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空の境界~未来への軌跡~2

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そして、おそらく弾道からパターンを読み出して、先回りを始めていた。

「やるね、こっちも戦い方を変えるか。」

次のポイントに向かう途中、バッティングするから接近戦モードに切り替えた。
「干将・莫耶」を作り出しバッティングポイントに向かった。

「やられた。」

どうやら、嵌められたのはこっちの方だ。ポイントには黒桐鮮花の姿がなかった。

「動かないで貰えます。」

後ろから声がした。明らかに黒桐鮮花の声だ。

「動かないけど、「発火」程度では、俺を焼くことはできないぞ。」
「ええ、でも銀製ナイフならどうです。」
「生憎、そこまで行くと殺し合いになるから、俺の負けでいいよ。」

あっさり負けを認めた。黒桐鮮花は、正直この作戦もうまくいくか分からなかったし、賭けであったのだ。それに相手は十代で「聖杯戦争」を切り抜けた猛者だ。どんな隠し玉を用意しているのか判らなかった。

「正直、俺はこんなことしたくなかったのだから、行っていいよ。」
「あなたから、聞き出しても良いのですけど、「呪い」を掛けられているかもしれませんので、質問は控えさせてもらいます。」
「賢明だね。」
「それじゃ、急ぎますので。」

鮮花が背を向けたとたん呼び止められた。

「あ、ごめん。その前に「結界」の張り方は、できたんだけど解き方の方が未だできないんで、解いていってくれるとありがたいかな。」
鮮花は、気の抜ける思いがした。


黒桐鮮花が見えなくなると、今まで気配を殺していた西洋甲冑をまとった金髪の美少女が現れた。

「いくら手を抜いているとはいえ、マスターが負けるなんて正直面白い話ではありませんね。」
「何のことだセーバー。」
「惚けないで下さい。「カテドボルグ」とは言いませんが、もっと強力な宝具を作れたのでしょう。わざわざ森の民の使う矢では、「木は火に勝てない。」の理をいくら貴方でも知らないはずないでしょう。」

本気になればかつて戦争で見た「サーバント」達の武器を「投影」していただろう。それをすれば「発火」程度の魔法では防ぐことできなかった。

「今回は、しばらくの足止めなんだから、別にいいだろ。」
「しかし…」
何か言おうとした士郎はセーバーの唇を奪った。正直近くに凛が居たらただでは済まないだろう。
「言うだろ。人の恋路を邪魔するやつは犬に食われてって。」
「では、あの子は犬ですか?」
「それは、俺にも分からないよ。」

そして、セーバーは士郎に一言呟いた。

「今日の士郎は、「アーチャー」に似ています。」

強烈な鉛の様な一撃だった。


〜新たな一歩〜

式は急ぎ「伽藍の堂」にたどり着いた。まだ事務所の電気は付いたままだ。

「まだ、大丈夫か。」

そう思い事務所に入ると、居たのは棟子だけで幹也の姿はなかった。
おまけに、大掃除でもしているのだろうか。あちらこちらを、ひっくり返していた。

「棟子、幹也は戻ってこなかったか。」
「いや戻って来てないがどうした?」
「いや、なんでもない。」
「そういって、未来の旦那様を心配しているのだからかわいいね。式は。」

式の顔が真っ赤になった。
すると、棟子は鍵を式に投げてよこした。

「下手をしたら、黒桐に殺されるかも知れんからな。お前からここの合い鍵を黒桐に渡しておいてくれ。」

いったい何を言っているのだろう?幹也が棟子を殺すなどと普通に考えれば、逆ではないのか?

「そのことは、深く考えるな。いずれ解る事だ。今は、お前さんは魔王の住む城に姫を迎に行くことを考えろ。」
「幹也は、姫ですか?」
「今は、そう考えろ。そのほう簡単でいい。」
確かに、戦闘では役に立たないが自分に何時も祝福を与えてくれる。十分姫の要素は、たっぷりあった。
すると重そうな、アタッシュケースを引っ張り出して事務所を出て行った。

「合鍵で閉めておいてくれ。ちょっと遠出してくるから。」
そういって出て行った。何か引っ掛かるものがあったが、うまく言えない。
「お前さんは、お前さんの仕事をすればいいさ。じゃあな。」

そういってアタッシュケースを持って階段を下りていった。
電気も消さず、出て行った棟子の変わりに電気を消そうとしたら、息を切らした鮮花がやってきた。

「棟子さんは?」
「さっき出てったが、会わなかったか?」
「あってないけど…」

鮮花の顔が真っ青だ。

「いったいどうしたんだ?」
「ねえ式、どこ行ったか聞いてない?」
「いや」

そういえば、何か引っかかるものがあったがどうしてだろう。うまく言えない。

「そう。」

そういうと、鮮花は踵を返しどこかへ走っていった。

「いったい何なのだろう?」

とりあえずさっき棟子から預かった鍵で事務所を戸締りすることにした。

「あ、そうか。思い出した。」

あれは、「偽神の書」と戦ったとき、言葉によって間合いをずらされたことがあった。あの感覚に似ていたのだ。いうなれば「言葉」この場合「言霊」によって、暗示のような事を棟子は自分に掛けたのだ。「何故だ。」おそらくこれから自分がやる事に、私を関わらせないようにしたのだ。
今となっては、いくら追おうにも追いつくことは出来ないだろう。なら最初からやろうとしていた事をするまでだ。そして、伽藍の堂に鍵を掛け自分のすべき事をすることにした。


〜姫は牢屋より、綺麗な花畑が似合う〜

そのころ、黒桐幹也は式の実家にある道場床に座らされていた。黒服に人たちは殺気を帯びていたが秋隆さんが、牽制してくれていたおかげで「富士樹海の肥料」か、「コンクリの缶詰深海行き」にならなかっただけありがたいと思った。考えてみれば、式はそれだけ「両儀家」の跡取り娘であった。それを傷物にしたのだから、当然そのくらいの報復は有得たのだ。
しかし、そうはならなかった。そうなったとしても最後まで式を見続ける事に関しての未練があっても、その行為自体に未練はなかった。式が自分を一人の男性として見てくれたことに、満足すらしていた。それで殺されるのだから悔いはなかった。そこへ、式のお父さんがやってきた。やはり怒っているらしく、現れると式と同じくらいのスピードで懐に入り、右頬にストレートを放った。
僕は、成す術もなく、後方に飛ばされるとそのまま壁に衝突した。

「日本式に、娘を嫁にやる男には最低一発は殴るのが、両儀流なのでな。」

なにを言っているのか解らなかった。

「あの、少々誤解してませんか?」
「まさか、あのような事を娘にしておいて、「婿になるのが嫌だ。」などという気ではあるまいな。」

あの時、僕も式も男と女の関係になった。そして、その先にある結婚とかは、もっと先にあるものだと思っていたが、意外に近かったようだ。
僕は、膝が笑っている状態で一生懸命歩き、式のお父さんの前にやってきて正座をして、これから、義父になる人を見た。

「あの、よく話が読めないのですけれど、「式と夫婦になれ。」というのであれば、喜んで引き受けさせていただきます。」

そして、両手を着きフカブカと頭を下げた。

「もし、式が「僕を殺したい。」と言えば、その命を躊躇わず差し出しましょう。不幸な思いをさせたら、僕のできる限りの能力を使って幸せにしましょう。」