「お前らー?本人の前くらいちょっとは遠慮したらどうだー?」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
応接セットにそれぞれ陣取った大人達は仕事をする気はないらしい。
「・・・おおむね、いつも通りだな」
「うん」